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再録 発起設立と募集設立 最終回 [会社法いろいろ]

 発起設立と募集設立をテーマにしてまだまだあるのですが,そろそろこれで最後にしようということで,その最終回として,2つほど。募集設立を存続させたために浮上した問題ではないかと私が考えるものです。

 最初は,発起設立によるか募集設立によるか,発起人は,これをいつまでに決めなければならないのかという問題です。原始定款の認証を受ける時まででしょうか,あるいは,その後の設立手続に入る時まででしょうか(例えば,会社法32条所定の設立時発行株式に関する事項の決定の時),これと連動するのですが,発起設立の手続で株式会社を設立することにして,設立手続を開始したが,その後,募集設立に変更することができるか。

 会社法の条文を見渡しても,いつまでにということは書いてありません。もちろん,設立時発行株式を引き受ける者の募集をして,引き受けた者が出資の履行をして・・・となるともはや発起設立というのはないのでしょうけどね。
 そこで,発起設立にするか募集設立にするか定款で定めて設立手続を開始することも,もちろん可能だけれど,その必要はない。通常は,設立時株式の決定事項を定める時に決定することになるのだろうと思います(実際は,株式会社を設立しようと思った時から,決まっていることだと思いますが,ここでは,決定のリミットの問題です)。発起人の出資の完了後でもいいと解されています(論点解説 新・会社法P26参照)。出資の完了後でもいいとなると,資金が足りないなということになったときに,募集して資金調達することが可能となります。つまり,発起設立で出発して,問題なく,募集設立とすることができるということです。旧商法時においては,このようにフレキシブルではなかったように思います。

 問題は,その次ですが,定款で取締役等を定めることができるかどうかです。旧商法時においては,実務では,発起設立においては許されるが,募集設立においては許されないと解されていました(商事法務No.1298 P38,実務相談1 P176参照)。通説もそうだったのではないでしょうか。募集設立は,発起人以外に株式引受人がいるから発起人だけで選任することはできず,創立総会で選任するのだというのがその理由です。

 では,会社法のもとではどうか。まず,発起設立においては,定款で設立時役員等をさだめることができることは,条文上の根拠があると言えます。会社法38条3項ですね。「定款で設立時取締役,設立時会計参与,設立時監査役又は設立時会計監査人として定められた者は,出資の履行が完了した時に,それぞれ設立時取締役,設立時監査役又は設立時会計監査人に選任されたものとみなす。」定款で設立時役員等を定めることができることが前提となっています。では,募集設立ではどうか。規定がありません。

 私は,募集設立を存続させた以上,その違いも存続するだろうと考えたということもありますが,発起設立にある規定が募集設立においてはないということから,これまでどおり,募集設立においては,定款で設立時役員等を定めることはできないだろうと考えました。ところが,立法担当官は,募集設立の場合にも許されるという見解を表明しました(登記情報540号 P16~P17)。その理由は,募集株式の引受けにより株主となる者に定款の内容を知る機会が与えられる上に,創立総会の決議によって定款の内容を変更することもできるというものです(同P16)。この見解が民事局の見解であると考えられます。

 旧商法時代の実務では,定款で取締役等を定めると,それは,発起設立であるということだったのですが,会社法のもとで上記の見解によれば,いくら設立時役員等が定款で定められていようとも,いずれであるかは,その後の手続によって判明するということになります。