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株式の併合 [Twitterから]

 司法書士試験 受験生のためのCheck Test 会社法№184 株式の併合は,会社法にそれを許容する旨の規定がある場合に限ってすることができる。○か×か。

 答えは,×ですね。どうして,このようなことが問題になるのか(するのか),会社法は,別に限定していないではないか,当然に×ではないかと思われる受験生も多いのではないかと思います。実は,かつては(平成13年6月商法改正前においては),正しい記述だったのです(もちろん,会社法を商法に書き換えてのことですが)。この部分は,かつて制度の改正が行われた重要な部分でした。受験勉強が長い人の中でも,そろそろ忘れ始めたという人も多いのではないでしょうか。

改正があったところについて,詳しくは知らなくても,少しでもいいから知っておくと,あるいは覚えておくと,現在の制度の理解に役立つのではないか,受験勉強に役立つのではないかと,私は,思っています。本職について,多少の時間のゆとりがあるようになったら,各種の改正がどういう効果を果たしたのだろうか,社会・経済にどのような影響を与えただろうか,当該改正が妥当な改正であったのかどうかという点も含めて考えてみるといいのではないかと思っています。

前置きが長くなりました。この株式の併合に関する改正は,会社法(平成17年)によるものではなく,平成13年6月の商法改正によるものです。緊急経済対策の一つとしての緊急改正であり,議員立法による商法改正でした。金庫株の解禁という活字が新聞等に大きく載った改正でした。

 法律案提出理由は,次のとおりです。
 「最近における経済情勢にかんがみ,経済の自由度を高め,経済構造改革を進める観点からいわゆる金庫株の解禁に関し商法等の規定の整備を行うとともに,個人投資家の株式投資への参入を容易にするため,株式に係る純資産額規制を撤廃する等の必要がある。これが,この法律案を提出する理由である。」

 このときの商法改正は,大きく,自己株式の取得及び保有に関する規制の見直し(金庫株の解禁),株式の大きさ(単位)に関する規制の見直し,法定準備金制度の規制の緩和,その他の改正に分けられます。株式の併合に関する改正は,このうち,株式の大きさに関する規制の見直しに係ります。

 平成13年6月の商法改正前においては,商法は,株式の併合が認められる場合を次の3個の場合に限定していました。①1株当たりの純資産額を5万円以上とする場合,②合併や会社分割の準備行為として株式の割当て比率の調整をする場合,③資本減少の一方法としてする場合,です。どうして,限定していたかが問題ですね。それは,併合に適しない端数が出るときの株主の不利益及び株式の一部を譲渡することができなくなってしまう株主の不利益を考慮したものだといわれていました。上記の3個の場合には,株式の併合の必要性あるいは実益が大きいため特に許容したというものです。

 平成13年6月の改正商法は,株式の大きさ(出資単位)に関する会社の自治の尊重の観点から,株式の併合を自由化したといわれていますが,株主総会の特別決議及び株式の併合を必要とする理由の株主総会のおける開示を要件としました。これが,会社法に受け継がれました。

時間不足その2 [受験勉強]

 前回のテーマは,解答の時間不足を考えるというものでした。今回は,同じ時間不足ですが,学習の過程での時間不足がテーマです。

 学習の過程での時間不足についての相談の中には,仕事を持っていて勉強する時間がとれないというものもあります。これは,基本的には自分で何とかする問題だろうと考えていますので,回答としては,相談者がどれだけ真剣に勉強しようとしているかによって異なります。だから,人によりいろいろな回答をしてきました。

 今日のテーマは,学習の過程での時間不足のうち,参考書を読み,過去問集・問題集等に取り組むのに時間がかかって仕方がない,いつまで経っても終わらないというものです。いろいろな理由があるようですが(前提の知識が多少あるとか全くないというような問題がありますが,ここでは措きます),集中力の問題だと思えるものが多いのではないかと思います。そして,それは,スケジュールがきちんと立てられていないことからくるものが圧倒的ではないでしょうか。スケジュールをきちんと立てて(年内,1か月,1週間,1日),なんとしても,そのスケジュールに従って終了するように心がけること,その努力をすることが何よりだと私は考えています。その中でスピードがついてくるし,集中力も養えます。だらだらとやっていてはいけないということですが,スケジュールをきちんと立てると,だらだらしている暇などないことにすぐ気が付きます。今週は,・・・を仕上げる,今日は,○○頁までやると決めたら,なんとしても頑張りぬく!!

 なお,ゆるゆるのスケジュールは,合格のためのスケジュールではなく,スケジュールを立てる意味などありませんが,がちがちのスケジュールも考えものです。今の自分にとって,少々(少々です)きつめにというのがいいのかなと思います。そして,少々きつめで,1週間のうち半日とか1日とか(それぞれの持ち時間によって異なりますが),調整の時間を置くことが大事だろうと思います。スケジュールがうまく行かなかったときは,その時間を使い,うまく行ったときは,ゆっくりするといいのではないでしょうか(映画に行ったり,友達に会ったり,おもいっきり眠ったり,他の遊びをしたり,家族サービスをしたり等々)。

もっとも,受験勉強を始めて間もない人にとってみれば,ともかく時間がかかるということはありますね。それは,ある程度やむを得ないことだと思います。特に,最初から,細部にこだわって,わからないことを置き去りにして前に進むことができない人にとってみれば,絶望的な気持ちになることでしょう。しかし,一度読んですぐにすべてわかるのであれば,誰も苦労はしませんよね。何度も読むということが前提です。1度目は,わからない部分を薄く鉛筆で囲むとか,?を付けて次に進んでいく,2度目にわかるようになるさと思って。2度目に読んでわかれば,囲みや?を消していく,2度目でもわからなければ,3度目でわかるさと思いながら,読み進みます。最後まで読み終わり,全体を見渡して初めて,前に出てきた細かい部分を理解できるようになることも多いはずです。そのとき,囲みや?を消すことができます。

 そして,1度目に時間がかかっても,2度目,3度目と,どんどん時間は短くなります。1度では,勉強したことにはならないと私は考えています。最低,3度は読まなければ,読んだことにはならないと。

 もうひとつ,よくある相談に,すぐ忘れてしまう,どうすればいいかというものがあります。私も,すぐ忘れてしまう人達の仲間ですが・・・。

解答の時間不足を考える [受験勉強]

 司法書士試験は,時間との闘いの一面を有します。

 数日前,「本試験での時間不足が自分にとっての来年への課題だけれど,どうすればいいか」という相談を受けました。

 これまで,受験相談で圧倒的に多かったのが,このことでした。時間不足をどのように克服すればよいか,問題を解くのに時間がかかるということです。

 私は,本試験における時間不足の解消について,次のように考え,答えてきました。

 まず,前提ですが,司法書士試験で合格のために要求されるものが10だとすると,そのうち8まで学習し理解すればよい。10全部を学習し理解することは,ほとんど不可能であり,する必要もないのではないか。では,あとの2に含まれるものが出題されたときに,どうすればよいのか・・・・。それは,法律的勘で解答を出すこと,もちろん単なる勘ではなく法律的勘であって,いわゆる法律的ものの考え方により答えを導くこと。この法律的ものの考え方を8を勉強する中で身につけていきます。

 さて,8のうち6については,合格レベルの受験生が完全に(言葉どおり完全に)マスターしておくべき事柄に属する部分です。この部分は,言ってみれば,合格レベルの司法書士試験の受験生の常識部分であり,この部分の確保・強化が何よりも本試験における時間不足の解消になるはずです。

つまり,例えば,午前の部多肢択一試験2時間で35問,2時間を35問で割ると1問あたりの時間が出るわけですが,それは,約3分26秒。全問同じように3分26秒かけるわけにはいかないことはいうまでもありません。1分で解ける,もしくは解かなければならない問題,3分かかる問題,場合によっては,5,6分かかる問題もあります(30秒で解ける問題,確信をもってこれが正解だとして答えを出せるものも,人によって問題によってはあります)。短い時間で解ける問題をどれだけ多くすることができるか,これが本試験における時間不足解消のためのポイントではないでしょうか。午後の部においては,記述式がありますから,多肢択一については,1時間20分~30分かけることを基準にすると,1問に充てる時間がもっと少なくなりますから,短い時間で解ける問題をもっと多くしなければなりません。

 ゆっくり考えなければならない問題のための時間をつくるために,できるだけ,時間を節約できる問題を多くしなければならないのですが,それは,8のうち6に当たる部分,合格レベルの司法書士試験の受験生の常識部分,です。この部分を繰り返し繰り返し,完璧と言えるまで,確実に学習します。それに,8の残りのあと2の部分を積み上げます(答練,参考書,問題集等で)。

 時間を節約できる部分として不可欠なものとして,過去問があります(過去問の位置づけは,このような所だけにあるわけではありませんが)。過去問は,完璧に理解しておきます。もちろん,これがすべてでないことは,いうまでもありません。合格レベルの司法書士試験の受験生の常識部分というのは,過去問だけではありません(過去問がすべてであれば,基準点は限りなく満点に近くなってしまいます)。もちろん,過去問がその(司法書士試験の合格レベルの受験生の常識部分の)レベルを示しています。

結局,自分が時間不足となるのはどうしてか,他の人が時間があって合格点をとれるのはどうしてかを考えてみれば,以上がその答えになるのではないかと,私は,思います。

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定款に株式譲渡制限規定がある場合における譲渡承認機関 [Twitterから]

 株主にとって,株式の譲渡は,投下資本を回収するための重要な手段です。したがって,株式の譲渡は,原則として,自由でなければなりません。しかし,株式会社にとって好ましくない者が株主となって株式会社の運営を阻害することを防止し,株式会社の運営を安定させる必要性が高い株式会社も少なくありません。また,一定の種類の株式については,その内容の特殊性から株式会社の意向に関係なく譲渡されることを阻止したいということもあります。
 そこで,会社法は,株主の投下資本の回収を保障しながら,定款で,発行する全部の株式について(会社法107条1項1号),あるいは特定の種類の株式について(会社法108条1項4号),譲渡による株式の取得について株式会社の承認を要する旨を定めることを認めています。

 その制限の態様として,どのようなものが許されるかが問題です。譲渡制限は,譲渡による株式の取得について株式会社の承認を要するという形でのみ認められます(会社法107条1項1号,108条1項4号)。したがって,株式の譲渡を禁止するということはできません。譲渡禁止は,およそ,譲渡することができないとするものであって,株主の投下資本回収の途を閉ざし,株式会社の承認によって譲渡が認められる途までも否定するものだからです。また,株式の譲渡による取得についての制限ですから,譲渡による取得以外の株式の移転や質入れについて株式会社の承認を要する旨を定めることもできません。

 株式会社の承認となっていますが,では,その承認機関についてはどうなっているでしょうか。会社法139条1項です。まず,本文です。取締役会設置会社でない株式会社にあっては,株主総会の決議,取締役会設置会社にあっては,取締役会の決議によらなければならないとあります。これが原則です。しかし,これにはただし書があって,「ただし,定款に別段の定めがある場合には,この限りではない。」そこで,取締役会設置会社において,定款で定めれば,株主総会を承認機関としたり,代表取締役を承認機関とすることができます(取締役会設置会社出ない株式会社においては,取締役や代表取締役を承認機関とすることもできます)。

 以上は,会社法により,旧商法時代の登記実務の見解を明文の規定により否定したものです。このことを頭のどこかで覚えておいてもいいのではないかと思います。旧商法時代においては(旧商法時代の株式会社は取締役会設置会社),その条文は,「株式ハ之ヲ他人ニ譲渡スコトヲ得但シ定款ヲ以テ取締役会ノ承認ヲ要スル旨ヲ定ムルコトヲ妨ゲズ」(旧商法204条)となっていました。

 争いのあったところではあるのですが,登記実務は,定款で取締役会以外の機関の承認を要する旨を定めることができないとの見解でした。取締役会設置会社である株式会社は,株主総会を承認機関とすることはできないとし,代表取締役を承認機関とすることはできないと解していました。これは,前者は,株主総会の承認を要するとすれば,これを招集するために時間を必要とし,法が定める制限を加重することになって株式譲渡自由の原則に対する重大な侵害になること,後者は,株式譲渡制限が株主に関する事項として重大であるから,上記の規定は,取締役会という会議体において慎重に判断させようとしたものだというところにありました。

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株主名簿閉鎖制度はいつなくなった? [Twitterから]

 Check Test №137関連

 本来,株主総会や種類株主総会において議決権を行使したり剰余金の配当を受ける等の権利を有する者は,その時点における株主名簿上の株主ということになります。ところが,株主が多数いて変動する株式会社においては,誰がその時点における株主名簿上の株主であるか(質権者も同様です)を把握することが容易ではありません。しかし,株主(質権者)の権利を行使する者を確定させる必要があります。そこで,そのための制度として,昭和25年の商法改正により,株主名簿閉鎖制度と基準日の制度が商法に規定されました。

 前者は,株主又は質権者を固定して,株主又は質権者の権利を行使する者を確定するため,一定期間株主名簿の書換えをしないというものです。これによって,株主名簿閉鎖時における株主名簿上の株主が株式会社に対する権利を行使することができる株主であるということになります。基準日の制度は,一定の日(基準日)を定めて,その日において株主名簿に記載又は記録されている株主を株主の権利を行使すべき者とする制度です(会社法124条1項)。

会社法をみると,基準日の制度に関する規定はありますが,株主名簿閉鎖に関する規定はありません。いつなくなったのでしょうか。会社法の成立と同時だと思っている人が多いのでなないかと思うのですが,そうではありません。平成16年の商法改正によります。電子公告・株券不発行制度の導入に関する商法改正のときです。

 立法担当官は,その理由について,「株券廃止会社において閉鎖期間を設けることを認めると,その期間内は株式の譲受人や担保取得者は第三者対抗要件を取得することができないことになる結果,株式譲渡の自由が制限されることになる一方,株券廃止会社か否かを問わず,現在の株式実務においては,基準日の制度さえあれば,閉鎖期間制度はなくとも足りることによるものである。」と書かれています(商事法務No.1705 P35)。

 つまり,平成16年の商法改正によって基準日制度に一本化され,会社法は,これを受け継ぎました。



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