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最判平成20年2月22日 会社は,商人か。 [判例]

 会社は,商人か。

 会社法は,会社が商人であるかどうかについて規定を置いていません。
 最判平成20年2月22日(民集第62巻2号576頁)は,会社は,商人であると判示しました。

 昨日は,2月26日の最高裁判決でしたが,今日は,その数日前,2月22日の最高裁判決です。新商法及び会社法のもとで,会社が商人であるかどうかについて判示しています。

 この事案は,特例有限会社である甲会社を債権者とし,乙を債務者とする債権を担保するため,乙所有の不動産に抵当権が設定されていたのですが,乙が,原審第1回口頭弁論期日において,当該被担保債権につき商法552条による5年の消滅時効が完成しているとしてこれを援用したというものです。そこで,商法522条の適用が問題となるのです。

 ここで,先に問題となる条文を掲げておくことにします。

 商法522条
 商行為によって生じた債権は,この法律に別段の定めがある場合を除き,5年間行使しないときは,時効によって消滅する。ただし,他の法令に5年間より短い時効期間の定めがあるときは,その定めるところによる。

 商法4条1項
この法律において「商人」とは,自己の名をもって商行為をすることを業とする者をいう。

 会社法5条
 会社(外国会社を含む。次条第1項,第8条及び第9条において同じ。)がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は,商行為とする。

上記の消滅時効にかかったとされた債権が,「商行為によって生じた債権」であるかどうかが問題となるのですが,原審は,当該債権が商行為によって生じた債権に当たるということはできないとして,時効消滅していない旨を判示しました。

「被上告人の代表取締役であるAは,小中学校の同窓であり,C商工会の理事長(A)と理事(上告人)として親交のあった上告人からの依頼を受け,博多駅前の土地を整理して転売するために1億円を必要としていたBの資金に充てるため,「男らしくバンと貸してやるという気持ち」で,自己が代表取締役を務める有限会社である被上告人において上告人の依頼に応じることとし,上告人が竹馬の友であることを強調して,被上告人の経理担当者をして,被上告人がその取引銀行から融資を受けるための手続をさせ,融資を受けた1億円を被上告人が上告人又はBに貸し付けた(以下,この貸付けを「本件貸付け」という。)ものであるから,本件貸付けは被上告人の営業とは無関係にAの上告人に対する情宜に基づいてされたものとみる余地がある。そうすると,本件貸付けに係る債権が商行為によって生じた債権に当たるということはできず,上記債権には商法522条が適用されないから,上告人の消滅時効の主張はその前提を欠く。」

 これに対して,最高裁判所は,次のように,原審の判断を否定しました。
「しかしながら,原審の本件貸付けに係る債権が商行為によって生じた債権に当たるということはできないとする判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 会社の行為は商行為と推定され,これを争う者において当該行為が当該会社の事業のためにするものでないこと,すなわち当該会社の事業と無関係であることの主張立証責任を負うと解するのが相当である。なぜなら,会社がその事業としてする行為及びその事業のためにする行為は,商行為とされているので(会社法5条), 会社は,自己の名をもって商行為をすることを業とする者として,商法上の商人に該当し(商法4条1項),その行為は,その事業のためにするものと推定されるからである(商法503条2項。同項にいう「営業」は,会社については「事業」と同義と解される。)。
 前記事実関係によれば,本件貸付けは会社である被上告人がしたものであるから,本件貸付けは被上告人の商行為と推定されるところ,原審の説示するとおり,本件貸付けがAの上告人に対する情宜に基づいてされたものとみる余地があるとしても,それだけでは,1億円の本件貸付けが被上告人の事業と無関係であることの
立証がされたということはできず,他にこれをうかがわせるような事情が存しないことは明らかである。
 そうすると,本件貸付けに係る債権は,商行為によって生じた債権に当たり,同債権には商法522条の適用があるというべきである。これと異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」


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