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表見取締役と名目取締役 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 表見取締役と名目取締役
 両者を事実上の取締役という範疇でくくることもできるとする記述もあります(有斐閣アルマ商法総則・商行為法 第2版 P171)。しかし,前者と後者は,法律上,取締役であるかどうかで決定的に異なります。前者は,司法書士試験の問題文にあるように,「取締役でないのに取締役として就任の登記をされた者」であり,つまりは,適法な選任手続を経ていない取締役ということになります。つまり,取締役ではないのだということですね。上記書は,「登記簿上の取締役」と呼んでいます。会社法判例百選P162もそうです(79 選任決議を欠く登記簿上の取締役と第三者責任)

 これに対して,名目取締役というのは,旧商法時代の株式会社でよく存在していました(今でもあちこちに存在しているのではないでしょうか)。旧商法時代には,株式会社は,必ず取締役を3人以上選任して取締役会を設置しなければならなかったため,有限会社ではなく,株式会社にしたいという個人事業主は,法人成りに際して(事業をはじめるについて最初から株式会社を設立する場合もですが),員数揃えのため友人・知人に頼みこんで,取締役に就任してもらうというものです。取締役になった彼らは,取締役としての職務を何もしない・・・そのうち,会社が倒産して,会社の債権者が,名目取締役に対して,会社法429条1項によって責任追及をするということになります。

 名目的取締役は,取締役ですから,会社法429条1項の「役員等」に当たると言えますし,取締役会の構成メンバーとして,代表取締役を監督する取締役としての任務懈怠があり,重過失を認定することもできると考えられますから,会社債権者は,名目取締役に対して,会社法429条1項により,損害賠償責任を追及することができると考えられます。名目取締役の責任を肯定した判例として,最判昭和55年3月18日があります。

 しかし,表見取締役は,取締役ではありません。したがって,会社法429条1項の「役員等」には当たりません。それにもかかわらず,最判昭和47年6月15日は,就任の登記について承諾を与えていた者について,会社法429条に当たる旧商法266条ノ3の責任を免れないとしました。本年度の司法書士試験午前の部第31問は,この判例をもとに出題されています。


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