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商事売買 その1 [商法総則・商行為法]

 商事売買 その1

 商法第2章は,売買と題して,商事売買に関する5カ条を置いています。これらの規定は,民法の売買に関する規定の特則ですが,商人間の売買であって,しかも,当事者双方のために商行為である売買に関するものです。

 これらの規定は,民法の売買に関する特則なのですが,なぜにこのような規定が置かれているのか。それは,商事売買取引の迅速な処理を図るとともに売主の保護を図ることを目的としています。これは,商取引においては,その継続性,反復性,集団性から,迅速な処理が民法よりも一層強く要請されるし,商事売買では,その当事者がその世界における専門的知識を有する商人であるため,相当な期間内に一定の判断をして契約関係を速やかに終了させることができるからです。

 売主の保護?買主の保護の間違いではないのですかと言いたい人もいるかと思いますが,条文を読んでいけば,売主の保護だということが理解できます。売主の利益を強く保護するのは,売主の立場からみて特に取引の迅速な処理の要請があるということですが,それでは,不公平ではないかというと,商人間の売買ですから,商人はあるときは売主になり,あるときは買主となるということでしょうから(地位の互換性),買主になった場合に不利益な立場に立つことも許されてよいと考えられるからです。

 さて,それで,その5カ条をまず,読んでおきましょう。一度,読んで脳のどこかに入れておきましょう。来年,ひょっとしたら,役に立つかもしれません。この部分は,平成17年の商法改正で口語化されていますから,読みやすくなっています。

(売主による目的物の供託及び競売)
第524条  商人間の売買において、買主がその目的物の受領を拒み、又はこれを受領することができないとき は、売主は、その物を供託し、又は相当の期間を定めて催告をした後に競売に付することができる。この場合 において、売主がその物を供託し、又は競売に付したときは、遅滞なく、買主に対してその旨の通知を発しな ければならない。
2  損傷その他の事由による価格の低落のおそれがある物は、前項の催告をしないで競売に付することができ る。
3  前2項の規定により売買の目的物を競売に付したときは、売主は、その代価を供託しなければならない。た だし、その代価の全部又は一部を代金に充当することを妨げない。

(定期売買の履行遅滞による解除)
第525条  商人間の売買において、売買の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間  内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、当事者の一方が履行をしないで その時期を経過したときは、相手方は、直ちにその履行の請求をした場合を除き、契約の解除をしたものとみ なす。

(買主による目的物の検査及び通知)
第526条  商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査し なければならない。
2  前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があること又は その数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又 は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。売買の 目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合において、買主が6箇月以内にその瑕疵を発見したときも、同様とする。
3  前項の規定は、売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合には、適用しない。

(買主による目的物の保管及び供託)
第527条  前条第一項に規定する場合においては、買主は、契約の解除をしたときであっても、売主の費用を  もって売買の目的物を保管し、又は供託しなければならない。ただし、その物について滅失又は損傷のおそれ があるときは、裁判所の許可を得てその物を競売に付し、かつ、その代価を保管し、又は供託しなければなら ない。
2  前項ただし書の許可に係る事件は、同項の売買の目的物の所在地を管轄する地方裁判所が管轄する。
3  第1項の規定により買主が売買の目的物を競売に付したときは、遅滞なく、売主に対してその旨の通知を  発しなければならない。
4  前3項の規定は、売主及び買主の営業所(営業所がない場合にあっては、その住所)が同一の市町村の  区域内にある場合には、適用しない。

第528条  前条の規定は、売主から買主に引き渡した物品が注文した物品と異なる場合における当該売主か ら買主に引き渡した物品及び売主から買主に引き渡した物品の数量が注文した数量を超過した場合における 当該超過した部分の数量の物品について準用する。


 さて,次回は,このうち,会社法525条 定期売買の履行遅滞による解除について書こうと思います。民法との比較になります。民法542条です。