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株券不所持制度 [Twitterから]

 株券発行会社において,定款で株主が株券不所持の申出をすることができないと定めることができるか。

 今日のCheck Test 会社法№241
 「株券発行会社の株主は,定款の定めがあれば,当該株券発行会社に対し,当該株主の有する株式に係る株券の所持を希望しない旨を申し出ることができる。○か×か。」

 ○とした人も,かなりいたのではないかと思うのですが,どうでしょうか?「定款の定めがあれば」という部分が誤っています。定款の定めは必要ではありません。

 では,定款で株券不所持制度を排除することができるでしょうか。

 旧商法では,このようになっていました。
 旧商法226条ノ2第1項前段
 「株主ハ定款ニ別段ノ定アル場合ヲ除ク外株券ノ所持ヲ欲セザル旨ヲ会社ニ申出ヅルコトヲ得」

 株券不所持制度は,会社の事務処理負担を課すものだから定款で排除することを認めたものであると説明されていました。

 しかし,会社法217条1項は,「株券発行会社の株主は,当該株券発行会社に対し,当該株主の有する株式に係る株券の所持を希望しない旨を申し出ることができる。」としています。

 旧商法の規定と異なり,定款による排除の文言がありません。これは,会社法は,定款による排除は認めないということと解釈されます。手許にある立案担当者の書を全部見たものの,これについての説明はみつからなりませんでした。定款により株券発行会社とした以上は(株券不発行が原則なのにあえて株券発行会社としたのだから),事務処理負担は当然覚悟すべきものであって,これを理由に不所持制度を排除することを認める必要はないと考えたのかなと,私は,思っています。

公開会社における有利発行の場合の取締役会への委任 [Twitterから]

 公開会社において,株主に募集株式の割当てを受ける権利を与えないで有利発行をする場合に,株主総会の特別決議で,募集株式の数の上限及び払込金額の下限を定めて具体的な募集事項の決定を取締役会に委任することができるが,この委任の決議は,払込期日又は払込期間の末日が当該決議の日から1年以内の日である募集についてのみその効力を有する。○か×か。

 今日のCheck Test会社法№217です。正解は,○です。

 正解を○にしようか,×にしようかと迷いましたが,今回は,条文にそって正しい記述としました。

 誤った記述にしようと考えて,作成したものは,次の問題です。

 公開会社において,株主に募集株式の割当てを受ける権利を与えないで有利発行をする場合に,株主総会の特別決議で,募集株式の数の上限及び払込金額の下限を定めて具体的な募集事項の決定を取締役会に委任することができるが,この株主総会の決議は,決議後最初に発行する募集株式の募集であって,払込期日又は払込期間の末日が当該決議の日から6カ月以内の日である募集についてのみその効力を有する。○か×か。

 ×です。前半をはずして,6カ月か1年かを問うという問題もありですが,前半を生かして後半を1年とするという問題もありですが,後者は,少し難しくなるのかもしれません。


 かつての商法は,このような規制をしていました。そして,平成13年11月に改正が行われました。これを会社法が受け継いでいます。

旧商法280条ノ2第4項(平成13年改正前)
第2項ノ決議ハ決議後最初ニ発行スル新株ニシテ其ノ日ヨリ6月内ニ払込ヲ為スベキモノニ付テノミ其ノ効力ヲ有ス

 改正後
 第2項ノ決議ハ決議ノ日ヨリ1年内ニ払込ヲ為スベキ新株ニ付イテノミ其ノ効力ヲ有ス

 この改正は,資金調達手段の改善のひとつとして行われたもので,この改正により,株主総会の授権決議があれば,それまでよりも2倍の期間,しかも,何度でも有利発行をすることができるようになりました。改正前の規制は,かなり厳しいものだったのですが,これにより,経営陣は,新株発行による資金調達を機動的に,容易に行うことができるようになりました。株主の保護という側面では後退だと思うのですが(1年以内という限定があるからいいだろうということでしょうが),株主のコントロールが緩くなったわけですから,それで,問題はなかったのかが気になるところですが,会社法が受け継いだということは,問題はなかったということなのでしょうか。

 現在の会社法200条3項
 第1項の期間は,前条第1項4号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては,その期間の末日)が当該決議の日から1年以内の日である同項の募集についてのみその効力を有する。

 なお,非公開会社における取締役又は取締役会に対する募集事項の決定の委任についても同様となっています(会社法200条1項,3項参照)。