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目的物の検査義務と通知義務 その2 [商法総則・商行為法]

 目的物の検査義務と通知義務

 民法の規定によれば,売主が買主に引き渡した物に瑕疵があったり,その数量が不足する場合には,買主は,売主の担保責任を追及するには,その事実を知った時から1年以内にしなければならないとされています(民法566条3項)。また,買主が売主に対して不完全履行による債務不履行責任を追及するには,10年の時効期間の猶予があることになっています(民法167条1項)。

 しかし,以上は,迅速性を要求する商取引には適当ではありません。売主と買主との法律関係は,早期に確定させる必要があります。そこで,商法は,商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならないとし(商法526条1項),買主は、この検査により売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければならず、これを怠ると,その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができないとされています(同条2項前段)。ただし, 売主がその瑕疵又は数量の不足につき悪意であった場合を除きます(同条3項,これは,当然ですよね)。
 
 上記の通知は,直ちに発することを原則としますが,売買の目的物に直ちに発見することのできない瑕疵がある場合には(隠れた瑕疵),猶予期間があり,買主が6カ月以内にその瑕疵を発見したときに,直ちに通知すればよいとされています(同条2項後段)。

 この商法526条2項後段は,そもそも解りにくい条文ですが,目的物に隠れた瑕疵があって,買主が6カ月以内に瑕疵を発見することができなかったときはどうなるのかが問題です。通説及び判例は,買主は,売主に対して責任追及をすることができなくなると解する立場にあります(最判S47.1.25参照)。

 しかし,商法526条2項後段は,「・・・発見したときも,同様とする。」ですから,前段と同様,つまり・・・買主は・・・請求することができない。とすれば,「発見しなかったときは,前段と同様ではない」・・・つまり,請求することができるとなるようにも読めます。しかし,そのように解すると,この場合に,商法526条の趣旨に反してしまいます。

 また,同じ箇所(商法526条2項後段)を読んで,気づくもうひとつのことは,「瑕疵」とあるけれど,数量不足がないということです。同条2項前段は,瑕疵と数量不足であるのに,数量不足がない。どうしてか。どう解釈したらよいのか。

 通説は,数量不足についても,適用があることと解しています。規定がないことについては,「受取時に発見できない数量不足などありえないと,立法当初は考えられたのかもしれない。」(有斐閣アルマ 商法総則・商行為法第2版P222)とあります。そして,同書は,続けて,「今日のような取引状況にあっては,もはや現実的な想定とはいえないであろう。」としています。

 上記2点については,平成17年の商法改正というチャンスがあったのですから,そのときに,改正を加えて解決すればよかったのにと思います。立法担当者は,それどころではなかったのかもしれませんが・・・。

つづく。