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目的物の検査義務と通知義務 その3 [商法総則・商行為法]

 買主の目的物検査義務及び通知義務について,3回に及んでしまいました。思わず,文が長くなりました。しかも,前回の標題が間違っていました。さきほど修正しました。気付かなかったのは本人だけなのかも・・・。

今日は,買主の検査・通知義務の要件と商法526条の適用範囲についてです。

 買主の検査・通知義務の要件

(1) 商人間の売買であること
(2) 買主が売買の目的物を受領したこと
(3) 売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があること
(4) 売主に悪意がないこと

(1) 商人間の売買であること
   商人間の売買であって,両当事者にとって商行為であることを要します(通説)。
(2) 買主が売買の目的物を受領したこと
   目的物を受領しなければ,検査することができないからです。現実に目的物を受領しなければ,検査義務   は発生しません。
(3) 売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があること
   瑕疵は,物の瑕疵(民法570条)に限り,権利の瑕疵は含みません。権利の瑕疵の発見には,通常,長時   間を要するからと言われます。目的物の瑕疵とは,その性質,形状,効用,価値等が,約定された通常の   標準に満たないことを言います。見本品売買の場合には,現物が見本より劣っていれば,瑕疵があること   になります。
(4) 売主に悪意がないこと
   悪意とは,目的物の引渡しのときに,目的物の瑕疵又は数量不足を知っていることを言います。売主が悪   意の場合には,売主を保護する必要はありませんから,商法526条1項及び2項は適用されないことになり   ます。

 商法526条の適用範囲
 商法526条は,特定物売買だけでなく,不特定物売買についても適用があります(最判S35.12.2等参照)。また,買主が売主に対して担保責任を追及する場合だけではなく,債務不履行責任を追及する場合にも適用があります(最判S47.1.25参照)。