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午前の部 第6問 その3 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

申込みと申込みの誘引

教授: 最後に具体的な例で聞きますが,賃貸マンションの所有者である甲が「101号室 入居者募集 甲」とだけ書いた張り紙をマンションの入口に掲示して,入居者を募集する旨を表示することは,意思表示ですか。
学生:オ その張り紙を見た乙が,甲に入居したいと申し出ることによって,賃貸借契約が成立しますから,意思表示です。

ここで申込みの誘引について問われています。申込みは意思表示であるが,申込みの誘引は意思表示ではないということで,学生のオにおける解答は誤っているということになります。

申込みと申込みの誘引は,債権各論で登場します。契約の成立のところですね。申込みは,意思表示なのですが,どのような意思表示かというと,相手方の意思表示と合致して契約を成立せることを意図して行われる意思表示である,つまり,その申込みに対して承諾があれば契約が成立するという確定的な意思表示であるということになります。

その申込みに対して承諾があれば契約が成立するというものですから,申込みには,契約の主要な内容を決定する事項が含まれていなければなりません。この関係で区別すべきだとされるのが,申込みの誘引です。誘引とは,(誘い入れること(岩波国語辞典),さそいいれること,いざなうこと(広辞苑),注意・興味をさそってひきつけること。さそいこむこと(大辞林),さそい入れること(新潮現代国語辞典))と辞書にあります。

教授の具体例である入居者募集の張り紙の掲示は,申込みの誘引です。申込みではないということは,もし,これが,申込みであるということになれば,誰であっても,賃貸マンションの所有者に対して,「101号室を借りたい」と言えば,それは,承諾の意思表示として,直ちに,賃貸借契約が成立するということになります。それは,おかしい。誰でもいいわけではないだろう,賃料は・・・・。そこで,それは,申込みではないという説明となります。

張り紙や広告等を見た者がするのが,申込みとなって,張り紙や広告をした者(申込みの誘引者)がこれに対してするのが承諾ということになります。申込みと申込みの誘引との区別は具体的事情(行為が契約の内容を何ら留保することなく指示しているかどうか,契約の相手方が何人であってもかまわないかどうか等が一応の基準になると言われています。不動産売買や賃貸の広告,社員募集広告等は,申込みの誘引と解されています。後者の場合,面接しますよね。もちろん,アルバイトの募集も同じです。

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午前の部 第6問 その2 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 せっかく,問題を打ち込んだので,少々,解説を。

 本問では,意思表示とは何かが問題とされています。それで,教授は,「表意者が一定の法律効果を意欲する意思を表示する行為」をいうとしています。それで,意思表示準法律行為との区別の理解を問うというものです。

 準法律行為は,表現行為(意識内容の表現)と非表現行為に分類されますが,さらに,表現行為は,意思の通知観念の通知感情の表示に分類されます(我妻榮著「新訂民法総則」参照)。

上記「新訂民法総則」P234には,「意思表示は,契約の申込・承諾,遺言などのように,表意者が一定の効果を意欲する意思を表示し,法律がこの当事者の意欲した効果を認めてその達成に努力するものである」と書かれています。選択肢アは,ここから持ってきたように見えますが,さて・・・。

 意思の通知については,前掲書によれば,「意思の通知は,無能力者(注1)の相手方のする催告(19条注2)・債務の履行を要求する催告(153条,412条,541条等)・弁済受領の拒絶(493条・494条など)などのように,一定の意思の表示であるが,その意思内容が,その行為から生ずる法律効果以外のものに向けられている点で意思表示と異なるものである。」とされています(同書P234)。

 どういう法律効果が発生するのかが問題なのですね。例えば,「私所有の甲不動産をAに遺贈する。」という遺言であれば,「私」が死んだとき,法律の規定によって私の意欲したところに従って,Aへの譲与の効果,Aへの所有権移転の効果が生ずることになります。これに対して,甲が乙に対してする債務履行の催告であれば,甲の意欲するところは債務者が債務の履行をしてくれることですが,これによって,当たり前ですが,債務が履行されたことになりません。「債務履行の催告の効果は時効中断(153条),履行遅滞(412条3項),解除権の発生(541条)など」(同書)債務の履行とは別の法律効果が生ずるというわけです。

 観念の通知は,ある事実の通知です。債権譲渡の通知が観念の通知であることは,よく知られるところであり,そこで,選択肢エが誤っていることがすぐわかり,これで,4と5が消えて,申込みの誘引について知らなくても正解が出せたとの声も聞こえました。

 遺失物の拾得(民法240条)は,無主物の帰属(民法239条)と同様に,「一定の外形的な行為を本体とするものであって,一定の意識ないし精神作用を要件とする場合にも,その精神作用は,従たる地位を占めるものである」(前掲書P234)とされる非表現行為です。

午前の部 第6問 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

平成22年度司法書士試験午前の部第6問

今年の民法の問題です。今年受験された方だけでなく,今年は受験しなかった方,さらに司法書士の方もたくさん読んでくださっているようですので,まず,問題文からです。すでに司法書士になっていて,司法書士試験が過去のものになっている人にも見てほしいなと思う問題です。

行が乱れて読みにくくなるかもしれませんが,ご容赦を。対話形式の問題です。

第6問 次の対話は,意思表示に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
教授: 表意者が一定の法律効果を意欲する意思を表示する行為を意思表示といいますが,この意思表示の例としては,どのようなものがありますか。
学生:ア 契約の申込みと承諾,さらに遺言があります。
教授: 債務の履行の催告は,意思表示ですか。
学生:イ 債務の履行の催告により,時効が中断することがありますし,解除権の発生という効果が発生することがありますから,意思表示です。
教授:遺失物の拾得は,どうですか。
学生:ウ 遺失物の拾得により,その物の所有権を取得するなどの効果を生じることがありますが,拾得者の意思に効果を認めたものではないので,意思表示ではありません。
教授: 指名債権譲渡の債務者に対する通知は,どうですか。
学生:エ 通知をすることにより,対抗要件を具備することができるので,意思表示です。
教授: 最後に具体的な例で聞きますが,賃貸マンションの所有者である甲が「101号室 入居者募集 甲」とだけ書いた張り紙をマンションの入口に掲示して,入居者を募集する旨を表示することは,意思表示ですか。
学生:オ その張り紙を見た乙が,甲に入居したいと申し出ることによって,賃貸借契約が成立しますから,意思表示です。
1 アイ 2 アウ 3イオ 4 ウエ 5 エオ

アとウが正しい記述で,2が正解です。正解肢が,意思表示の例,遺失物の拾得が意思表示かどうかを問うものだったので,難しい問題ではないとは思うのですが,受験生にとってみればどうだったのでしょうか。申込みの誘引に関するオが正解選択肢とされていたらどうだったか・・・。そうです。正解肢ではなかったのですが,申込みの誘引が出たのです。

申込みの誘引は別としても,しかし,意思の通知や非表現行為といったところを受験生がきちんとやっていたかどうか。答練で,このような問題を出すと,多数かどうかは別として受講生からのブーイングがあったのではないかなと思うのですが・・・。本試験に出ないような問題を出してというブーイングです。かつて,ときどき,直接にではなく(直接は言いにくいでしょうね),他の講師から,「受講生が・・・」と聞くことがあって,その後,しばらく問題が作りにくくなったということがときどきありました。その後,そのようなところの出題を控えたら,その年に出題されて,悔しい思いをしたこともあります。

もっとも,本問で,正解を出せた人にとっては,本試験問題としては,ブーイングはなしでしょうね。

最判平成20年2月26日  [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 今年の司法書士試験の商法の解説を書いたのですが,今,条文が間違っていないか,打ち間違いがないか,文章がおかしくないか等々,見直しをしています。昨日,見たところで,ここはブログに書いておこうと思った箇所があります。

 さきほど,再録シリーズの一つを載せたものの,思い立ったら,忘れないうちにこの箇所について書かなければならないと思い,書き始め,以下と変更することにしました。

 今年の司法書士試験の商法の部で,久しぶりに,判例を問う問題が出題されました。憲法,民法,刑法,民訴では,判例の趣旨に照らし・・・というのは珍しいことではありませんが,商法では,珍しいものです。しかも,最近の判例についても問われました。午前の部第34問です。

第34問 会社法上の訴えに関する次のアからオまでの記述のうち,判例の趣旨に照らして誤っているものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。
ア 株主は,募集に係る株式の発行がそれを差し止める旨の仮処分命令に違反してされた場合には,当該仮  処分命令に違反することを無効原因として,新株発行の無効の訴えを提起することはできない。
イ 株主は,株主総会の決議の取消しの訴えを提起した場合において,当該株主総会の決議の日から3か月が 経過したときは,新たな取消し事由を追加主張することはできない。
ウ 株主は,退任後もなお役員としての権利義務を有する者については,その者が職務の執行に関し不正の行為をした場合であっても解任の訴えを提起することはできない。
エ 株主は,募集に係る株式の発行がされた後は,当該株式の発行に関する株主総会の決議の無効確認の  訴えを提起することはできない。
オ 株主は,他の株主に対する株主総会の招集手続の瑕疵を理由として,株主総会の決議の取消しの訴えを 提起することはできない。


いずれも,判例があるのですが,最近の判例を問うを取り上げます。最判平成20年2月26日です。

 この判決で注目するのは,会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利医務を有する者を役員権利義務者と名付けている点ですが,この判決の結論は,問題文ウのとおり,解任の訴えを提起すること,つまり,解任請求をすることは許されないとするものです(ウは正しい記述ということになります)。

最判平成20年2月26日 民集第62巻2号638頁です。

 まず,結論として,「会社法346条1項に基づき退任後もなお会社の役員としての権利義務を有する者(以下「役員権利義務者」という。)の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実(以下「不正行為等」という。)があった場合において,同法854条を適用又は類推適用して株主が訴えをもって当該役員権利義務者の解任請求をすることは,許されないと解するのが相当である。」としています。

次に理由です。形式的理由(条文上の根拠)です。 「同条は,解任請求の対象につき,単に役員と規定しており,役員権利義務者を含む旨を規定していない。」ことを挙げています。そして,実質的理由として,「同法346条2項は,裁判所は必要があると認めるときは利害関係人の申立てにより一時役員の職務を行うべき者(以下「仮役員」という。)を選任することができると定めているところ,役員権利義務者に不正行為等があり,役員を新たに選任することができない場合には,株主は,必要があると認めるときに該当するものとして,仮役員の選任を申し立てることができると解される。そして,同条1項は,役員権利義務者は新たに選任された役員が就任するまで役員としての権利義務を有すると定めているところ,新たに選任された役員には仮役員を含むものとしているから,役員権利義務者について解任請求の制度が設けられていなくても,株主は,仮役員の選任を申し立てることにより,役員権利義務者の地位を失わせることができる。」としています。

平成22年度 午前の部 第31問 エとオ [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 第31問で多くの受験生が考え込んだのは,エとオではなかったかと思います。

 会社法429条1項の株式会社の第三者に対する責任の法的性質については,争いがあるわけですが,判例及び通説は,法定責任説に立っています。これは,法が認めた特別の法定責任(法定の特別責任)であるとするものです。この見解は,株式会社が経済社会において重要な地位を占め,役員等がその職務を行うについて第三者に損害を生じさせることがあるため,第三者保護の必要性があることから,特に,規定を置いたものであるとし,悪意や重過失は,第三者の加害の点ではなく,株式会社に対する任務の懈怠についてであるとします。判例もこの見解に立ちますが(最(大)判S44.11.26参照),任務の懈怠ですから,役員等が職務権限を有することが前提となっています。したがって,この法定責任説と設問の見解との間には,論理的な関係はない・・・むしろ,取締役ではなく,取締役の職務権限を有しない表見取締役に,会社法429条1項の責任を課すことは,理論上無理があるのではないかという疑問も生じます。
  しかし,法定責任説に立つ判例(教授の示した見解)は,表見取締役は,登記事項が不実であること,換言すれば,当該会社の取締役でないことをもって善意の第三者に対抗することができず,その結果として,旧商法266条ノ3にいう取締役としての責任を免れることができないとしています。つまり,会社法908条2項が類推適用される以上,当該表見取締役は,自己が取締役でないことをもって,第三者に対抗することができず,その結果として会社法429条1項の責任を免れないと結論づけています(会社法判例百選P163参照 )。
これに賛成する学説においては,「ここに取締役でないということは,Yが取締役としての業務執行の権限義務を有しないことを善意の第三者に対抗することができないということであり,したがってYは第三者に対して責任を負わなければならないとされ,その責任の根拠は,Yが何もしなかったことあるいは業務一切を他の取締役に任せきったことに求められている」(同)。これが,つまり,学生オの解答になります。

 平成22年度 午前の部 第31問
 教授: 一方,会社法第429条第1項の責任の法的性質については,取締役の会社に対する任務懈怠があれば,第三者に対する故意・過失がなくても責任が生じ得る法定の特別責任であるとの考えがありますが,そのような考えは,この見解と論理的な関係がありますか。
 学生:エ 会社法第429条第1項の責任を法定の特別責任を解することにより,会社法第908条第2項を通して外観に対する信頼を問題にすることができると説明することができるので,そのような考え方は,この見解と論理的な関係があります。×
 教授: この見解によると,会社法第429条第1項の「役員等がその職務を行うについて」の要件については,どのように考えますか。
 学生:オ 表見取締役は,真実,取締役ではないものの,取締役としての権限・義務がないことをもって善意の第三者に対抗することができないので,何もしないことが取締役がその職務を怠っていることになると考えます。○

最判昭和47年6月15日 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 最判昭和47年6月15日(民集26巻5号984頁)

 「ところで、原審の確定した事実によれば、上告人の取締役への就任は、右会社の創立総会または株主総会の決議に基づくものではなく、まつたく名目上のものにすぎなかつたというのである。このような場合においては、上告人が同会社の取締役として登記されていても、本来は、商法266条ノ3第1項にいう取締役には当たらないというべきである。けだし、同条項にいう取締役とは、創立総会または株主総会において選任された取締役をいうのであつて、そのような取締役でなければ、取締役としての権利を有し、義務を負うことがないからである。
 商法14条は、「故意又ハ過失ニ因り不実ノ事項ヲ登記シタル者ハ其ノ事項ノ不実ナルコトヲ以テ善意ノ第三者ニ対抗スルコトヲ得ズ」と規定するところ、同条にいう「不実ノ事項ヲ登記シタル者」とは、当該登記を申請した商人(登記申請権者)をさすものと解すべきことは諭旨のいうとおりであるが、その不実の登記事項が株式会社の取締役への就任であり、かつ、その就任の登記につき取締役とされた本人が承諾を与えたのであれば、同人もまた不実の登記の出現に加功したものというべく、したがつて、同人に対する関係においても、当該事項の登記を申請した商人に対する関係におけると同様、善意の第三者を保護する必要があるから、同条の規定を類推適用して、取締役として就任の登記をされた当該本人も、同人に故意または過失があるかぎり、当該登記事項の不実なことをもつて善意の第三者に対抗することができないものと解するのを相当とする。
 上告人が前記訴外会社の取締役に就任した旨の登記につき、同人が承諾を与えたことは、前示のとおりであり、同人が右登記事項の不実であることを少なくとも過失によつて知らなかつたことは原審の適法に確定するところであるから、同人は、右登記事項の不実であること、換言すれば同人が同訴外会社の取締役でないことをもつて善意の第三者である被上告人に対抗することができずその結果として、原審の確定した事実関係のもとにおいては、上告人は被上告人に対し同法266条の3にいう取締役としての責任を免れ得ないものというべきである。」

 商法14条 ⇒ 現商法9条2項,会社法908条2項
 商法266条ノ3第1項 ⇒ 会社法429条1項

 上記のように,最高裁判所は,旧商法14条(不実登記の効力)の類推適用という方法を経由することにより,旧商法266条ノ3による名目取締役の責任を肯定しています。以下,会社法の条文に置き換えて説明することにします。

 選任決議がない取締役は,会社法429条1項にいう役員等(取締役)ではない。⇒ しかし,就任の登記につき取締役とされた本人が承諾を与えた。 = 不実の登記の出現に加功した。 ⇒ 善意の第三者を保護する必要がある ⇒ 会社法908条2項の類推適用(不実の事項を登記した者には当たらない) ⇒ 当該登記事項の不実なことをもつて善意の第三者に対抗することができない ⇒ つまり,取締役ではないことを善意の第三者に対抗することができない ⇒ 善意の第三者との関係では,会社法429条1項の取締役に当たる。 

 平成22年度司法書士試験午前の部第31問 
 教授: 表見取締役が故意又は過失によりその登記につき承諾を与えていたときは,当該表見取締役は,会社法第908条第2項の類推適用により,自己が取締役でないことをもって善意の第三者に対抗することができず,会社法第429条第1項の「取締役」に該当し,同項所定の第三者に生じた損害を賠償する責任を免れないとの見解があります。   この見解が,会社法第908条第2項を直接適用するとしていないのは,なぜですか。  学生:ア 会社法第908条第2項の「不実の事項を登記した者」には,当該登記を申請した会社だけではなく,不実の登記行為に加功した者も含まれるからです。

 この見解は,つまり,判例の見解になるわけですが,上掲判決2段目にあるように,「不実の事項を登記した者」は,登記を申請した商人(登記申請権者)…ここでは,会社です…をさすと解しているから,直接適用することはできない,類推適用だということになります。不実の登記行為に加功した者も含むというように拡張して解釈するのであれば,直接適用となります。したがって,アは,明らかに誤った記述となります。

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表見取締役と名目取締役 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 表見取締役と名目取締役
 両者を事実上の取締役という範疇でくくることもできるとする記述もあります(有斐閣アルマ商法総則・商行為法 第2版 P171)。しかし,前者と後者は,法律上,取締役であるかどうかで決定的に異なります。前者は,司法書士試験の問題文にあるように,「取締役でないのに取締役として就任の登記をされた者」であり,つまりは,適法な選任手続を経ていない取締役ということになります。つまり,取締役ではないのだということですね。上記書は,「登記簿上の取締役」と呼んでいます。会社法判例百選P162もそうです(79 選任決議を欠く登記簿上の取締役と第三者責任)

 これに対して,名目取締役というのは,旧商法時代の株式会社でよく存在していました(今でもあちこちに存在しているのではないでしょうか)。旧商法時代には,株式会社は,必ず取締役を3人以上選任して取締役会を設置しなければならなかったため,有限会社ではなく,株式会社にしたいという個人事業主は,法人成りに際して(事業をはじめるについて最初から株式会社を設立する場合もですが),員数揃えのため友人・知人に頼みこんで,取締役に就任してもらうというものです。取締役になった彼らは,取締役としての職務を何もしない・・・そのうち,会社が倒産して,会社の債権者が,名目取締役に対して,会社法429条1項によって責任追及をするということになります。

 名目的取締役は,取締役ですから,会社法429条1項の「役員等」に当たると言えますし,取締役会の構成メンバーとして,代表取締役を監督する取締役としての任務懈怠があり,重過失を認定することもできると考えられますから,会社債権者は,名目取締役に対して,会社法429条1項により,損害賠償責任を追及することができると考えられます。名目取締役の責任を肯定した判例として,最判昭和55年3月18日があります。

 しかし,表見取締役は,取締役ではありません。したがって,会社法429条1項の「役員等」には当たりません。それにもかかわらず,最判昭和47年6月15日は,就任の登記について承諾を与えていた者について,会社法429条に当たる旧商法266条ノ3の責任を免れないとしました。本年度の司法書士試験午前の部第31問は,この判例をもとに出題されています。


表見取締役と名目取締役及び表見代表取締役 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 表見取締役と名目取締役及び表見代表取締役 

 今年度の司法書士試験の午前の部第35問の文中に表見取締役という文字をみたとき,見たこと,聞いたことがないなと思った人も多いことだろうと思います。表見代表取締役と見間違えた人も案外いるのではないでしょうか。

 表見代表取締役は,会社法の条文見出しにもあることだし,知っているけど,表見取締役は・・・という人が多いのではないかと思います。表見が前についている点で同じですから(外観法理ないし禁反言則による責任を負う場合という点では同じ),この単語だけ見たり聞いたりしたときは同じ仲間かなと考えるのが自然のような気がします。もっとも,問題文に「取締役でないのに取締役として就任の登記をされた者」と書かれていましたから,落ち着いてみれば,表見代表取締役とは異なることは,すぐわかりますね。

 表見代表取締役の問題と表見取締役の問題は,誰の責任が問題とされているのかという点が,つまり,第三者による責任追及の相手方が異なります。表見代表取締役においては,表見代表取締役がした行為について株式会社が第三者に対して責任を負うというものですが,表見取締役においては,就任登記をされた表見取締役が第三者に対して責任を負うというものです。名目取締役も,名目取締役が責任を負うという問題です。

 では,例によって,問題となる条文です。声を出して読んでみませんか。表見取締役は,表見的取締役,名目取締役は,名目的取締役とそれぞれ的を付して呼ばれることもあります。

 表見代表取締役
 会社法354条
 株式会社は,代表取締役以外の取締役に社長,副社長その他株式会社を代表する権限を有するものと認められる名称を付した場合には,当該取締役がした行為について,善意の第三者に対してその責任を負う。

 表見取締役 名目取締役
 会社法429条1項
 役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは,当該役員等は,これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。


 表見取締役
 会社法908条2項
 故意又は過失によって不実の事項を登記した者は,その事項が不実であることをもって善意の第三者に対抗することができない。

名目取締役と表見取締役をどの条文の見出しにしようかと思いましたが,上記のようにしました。

問屋の権利 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 問屋の権利
 問屋は,一般的な権利として,報酬請求権(商法512条)及び費用に関する請求権(民法650条等)を有しますが,商法は,特則として,次の各権利について規定しています。

 留置権
 商法557条は,代理商の留置権に関する商法31条を準用しています。そこで,問屋は,委託者のために物品の販売又は買入れをしたことによって生じた債権(例えば,報酬請求権や費用償還請求権)の弁済期が到来しているときは,その弁済を受けるまでは,委託者のために問屋が占有する物又は有価証券を留置することができます(同条本文)。ただし,当事者が別段の意思表示をしたときは,このかぎりではありません(同ただし書)。
 商法521条に留置権の規定があるのにもかかわらず,どうして,このような規定があるのでしょうか。商法521条の留置権は,商人間だからです。商法521条だけであれば,委託者が商人でない場合に,問屋が保護されないからです。

 供託・競売権
 問屋が買入れの委託を受けた場合において,委託者が買い入れた物品を受け取ることを拒み,又はこれを受け取ることができないときは,問屋は,売買における売主の供託権・競売権に関する商法524条が準用されます(商法556条)。そこで,問屋は,その物を供託し,又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができます。この場合において,問屋がその物を供託し,又は競売に付したときは,遅滞なく,委託者に対してその旨の通知をしなければなりません。競売に付する場合には,原則として,相当の期間を定めて催告をしなければなりませんが,損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は,催告をしないで競売に付することができます。競売に付したときは,問屋は,代価を供託しなければなりませんが,費用及び報酬に充当することは妨げられません。

 以上は,民法497条の特則です。商取引の敏活決済を目的とします。

 民法497条
 弁済の目的物が供託に適しないとき,又はその物について滅失もしくは損傷のおそれがあるときは,弁済者は,裁判所の許可を得て,これを競売に付し,その代金を供託することができる。その物の保存について過分の費用を要するときも,同様とする。

 介入権
 商法555条1項は,問屋が取引所の相場のある物品の販売又は買入れの委託を受けたときは,問屋は,自ら買主又は売主となることができますが(これを問屋の介入権といいます),この場合においては,売買の代価は,問屋が買主又は売主となることの通知を発した時における取引所の相場によって定めるものとしています。

 問屋が販売又は買入れを委託された物品の買主又は売主となることによって,委託者の目的は迅速に達成されることから,介入権が認められるのですが,しかし,この場合には,問屋と委託者の利益が相反し,委託者の利益が害されるおそれがあります。そこで,商法は,目的物が取引所の相場のある物品であること,その売買価格を委託者に対しその旨の通知を発した時の取引所の相場によるものとして,認めることにしました。

 問屋の介入権の行使によって,問屋と委託者の間に売買契約が成立することになるとともに,問屋は,委託を実行したことになりますから,問屋は,委託者に対して報酬を請求することができます(商法555条2項)。

問屋の義務 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 問屋の義務
 問屋は,受任者として,善管注意義務を負い(民法644条),また,取得した物品又は代金を委託者に引き渡す義務を負いますが(民法646条),商法は,問屋の義務として,次の3個の義務について規定を置いています。

 通知義務
 問屋が委託者のために物品の販売又は買入れをしたときは,遅滞なく,委託者に対して,その旨の通知を発しなければならないとされています。代理商の通知義務に関する商法27条の準用です(商法557条)。民法では,これは,委任者の請求があったとき,及び委任が終了した後の報告義務となっていますが,問屋は,委託者の請求を待たずに通知を発すべき義務を負うとされています。これは,取引の迅速主義の要求及び委託者の便宜を図ることに基づきます(コンメンタール商行為法P313)。問屋は,通知を発すればよく,到達については責任を負いません。


 指値順守義務
 商法554条
 問屋カ委託者ノ指定シタル金額ヨリ廉価ニテ販売ヲ為シ又ハ高価ニテ買入ヲ為シタル場合ニ於テ自ラ其差額ヲ負担スルトキハ其販売又ハ買入ハ委託者ニ対シテ効力ヲ生ス

 売買価格について委託者が問屋に対して指定する場合もあり,また,問屋に一任することもあります。前者が指値売買(さしねばいばい)であり,後者が成行売買(なりゆきばいばい)です。指値は,通常,委託販売のときは最低価格を,委託買入のときは最高価格とされます。指値売買のときには,問屋は,当然,その指値を順守する義務を負うわけですが,問屋がその指値を順守せず,指値より安く売り,あるいは高く買った場合には,委託者は,委託に反するものとして,委託者に対して効力が生ずることを否定することができます。もっとも,問屋がその差額を負担するのであれば,委託者にとって利益が別段害されることはないということで,その販売又は買入れは委託者に対して効力を生ずるとされています。これが商法554条です。

 履行担保義務(責任)
 商法553条
 問屋ハ委託者ノ為ニ為シタル販売又ハ買入ニ付キ相手方カ其債務ヲ履行セサル場合ニ於テ自ラ其履行ヲ為ス責ニ任ス但別段ノ意思表示又ハ慣習アルトキハ此限ニ在ラス

 問屋は,反対の特約又は慣習のない限り,委託者のためにした販売又は買入れについて,相手方がその債務を履行しない場合には,自らその履行をする責任をおうとされています(商法533条)。この問屋の履行担保義務は,委託者を保護するものですが,このように法が問屋に責任を負わせることによって,問屋制度の信用を維持しようとするものです(このような責任を認めると利用者は安心して問屋を利用することができることになります)。したがって,この問屋の責任は,無過失責任であると解されます。

 平成22年度司法書士試験 午前の部 第35問
 オ 問屋は,委託者のためにした売買について,相手方がその債務を履行しない場合には,その履行をする責任を負うが,仲立人は,媒介した商行為について,当事者の一方の氏名又は商号を相手方に示さなかったときを除き,そのような責任は負わない。○


 エ 問屋は,委託者のためにした売買契約が成立した場合には,各当事者の氏名又は商号,行為の年月日及び契約の要領を記載した書面を作成し,署名し,又は記名押印した後に,その書面を委託者に交付する義務を負うが,仲立人は,媒介する商行為が成立した場合でも,そのような義務は負わない。×
 問屋と仲立人が逆です。そもそも,1行目の問屋の記述に関して,各当事者のという表現がおかしいですね。

問屋における代理の規定の準用 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 代理に関する規定の準用

 商法552条は,問屋と委託者との間においては代理に関する規定を準用するとしています。すでに述べたように,問屋と代理とは法形式上は,全く異なるのですが,販売又は買入れが委託者の計算で行われることから(経済的効果,問屋と代理の経済的実質の類似),このような規定が置かれているものと考えられます。

 しかし,問題は,この規定によって,代理に関するどのような規定が準用されるかどうかです。難しい問題です。まず,民法107条2項の復代理の規定が準用されるかどうかの問題があります。まず,復代理人に関する民法107条2項(復代理人は,本人及び第三者に対して,代理人と同一の権利を有し,義務を負う。)が準用されるかどうか。すなわち,甲から物品の販売の委託を受けた問屋Aが,問屋Bに当該物品の販売を再委託した場合に,甲は,民法107条2項の準用により,Bに対して直接権利を主張することができるかどうかです。最高裁判所は,これを否定しています。

 最判昭和31年10月12日
「問屋と委託者との法律関係はその本質は委任であり商法522条2項が両者の間に委任及び代理に関する規定を準用すると定めているのは,委任の規定を適用し,代理の規定を準用する趣旨であり,そして代理に関する規定中民法107条2項は,その本質が単なる委任であって代理権を伴わない問屋の性質に照らし再委託の場合にはこれを準用すべきでないと解するを相当とする。」


なお,最判昭和49年10月15日は,「商品取引所の取引員は法律上の問屋であるから,同人が取引所において自己の名で売買取引をしたときは,委託者の指図に基づかない場合でも,取引自体は法律上の効力を生じ,委託者は,取引員との関係でその取引による計算が自己に帰属することを否認することはできるが,その取引自体を無効とすることはできない。」としています。

 一番問題となるのは,問屋が破産した場合の問題です。すなわち,問屋が委託に実行によって取得した権利を委託者に移転する前に問屋が破産した場合に,委託者は,この権利を破産財団から取り戻すことができるかどうかです。争いがありますが,最高裁判所は,これを肯定しています。

 最判昭和43年7月11日
「問屋が委託の実行として売買をした場合に,右売買によりその相手方に対して権利を取得するものは,問屋であって委託者ではない。しかし,その権利は委託者の計算において取得されたもので,これにつき実質的利益を有する者は委託者であり,かつ,問屋は,その性質上,自己の名においてではあるが,他人のために物品の販売または買入をなすを業とするものであることにかんがみれば,問屋の債権者は問屋が委託の実行としてした売買により取得した権利についてまでも自己の債権の一般的担保として期待すべきではないといわなければならない。されば,問屋が前記権利を取得した後これを委託者に移転しない間に破産した場合においては,委託者は右権利につき取戻権を行使しうるものと解するのが相当である。」

 商法552条で問屋と委託者との間で代理に関する規定を準用すると定めた意味について,コンメンタール商行為法P279は,「買入委託の場合に問屋の買入れた物品または債権が問屋から委託者への特別の譲渡行為なくして,問屋と委託者との間においては,委託者に帰属するということ,及び代理人と本人との対内関係に関係する若干の規定,すなわち復任権に関する規定(民104条・105条)が適用されるということである」としています。

問屋 委任の規定の適用 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 内部関係
 商法552条2項  問屋ト委託者トノ間ニ於テハ本章ノ規定ノ他委任及ヒ代理ニ関スル規定ヲ準用ス

 委任の規定の適用
 商法552条は,問屋と委託者との間においては,問屋に関する規定のほか,委任に関する規定が準用されるとしているが,問屋と委託者との取次契約は,委任契約そのものですから,準用ではなく,適用です(この点については争いがないと言われています)。

 そこで,民法の委任に関する規定の適用により,問屋は,委託者に対して善良な管理者の注意をもって,その事務を処理する義務を負います(民法644条)。また,受任者の報酬に関する民法648条2項が適用され,後払となります。つまり,問屋は,委託者のためにする売買契約が成立する前に委託者に報酬を請求することはできません。もちろん別段の意思表示があれば別でしょうが,通常は,そのようなことはないと思われます。さらに,費用に関する民法の規定(民法649条~650条)が適用されます。

 平成22年度司法書士試験 午前の部 第35問
 ウ 問屋は,委託者のためにする売買に関し,委託者に対して善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負うが,仲立人は,委託者のため商行為の成立に尽力する義務を負う場合であっても,媒介する商行為に関し,当事者に対して善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務は負わない。×
後半は誤っていますが,前半は正しい記述です。

 イ 問屋は,委託者のためにする売買契約が成立する前であっても,委託者に報酬を請求することができるが,仲立人は,媒介する商行為が成立する前に,当事者に報酬を請求することはできない。×
後半は正しいのですが,前半の記述が誤っています。

問屋の法律関係 その1 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 問屋の法律関係

対外関係
 商法552条1項   問屋ハ他人ノ為ニ為シタル販売又ハ買入ニ因リ相手方ニ対シテ自ラ権利ヲ得義務ヲ負フ

 これは,問屋と第三者との間でした売買契約について権利を有し義務を負うのは問屋であるということを意味する条文です。問屋と第三者(相手方)との間の売買契約は,問屋が自分の名でしたものだから,法律上の権利義務の主体は,委託者ではなく,問屋であり,これは,当然のことを規定しているということになります。問屋の行う売買が委託者のために行われたことについて,第三者(相手方)が知っていたかどうかによって結論に違いはありません。「問屋と相手方との関係は,通常の売買における売主と買主との関係と同一である。委託者が問屋の相手方と直接の関係に立つことはなく,委託者は問屋から権利の譲渡を受けまたは債務の引受をしない以上,問屋の相手方に対して権利を主張することはできないし,また義務を負うこともない。」(コンメンタール商行為法P281)。

このように,対外関係においては,内部関係で問題となる経済的実質よりも法的形式が問題となります。そこで,売買契約の成立及び効力に影響を及ぼすべき事情は,問屋について決されることになります。もっとも,民法101条2項は類推適用されると解されています。

 民法101条2項
 特定の法律行為を委託された場合において,代理人がその指図に従ってその行為をしたときは,本人は,自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても,同様とする。

 平成22年度司法書士試験 午前の部 第35問
 ア 問屋は,委託者のためにした物品の販売に関し,支払を受けることができるが,仲立人は,媒介した商行為に関し,当事者のために支払を受けることはできない(問題文冒頭に,「ただし,別段の意思表示又は慣習はないものとする。」とあります。)。○
 前半も後半も正しい記述です。なお,後半については,前述 http://bit.ly/9H4exH

問屋営業 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 問屋営業

 問屋は,「といや」と読みます。「とんや」とは,概念が異なります。「とんや」は,世間では,卸売商(商品の流通過程において生産者と小売商との間にいる商人)のことをいいます。例えば,呉服問屋とかいいますよね。「とんや」は「といや」ではありません。法律的にみれば,自己の名で売買をするのは共通しますが,他人の計算でするか,自己の計算でするかで決定的に異なります。

 問屋の定義
 商法551条  問屋トハ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為ニ物品ノ販売又ハ買入ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ

 口語文にします。問屋とは,自己の名をもって他人のために物品の販売又は買入れを行うことを業とする者をいう。自己の名をもってとは,問屋自身の名義でということで,物品の販売又は買入れの契約の当事者は,委託者ではなく,問屋ということです。他人のためにとは,他人の計算においてであると言われますが,経済的効果(取引から生ずる損益)が誰に帰属するかを問題にしています。

 法律行為は,原則的な形としては,本人の名義及び計算で行われます。例えば,Aが自分を契約当事者として売主Bと売買契約を締結し,Aに法律的効果(所有権移転,代金支払い義務等)が帰属します。ところが,他人の名で法律行為をし,その他人に法律的効果が帰属するというものがあります。代理です。その間にあるもの,つまり,自分の名で法律行為をするから法律的効果は行為者自身に帰属するが,その経済的効果は他人に帰属するというもの,これを取次ぎといいます。間接代理ということもあります。

 問屋 運送取扱人 準問屋
 取次ぎに関する行為を営業としてするときは商行為とされますから(営業的商行為,商法502条11号),自己の名をもって取次ぎに関する行為を業としてする者は,商人です(商法4条1個)。このような取次業者には,取次ぎの目的である行為が何であるかによって3種類に分けられます。物品(有価証券を含みます,最判S32.5.30)の販売又は買入れであるときが,問屋,物品運送(契約)であるときが,運送取扱人(商法559条1項),以上以外のときが,準問屋(商法558条)です。

 商法559条
 運送取扱人トハ自己ノ名ヲ以テ物品運送ノ取次ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ
② 運送取扱人ニハ本章ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外問屋ニ関スル規定ヲ準用ス

 商法558条
 本章ノ規定ハ自己ノ名ヲ以テ他人ノ為ニ販売又ハ買入ニ非サル行為ヲ為スヲ業トスル者ニ之ヲ準用ス

仲立人の権利 2 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 仲立人の報酬請求権
 商法512条
 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは,相当な報酬を請求することができる。

 商法550条
 仲立人ハ第546条ノ手続ヲ終ハリタル後ニ非サレハ報酬ヲ請求スルコトヲ得ス
 ② 仲立人ノ報酬ハ当事者双方平分シテ之ヲ負担ス

 仲立契約は,委任契約です。民法の規定によれば,特約がないかぎり無償ということになるのですが(民法648条1項),仲立人は,商人で,その営業の範囲内で他人のために行為をするということですから,特約の有無にかかわらず,報酬請求権を有します。この報酬請求権は仲立料と呼ばれます。この報酬には,費用(交通費,通信費等)が当然に含まれると解され,仲立人は,報酬とは別にこの費用を請求することはできないと解されています。

 商法550条は,その報酬の支払時期と報酬支払義務者について規定しています。まず,報酬の支払時期は,結約書の作成・交付の手続を終了した後とされています。ここまでが,仲立人のしなければならないことですから,この段階で報酬の支払の請求をすることができるというわけです。つまり,仲立人の媒介によって当事者間に契約が成立し,結約書の作成・交付が終了すれば,報酬の支払の請求をすることができます。


 また,仲立人の報酬支払義務は,仲立人に委託した一方当事者だけでなく,委託していない相手方も負担し,当事者双方が平分して(半額ずつ)負担するとされています。
 当事者双方が負担するという理由について,有斐閣アルマ商法総則・商行為法 第2版 P274は,「仲立人は,事後の紛争に備えて種々の義務を負うなど,委託者でない相手方についても,公平にその利益を図って業務を遂行する立場にあるので,委託者ばかりでなく非委託者に対しても,報酬を請求できるとされたものである。」としています。

 平成22年度司法書士試験 午前の部 第35問
イ 問屋は,委託者のためにする売買契約が成立する前であっても,委託者に報酬を請求することができるが,仲立人は,媒介する商行為が成立する前に,当事者に報酬を請求することはできない。×
後半は正しい記述ですが,前半の記述が誤っています。


仲立人の権利 1 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

給付受領代理権
  商法544条 仲立人ハ其媒介シタル行為ニ付キ当事者ノ為ニ支払其他ノ給付ヲ受クルコトヲ得ス但別段ノ意思表示又ハ慣習アルトキハ此限ニ在ラス

  商法544条本文は,仲立人は,その媒介した行為について,当事者のために支払その他の給付を受けることができないとしていますが,これは,仲立人に給付受領の代理権を否定したものであり,当然のことを規定したもの,つまり,注意的な規定です。というのは,仲立人は,媒介をする者であって,自ら法律行為の当事者となるものではなく,また,代理人ではないからです。
 例外として,別段の意思表示があるとき又は慣習があるときは,当事者のために支払その他の給付を受けることができます(同条ただし書)。

 平成22年度司法書士試験 午前の部 第35問 ア 問屋は,委託者のためにした物品の販売に関し,支払を受けることができるが,仲立人は,媒介した商行為に関し,当事者のために支払いを受けることはできない。(問題文冒頭に,「ただし,別段の意思表示又は慣習はないものとする。」とあります。)○
問屋の説明は,後にすることにする予定ですが,前半も後半も正しい記述です。

氏名又は商号の黙秘義務及び介入義務 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 氏名又は商号の黙秘義務及び介入義務(商法548条,549条)
 当事者がその氏名又は商号を相手方に示さないように命じたときは,仲立人は,これに従わなければならず,そこで,仲立人は,結約書及び仲立人日記帳の謄本にその氏名又は商号を記載することができません(商法548条)。

 商法548条の立法理由は,結約書及び仲立人日記帳に,各当事者の氏名又は商号を記載しなければならないとされていることから,当事者から黙秘を命じられたときの黙秘義務を明確にする必要があることにあります。さらに,黙秘義務の実用性についての立法理由として,コンメンタール商行為法(喜多先生執筆)P250は,「当事者は自己の氏名または商号を相手方に知らせないまま,仲立人をして交渉に当たらせることによって,取引を有利に導く場合がしばしばあるとともに,相手方にとっても没個性的な商取引の当事者がだれであるかを知る必要のない場合が多いことである(同説,松木105頁,石井52頁,服部=星川・基コ117頁(神崎執筆))。」としています。

 商法549条は,この黙秘義務に関連して,仲立人が当事者の一方の氏名又は商号をその相手方に示さなかったときは,相手方に対して,自ら履行をする責任を負わなければならないとしています。これを仲立人の介入義務といいます。仲立人は,契約の当事者ではありませんから,本来,履行の責任を負う者ではありませんが,「当事者の一方を匿名にして仲介をした結果について,相手方の信頼を裏切らないための担保責任」(上記書P252)として,責任を負います。そうでなければ,氏名又は商号を黙秘した一方当事者の相手方が信用してその様な取引に応じないということにもなりますから,このような担保責任は,このような制度の信用維持のためのものであると言えます。

 なお,商法548条の立法理由は,結約書及び仲立人日記帳に,各当事者の氏名又は商号を記載しなければならないとされていることから,当事者から黙秘を命じられたときの黙秘義務を明確にする必要があることにあると書きましたが,当事者から黙秘を命じられた場合に限定されません(条文参照)。また,匿名の当事者が媒介の委託者である場合だけでなく,相手方である場合も,仲立人は,介入義務を負います。

平成22年度司法書士試験 午前の部 第35問 オ 問屋は,委託者のためにした売買について,相手方がその債務を履行しない場合には,その履行をする責任を負うが,仲立人は,媒介した商行為について,当事者の一方の氏名又は商号を相手方に示さなかったときを除き,そのような責任は負わない。○

仲立人の義務 2 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 見本保管義務
 仲立人は,その媒介する行為について見本を受け取ったときは,その行為が完了するまで,これを保管する義務を負うとされています(商法545条)。仲立人の見本保管義務です。

 商法545条から商法547条にかけて規定されている仲立人の3個の義務は,契約当事者間の後日の紛争を防止するという趣旨で共通しています。取引の目的物が見本によって定められ,見本と同一の品質を有することを保証する売買,これを見本売買といいますが,見本売買において,仲立人が受け取った見本が,将来において生ずるかもしれない当事者間の紛争解決のための証拠となることから(証拠保全),保管義務が課されています。

 「其行為カ完了スルマテ」とは,上記の趣旨からして,媒介による行為の完了の時までということではなく(目的物が給付されただけでなく),品質に関する紛争が発生しないことが確実になった時をいうものと解されています(通説)。


 結約書の作成・交付義務
 媒介によって,当事者間に行為,つまり,契約が成立したときは,仲立人は,遅滞なく,契約の各当事者の氏名又は商号,行為(契約)の年月日及びその要領を記載した書面を作成して,署名した後,これを各当事者に交付しなければならないとされています(商法546条1項)。この書面を結約書とか,仕切書とか契約証とかいいます。
 後日の紛争防止のため,契約内容を記載した書面を作成して,各当事者に交付するというものです(証拠保全)。各当事者の請求を待つまでもなく作成して交付しなければなりませんが,契約成立の要件ではありません。なお,各当事者の氏名又は商号が記載事項とされていますが,当事者から氏名又は商号の黙秘の命令があったときは,それを守らなければなりません(商法548条)。

 当事者が直ちに履行すべき場合ではない場合(目的物の給付が条件付きあるいは期限付きの場合)には,仲立人は,各当事者に上記の結約書に署名させた後,これをその相手方に交付しなければならない(商法546条2項)。結約書の交換ですね。その際に,当事者の一方が結約書を受領せず,又は,これに署名しないときは,仲立人は,遅滞なく,相手方に対してその通知を発しなければなりません(同条3項)。当事者の一方が結約書を受領しないとか,署名しないということは,その契約について異議があるということでしょうから,遅滞なく連絡をして,処置を講じさせる必要があるからです。

 帳簿に関する義務
 仲立人は,帳簿(仲立人日記帳と呼ばれる)を備えて,これに上記の結約書に掲げた事項を記載して保存の上,各当事者の請求があれば,いつでも,仲立人日記帳の関係部分の謄本を交付しなければなりません(商法547条)。これも,証拠保全です。ここでも,当事者から氏名又は商号の黙秘の命令があったときは,それを守らなければなりません(商法548条)。

 平成22年度午前の部第35問 
エ 問屋は,委託者のためにした売買契約が成立した場合には,各当事者の氏名又は商号,行為の年月日及び契約の要領を記載した書面を作成し,署名し,又は記名押印した後に,その書面を委託者に交付する義務を負うが,仲立人は,媒介する商行為が成立した場合でも,そのような義務は負わない。×

仲立人の義務 1 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 仲立人の義務
 商法は,契約当事者間の後日の紛争を防止するために3個の義務を仲立人に課しています。第1に,見本保管義務(商法545条),第2に,結約書の作成・交付義務(商法547条),第3に,帳簿に関する義務です。また,そのほかに,仲立人の義務として氏名又は商号の黙秘義務及び介入義務(商法548条,549条)を課しています。

 今回は,各条文を読んでみることにします。いずれも,文語体ですね。平成17年の商法改正で匿名組合までは口語化されましたが,仲立営業以下(商法543条以下)は,そのままとなっています。表記としては濁点が入るべきところに入っていませんが,読むに際しては,濁点をつけてよみます。例えば,仲立人が・・・するまで・・・ 為すべき せざる・・・掲げたるという風に。句点も読点もありません。句点は,まあいいとして,読点は,付けた方が読みやすいですよね。一度,声に出して読んでみてはいかがでしょうか。

見本保管義務
商法545条
 仲立人カ其ノ媒介シタル行為ニ付キ見本ヲ受取リタルトキハ其ノ行為カ完了スルマテ之ヲ保管スルコトヲ要ス


結約書の作成・交付義務
商法546条
 当事者間ニ於テ行為カ成立シタルトキハ仲立人ハ遅滞ナク各当事者ノ氏名又ハ商号,行為ノ年月日及ヒ其要領ヲ記載シタル書面ヲ作リ署名ノ後之ヲ各当事者ニ交付スルコトヲ要ス
② 当事者カ直チニ履行ヲ為スヘキ場合ヲ除ク外仲立人ハ各当事者ヲシテ前項ノ書面ニ署名セシメタル後之ヲ 其ノ相手方ニ交付スルコトヲ要ス
③ 前2項ノ場合ニ於テ当事者ノ一方カ書面ヲ受領セス又ハ之ニ署名セサルトキハ仲立人ハ遅滞ナク相手方ニ 対シテ其通知ヲ発スルコトヲ要ス


帳簿に関する義務
商法547条
 仲立人ハ其帳簿ニ前条第1項ニ掲ケタル事項ヲ記載スルコトヲ要ス
② 当事者ハ何時ニテモ仲立人カ自己ノ為ニ媒介シタル行為ニ付キ其帳簿ノ謄本ノ交付ヲ請求スルコトヲ得


仲立人の氏名又は商号黙秘の義務及び介入義務
商法548条
 当事者カ其氏名又ハ商号ヲ相手方ニ示ササルヘキ旨ヲ仲立人ニ命シタルトキハ仲立人ハ第546条第1項ノ書面及ヒ前条第2項ノ謄本ニ其氏名又ハ商号ヲ記載スルコトヲ得ス

商法549条
 仲立人カ当事者ノ一方ノ氏名又ハ商号ヲ其相手方ニ示ササリシトキハ之ニ対シテ自ラ履行ヲ為ス責ニ任ス

1.JPG 2.JPG


仲立人 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

仲立人

 旅行斡旋業者でもいいし,不動産取引業者(宅地建物取引業者)でもいいのですが,まず,イメージしておきます。ただし,後者については,商行為に当たらない不動産取引の媒介をする場合には,次に述べる商事仲立人ではなく,民事仲立人に当たります。

 商事仲立人と民事仲立人
 仲立ちとは,他人間の法律行為を媒介することをいいます。自らが当該法律行為をするわけではありません。仲立人は,このような他人間の法律行為の媒介をすることを業とする者をいいますが,その法律行為が商行為である場合と商行為以外の法律行為の場合とがあります。前者が,商事仲立人,後者が,民事仲立人と呼ばれます。商法543条は,「仲立人トハ他人間ノ商行為ノ媒介ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ」としており,544条以下に商事仲立人の権利義務について規定しています。媒介とは,契約成立に至るように各種の仲介,斡旋,勧誘といった事実行為をすることを意味するのですが,契約の成立に尽力することと表現されたりもします。

 結婚仲介業者や家庭教師の斡旋業者も民事仲立人です。民事仲立人も,商人です。仲立ちに関する行為が営業的商行為とされ(商法502条11号),民事仲立人は,自己の名をもって商行為をすることを業とする者だからです(商法4条1項)。

 以下,商法543条以下に従い,仲立人とは,商事仲立人を意味するものとします。

 仲立契約の法律的性質
 代理商契約の場合には,委任もしくは準委任であると書きましたが,仲立契約は,準委任(民法656条)です。仲立ちは,法律行為ではなく,事実行為だからです。もっとも,民法656条は,「この節(第10節 委任)の規定は,法律行為でない事務の委託について準用する。」としていますから,委任であっても,準委任であっても,いいのですが,ここでは,仲立ちに関する行為が法律行為でない事務,事実行為であることをしっかりと頭に入れておきます。問屋との比較においてです。

 仲立人の義務
仲立契約は,準委任契約です。したがって,民法656条により民法644条が準用されます。
「受任者は,委任の本旨に従い,善良な管理者の注意義務を負う。」善管注意義務です。しかし,民法の規定だけでは不十分として,商法は,特別の規定を置いています。

 まず,仲立人の義務に関する規定です。商法は,契約当事者間の後日の紛争を防止するために3個の義務を仲立人に課しています。第1に,見本保管義務(商法545条),第2に,結約書の作成・交付義務(商法547条),第3に,帳簿に関する義務です。また,そのほかに,仲立人の義務として氏名又は商号の黙秘義務及び介入義務(商法548条,549条)を課しています。
以下,次回につづきます。

 平成22年度 午前の部 第35問
ウ 問屋は,委託者のためにする売買に関し,委託者に対して善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負うが,仲立人は,委託者のため商行為の成立に尽力する義務を負う場合であっても,媒介する商行為に関し,当事者に対して善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務は負わない。×


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仲介業 代理商 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 今年度の午前の部第35問は,問屋と商事仲立人との比較という商行為法の問題でした。そこで,問屋と商事仲立人に関する事柄について,何回かにわけて書いてみることにします。

仲介業
 商法総則・商行為法の本をみると,代理仲立問屋を一つの章としてまとめてあるものがあります。代理は,代理商,仲立は,仲立営業(仲立人),問屋は問屋営業を取り扱っています。これらに共通するのは,仲介業務に関するということです。その仲介の形態として,ここに3類型が挙げられていることになります。

 まず,それぞれの商人のイメージがあった方がわかりやすいでしょうね。具体例でいきましょう。代理商については,損害保険の代理店をイメージしておきましょうか(家電製品の代理店でもいいですよ)。自動車の任意保険で毎年一度は連絡がありませんか。仲立人としては,旅行斡旋会社(もちろん会社である必要はありませんが,有名なところでもイメージしてください),問屋としては,証券会社をイメージしておきましょう。私が商行為法を習ったときは,証券会社が典型例だと言われたものですが,現在,金融商品取引法があるため,証券会社を商法の問屋と解する実益はほとんどないと言われていますが・・・。

 街をあるくとき,あるいは車で通るとき,看板をみたら,代理商,仲立人,問屋というように,確認しておくといいですね(連想です)。

代理商 
 さて,まず,代理商ですが,今年度は,出題されませんでしたが,可能性があるということで,さわりだけ。商法総則と会社法に規定があります。会社の代理商について,「体系書 会社法 上巻」P27からP30までにかけて,ふれています。

 代理商については,定義があって,「商人のためにその平常の営業の部類に属する取引の代理又は媒介をする者で,その商人の使用人でないものをいう。」とされています(商法27条括弧書)。会社法は,会社の代理商の定義規定を置いていますが,上記の商人の部分が会社になっているだけで,あとは,同じです(会社法16条括弧書)。会社も商人ですから(商法4条1項,会社法5条),以下,会社を含めて,商人の用語を使います。

 定義付けから,代理商は,取引の代理をする締約代理商と取引の媒介をする媒介代理商に分けることができます。取引の代理とは,商人の代理人として商人の名で相手方との間で法律行為をすることをいいます。これに対して,取引の媒介とは,商人と相手方との間で契約成立に至るように各種の仲介,斡旋,勧誘といった事実行為をすることをいいます。
 そこで,締約代理商は,法律行為をするという点において問屋と共通する面を有し,媒介代理商は,法律行為をするのではなく,契約成立に至るよう事実行為をするという点において,仲立人と共通する面を有します。

 しかし,代理商は,特定の商人のために取引の代理又は媒介をする者であって,不特定の商人あるいは商人でない者のために活動する仲立人や問屋と異なります。そこで,代理商の条文の位置が,商行為法のところになく,商法総則の商業使用人の次にあると言われています(会社法では,会社の使用人の次)。

 代理商契約(商人と代理商との間の契約)の法的性質は,委任(締約代理商)もしくは準委任(媒介代理商)です。そこで,委任に関する民法及び商法の一般規定(民法643条以下,商法504条,505条)の適用もしくは準用(民法656条)を受けることになりますが,商法総則に,代理商の権利義務について,特別の規定を置いています。

午前の部 第30問 ア [平成22年度司法書士試験筆記試験]

第30問 ア 
取締役会は,3か月に1回以上開催しなければならないが,監査役会は,3か月に1回以上開催することを要しない。

 正しい記述です。この点も,取締役会についてはこれに関する規定があるが(直接規定しているわけではありませんが),監査役会については,これに関する規定がないというものですね。私の作成した表には入っていません・・・。改訂の際には入れなければならないかな・・・本試験に出たからなあ・・・。このようなところを問うとは思っていなかったからなあ・・・。といっても,言うまでもないことかもしれないし・・・。

 しかし,取締役会の開催について知っていれば,正しいと判断できますね。「体系書 会社法 上巻」P395~P396です。

 「取締役会は,意思決定機関であって,取締役会が決定したことの執行は,代表取締役や代表取締役以外の業務執行取締役に委ねられる。取締役会は,これらの取締役の職務の執行を監督する権限と義務を有する。この監督は,取締役の職務執行の適法性だけでなく妥当性にも及ぶ。
 このような取締役会の監督権限が十分に実効的に行われるためには,取締役会の構成員である各取締役が取締役会設置会社の業務の執行の状況についての情報を与えられている必要がある。そこで,業務執行権限を有する取締役すなわち代表取締役及び業務執行取締役は,3カ月に1回以上,自己の業務の執行の状況を取締役会に報告しなければならないこととされている(会社法363条2項)。後述のように,会社法は,取締役会への報告の省略の制度を創設したが(会社法372条),この報告については,省略することができない(同条2項)。したがって,取締役会は,決議すべき事項がない場合でも,少なくとも3カ月に1回は開かれなければならないということになる。1年に4回開けばいいということではない。」

 監査役会については,監査役会の職務の内容(会社法390条2項)からして,上記のような取締役の監査役会への報告義務はなく,したがって,3カ月に1回以上開催しなければならないということはないということになるのでしょうね。


午前の部 第30問 エ [平成22年度司法書士試験筆記試験]

第30問 エ
取締役会における議決の要件は,定款で定めるところにより加重することができるが,監査役会における議決の要件は,定款で定めることにより加重することができない。

 正しい記述です。形式的理由(根拠)としては,取締役会については規定があるが,監査役会については規定がないということになります。つまり,取締役会については,定足数及び決議要件について会社法369条1項が規定しています。次のとおりです。

 会社法369条1項
 取締役会の決議は,議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては,その割合以上)が出席し,その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては,その割合以上)をもって行う。

 括弧書で加重することができることが明らかにされています。実質的理由は,取締役会の決議をより慎重に行わせることは,むしろ望ましいことであり,禁止する必要はないというところにあります(「体系書 会社法 上巻」P402)。

 これに対して,監査役会の決議については,会社法393条1項です。

会社法393条1項
監査役会の決議は,監査役の過半数をもって行う。

 定足数の定めがありませんね。現実に出席した監査役の数に関係なく,監査役全員の過半数ということになります。そして,取締役会の決議のような括弧書がありません。加重することができるかという問いに対しては,解釈としては,会社法369条1項のような括弧書がないからできないということになります。

 加重することができないということは,江頭先生も前田先生も,明文で書いてはおられません(江頭「株式会社法第3版」P493,前田「会社法入門第12版」P517)。そのほか,会社法というタイトルの本をいくつかみましたが,その中で,次の森本先生執筆のもの以外にありませんでした。
 会社法会社法コンメンタール8のP487~P488です。次のように書かれています。

 「株主総会(309ⅠⅡ等参照)や取締役会(369Ⅰ参照)の場合と異なり,定足数の定めはない。現実に出席している監査役の数いかんに関わりなく,監査役全員の過半数をもって決議が成立するのである。この決議要件の加重は認められないと解されるのであろう(29・412Ⅰ括弧書参照)。」29とあるのに気がつきましたか?形式的根拠ですね。

 では,お前はどう書いたのだ・・・です。はい。このように書いています(「体系書 会社法 上巻」P454)。
「監査役会の決議は,監査役の過半数をもって行う(会社法393条1項)。出席監査役の過半数ではない。定足数の定めはなく,現実に出席した監査役の数に関係なく,監査役全員の過半数である。」

 このように本文中に加重することができないと,きちんと書いていません。上記の森本先生の執筆部分を読んだ上で原稿を書いていますから,比較の表を作る際に定足数及び決議要件の比較として,下の写真のようにしました。

 さて,では,実質的理由(根拠)は何か。問題文を見て,解説をどう書けばよいのかなと考えていました。結局,取締役会が業務執行の意思決定をする機関であって,濫用のおそれもあり,意思決定を慎重にするために(歯止めのために),要件を加重することには合理性があるが,監査役会は,監査機関であるから,その意思決定を困難にすることは合理性がないと・・・。会計監査人の解任決議は別として,通常の監査役会の決議の要件が厳しくて(法律の規定よりも厳しくして),その意思が決定されないようであれば,監査役会を設けた意味は半減するではないか・・・ということではないかと思います。

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午前の部 第30問 イ [平成22年度司法書士試験筆記試験]

第30問 イ
取締役会については,定款で書面決議による決議の省略を可能とすることができるが,監査役会については,定款で書面決議による決議の省略を可能とすることはできない。

 正しい記述です。これができないと,監査役会について理解していないことになり,勉強不足ということになります。

 もっとも,私は,立法論的に,取締役会における書面決議に疑問をもっていて,会議体であることからして,取締役会だって監査役会だって,書面決議を認めるべきではないと思っています。とは言っても,これは,立法論であって,会社法は,取締役会については,取締役会の決議の省略の制度(書面決議)を認め(会社法370条),監査役会については,監査役会の決議の省略の制度(書面決議)を認めていないことは明らかです。

 取締役会の決議の省略について,「体系書 会社法 上巻」P204からその説明をもってくることにします。

 「ところが,会社法は,取締役会の決議の省略の制度を創設した(会社法370条)。株主総会の決議の省略(会社法319条)に対応するものである。すなわち,定款で定めることにより,取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において,当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは,当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなすことができる。これは,企業活動の国際化に伴って外国に居住する取締役も増加している状況等から,機動的な会社経営の実現のため,現に会議を開催しない形での決議を認めるべきであるという実務上の強い要請(商事法務№1744 P103)に応えたものである。ただし,監査役設置会社にあっては,監査役が当該提案について異議を述べたときは,認められない(同条括弧書)。」

 では,なぜ,監査役会においては,決議の省略が認められないのか。それは,監査役会制度の存在理由にあります。この点についても,「体系書 会社法 上巻」からもってくることにしましょう。

 「監査役会は,すべての監査役(3人以上)で組織される会議体である(会社法390条1項,335条3項)。監査役会制度は,平成5年の特例法改正により,大会社においては,監査役の員数を3人以上としたことに伴い,新設されたものであるが,複数監査役制を採る大会社においては,各監査役が役割を分担し,それぞれが調査した結果を持ち寄って,相互の調査を相補うことにより,会社の業務についての必要にして十分な知識・情報を共通にするとともに,それに基づいて相互の意見の内容や根拠について相互に検証し合うことにより,組織的な監査を実現し,その監査の一層の適正かつ実効性を期すため,また,それまでのように監査役が個別に意見を述べるより,合議体としての監査役会が意見を述べることにした方が,経営陣に対する効果といった点からもプラスになるものと期待されるとして創設されたものである(一問一答平成5年改正商法 P133~P134参照)。
 会社法は,これを受け継いだものであるが,委員会設置会社以外の公開会社である大会社についてだけ,監査役会の設置を強制する(会社法328条1項)。それ以外の株式会社においては,任意に設置することができるが(委員会設置会社には置くことができない),取締役会設置会社以外の株式会社には認められない(会社法327条1項2号)。」

 上記の存在理由からして,監査役会において,書面決議による決議の省略を認めることは,監査役会制度を否定することになります。しかし,理論的説明としては,以上のようになるとしても,実際問題としては,実務上,監査役会における書面決議の要望はなかった,書面決議による決議の省略の必要性は認められないということだったのでしょうが,それは,なぜなのでしょうか。

それは,業務執行を担当しない監査役が,企業活動の国際化に伴って外国に居住する・・・ということはないでしょうし,何より,監査役会設置会社において,監査役の員数は3人以上とされていますが(会社法335条3項),実際の監査役の員数は,3人~5人にすぎません。日本に住所を有する数人の監査役は,容易に本社に出かけることができる態勢にある・・・。また,監査機関ですから,会議の頻度としては,少ないということもありますね。

午前の部 第30問 ウ オ [平成22年度司法書士試験筆記試験]

第30問

 取締役会と監査役会の比較の問題です。両者の比較自体は,出題の可能性の高かった問題と思いますが,しかし,そのうち,アとオは,予想外の出題でした。難しいというのではなく,こう来るのかという感じですね。

 今回は,正解の組合せであるウとオについて,考えてみます(誤っているものの組合せはどれかということで,ウとオが誤っていて,正解は5です)。いずれも,同一の観点から考えることができます。

問題文
オ 取締役会においては,その決議に参加した取締役であって議事録に異議をとどめないものは,その決議に賛成したものと推定されるが,監査役会においては,その決議に参加した監査役であって異議をとどめないものは,その決議に賛成したものとは推定されない。

誤った記述です。
大きく見れば,両者に共通することは,特定の構成メンバーから成る会議体であることですが,異なるのは,一方は,業務執行に係る機関であるのに対して,他方は,監査機関であることです。前者から異同の同が,後者から異がでてくると一応言えるのではないかと思います。

 オの前半,取締役会については,この規定があることは,ほとんどの受験生にとって,常識に属します。さて,監査役会はどうだったかです。単純に,条文があったということを記憶していれば,もちろん容易に正誤を判断できるのですが,どうかなと思った人の方が多かったことでしょう。

 取締役会議事録におけるこの推定規定(会社法369条5項)は,次のような趣旨によって規定されています。すなわち,取締役会議事録には決議の結果については記載又は記録がされることになっているものの,出席者のうちの誰が賛成しあるいは反対したかの記載又は記録をすることは要求されていません(会社法369条3項,施行規則101条参照)。そこで,株主がその権利を行使するために必要があるとき,又は債権者が責任追及をするために必要であるときに(親会社社員は,その権利を行使するために必要であるとき),取締役会議事録の閲覧等の請求をすることができるわけですが(会社法369条,裁判所の許可を要する場合と要しない場合があります),これによっては,誰が当該決議に賛成したかを立証することは容易ではないため,議事録に異議をとどめないものについて,その決議に賛成したものと推定したものです。

 とすると,これは,監査役会議事録でも,同じことであろうということになります。監査役会議事録については,会社法393条4項に,同様の規定があります。おおざっぱにいえば,取締役会も監査役会も,責任を負う立場にいる特定の構成メンバーからなる会議体であることから同じことだと言えます。

 ウも同様の問題となります。
ウ 取締役会は,取締役の全員の同意があれば,招集の手続を経ることなく開催することができるが,監査役会は,監査役の全員の同意があっても,招集の手続を経ることなく開催することができない。

 誤った記述です。監査役会においても,監査役の全員の同意があれば,招集の手続を経ることなく開催することができます。条文としては,会社法392条2項です。緊急に開催する必要性があり,正規の招集手続招集の手続をとる時間的余裕のないことも多く,また,招集手続は,会議体において,その構成メンバーの出席の機会と準備の機会を与えるためですが,構成メンバー全員の同意があるのであれば,招集手続を省略しても,さほど不都合はないからです。これは,取締役会と監査役会で異なりません。

 第30問は,続きます。

07.12夕  問題文オ 転記間違いがありましたので,その部分を削除しました。


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平成22年度司法書士試験 概観(商法) [平成22年度司法書士試験筆記試験]

概観(商法)

 今頃になって何を・・・,と言われそうな気がするのですが,司法書士試験受験用の本の書名を見ていて,書名に会社法と商法を分けて表示しているものがあることに気がつきました。これは,形式的意義によって商法の概念を考えているのですね。形式的意義の商法とは,商法典(「商法」と名付けられた法典)を意味します。つまり,商法と会社法は,法典が別であることから(商法と会社法は,平成17年の会社法の成立,及び商法の改正により,別の法典となったことはいまさら言うまでもありませんが),このように名付けたのでしょうね。

 私は,実質的意義により,会社法,商法(商法総則,商行為,海商)等を含むものとして,平成17年以後も「商法」を使ってきました。「過去問商法165 Check Test 」の商法は,この意味です。そうでなければ,この「過去問商法165」は,平成18年から平成21年までのものですから,1問だけ(平成21年度第35問)ということになってしまいますからね。これは,法務省の司法書士試験の受験案内の中の試験の内容の(1)として,憲法,民法,商法(会社法その他の商法分野に関する法令を含む)及び刑法に関する知識となっていることから,そのように考えてきました。

 そこで,これからも,午前の部の科目は,憲法,民法,商法,刑法であるということで書いていくことにしようと思っています。

 さて,前置きが長くなってしまいました。今年の司法書士試験の商法は,去年に引き続き,9問の出題でした。商法の出題は,平成15年に午前の部の試験科目として憲法が追加されて,それまでの9問の出題から1問減り,8問とされ,それが一昨年まで続いていたのですが,昨年1問増えて,再び,9問となりました。また,長い間,商法総則,商行為の分野から出題されていませんでしたが,昨年は,商法総則から出題され,今年は,商行為から出題されました。

 第35問,午前の部の最後の問題で「問屋及び商事仲立人の異同に関する次の・・・」という文字が目に入った受験生は,驚いたことでしょう。学生時代に商行為法の単位をとった受験生は,なんとか正解を出せたのではないかとも思うのですが(確信のないところですが),そもそも,問屋をとんやと読んだ受験生も少なからずいたのではないかと思うのですが,どうでしょう?

 今年の商法で商法総則か商行為法から出題されることは,予想されるところでした。もっとも,商法総則の方が可能性としては高いとみていました。商行為法から出るのであれば,昨年の出題からみて,平成14年度第35問のような商行為通則であろうとみていました。問屋と仲立人とは・・・絶句・・・というところです。

 しかし,それがこの1年以内のことではなくてもどこかで,一度でも問屋について勉強したことのある人であれば,問題文を冷静に読み,なんとかアとオが正しい記述であるとして正解に達したという人もかなりいるのではないかと思うのですが(消去法で達したかもしれませんが),どうでしょうか。とんやと読んだ人は無理だったかもしれません。

 第31問は,久しぶりに学説問題登場ということで,ここで焦った人も多いと思われます。時間があってあわてなければ,そして,考えて答えを出そうとしたのであれば,アが誤っていることは比較的容易でしょうし,イも誤っていると判断することは容易だったのではないかと思いますから,あとは,消去法で4か5,つまり,ウは正しくて,エかオが誤っているということになります。さて,どちらを選んだかですが・・・。改めて,ゆっくりと読めば,オを選んだのではないでしょうか。しかし,この問題は,正解率が高いとは思えないですね。試験会場で時間との闘いの中ではなかなか正解を出しにくいところと思えます。

 第31問は,会社法429条1項の役員等の第三者に対する責任追及の前提として,会社法908条2項が問題とされています。登記の効力のうち,不実事項の登記の効力(公信力)の規定です。実は,この不実事項の登記の効力についての規定は,商法総則にあったものでした(改正前商法14条)。商法改正及び会社法成立により,商法では,口語化されて,9条2項に,会社法は,全く同じ文言で,会社法908条に規定されることになりました。私は,その意味で,旧商法のもとでの,商法総則の問題でもあるといえるのではないか。つまり,ここでも,商法総則が出題されているような気がしました。商法作成担当者が複数であるのであれば,第31問と第35問は,同じ作成者のようなきがするのですが・・・さて。なお,この問題についての判決として,最判昭和47年6月15日があります。 

 他の問題については,易しい問題とやや難しいかなと思われる問題がありますが,合格するためには,正解できなければならない問題だと思います。振替株式の出題がありましたが(第28問),ウとエは,合格レベルの司法書士試験受験生の常識であると考えなければならないと思います(常識でなければ常識にしなければなりません)。こんなところは絶対に出ないと言っていた人もいたようですが,しかし,アとイだけで,2を正解とすることができた人も多かったかもしれません(だからと言って,知らなくてもいいのだということにはなりません)。

07.14 9段落目について書き直しました。

平成22年度司法書士試験筆記試験終了 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

平成22年度司法書士試験筆記試験終了

 平成22年度司法書士試験筆記試験が7月4日に行われ,1週間が経過しようとしています。試験終了後,受験した人達から試験終了のメールが届きましたが,多くが疲れ切ったという内容のものでした。精神的にも肉体的にも限界というメールもありました。

 すでに勉強を開始した人もいるでしょうし,しばらく休養中という人もいるでしょう。前者は,勉強を始めて間もない人(1年以内の人)はもちろんのことだろうと思いますが,そうでない人も結構います。今,これを読んでいる本職の方,自分はどうでしたか?

 ある人からは,本をみるのも嫌で,しばらく試験のことを考えない生活をしたいとのメールがあり,ある人からは,何もしないでいると落ち着かないので,勉強しますという電話がありました。

 当たり前のことを言うんじゃないよと言われそうですが,力を出せたという人もいれば,そうでない人もいるでしょう。後者が圧倒的であるのはもちろんで,自信のある人は,ほんの一握りですよね。これまで,私の教え子達で,自信があって,点が取れた,首尾は上々と連絡があり,実際に,合格して行った人は,思い出してみると,3人くらいしかいません(20数年の講師生活で)。まあ少ないけれど,そういう人もいるのはいるとも言えますが。

 ともあれ,もしも,先週の日曜日に力が出せなかったのであれば,どうしてか,その原因を探り,ノートしておくといいと思います。できるだけ早い時期に。1問1問検討し,平成23年度司法書士試験の合格のためにというサブタイトルのついた「平成22年度司法書士試験の記録」のノートをつくりませんか。正解か不正解か,自分はどれにつけたか,不正解であればどうしてこれにつけたか,知らなかったのか,かん違いしたのか(何かと間違ったか),勉強していないところだったのか,していたけどあやふやだったのか,ここまで手が回らなかった・・・等々等々。時間配分がうまく行かなかったのであれば,それも書いておきます。思いつくことをすべて。分析してみれば,自分の性格を含めて,弱点がある程度発見できるのではないでしょうか。それをもとに対策を立てましょう。

 それから,今年,5月6月頃になってあれもやっておけばよかった,これもやっておけばよかったと思いませんでしたか?時間があればするのに・・・と思いませんでしたか?それも書いておいて,できるだけ年内の早い時期にしておきましょう。

 「喉元過ぎれば熱さ忘れる」 悔しい思いをあれだけ去年したはずなのに・・・1年はあっという間に過ぎて行きます。悔しい思いを忘れてはなりません。

 私は,今,今年の本試験問題が手に入ったので,読んでいます。○×をつけて,答えを一応出すのですが,解くという感じではありません。長い間,解答速報のために解いてきましたが,今は,解くというより,読んでいるという感じです。そこで,時間があいたときに,できたらセレクトしてコメントしようかなとも思っています。今,商法(会社法,商法総則,商行為)の択一問題集を作っているところですから,商法からでも。

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