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再録 発起設立と募集設立 その3 [会社法いろいろ]

 採録 2010.06.04から

 発起設立と暮秋設立 その3 募集設立の方法の存続の理由


 会社法制の現代化に関する要綱試案では,株式会社の設立手続を発起設立に一本化するという方針を立てたのに,会社法は,募集設立の方法を存続させることとしました。

 ということは,要綱試案の(注)にあった「実務上のニーズを踏まえ,なお検討する。」からきたものということになりますね。もっとも,「実務上のニーズを踏まえ,なお検討する。」は,「募集設立を廃止することに伴い,発起設立に関して見直すべき点があるかどうかについて,」につづくものです。「発起設立について見直すべき点があるかどうかについて」ですから,発起設立に一本化するというのは,前提のように読めます。

 ともあれ,募集設立を存続させたのは,「現在の実務において募集設立が用いられる可能性が皆無ではなく,設立当初から発起人としての責任を負わない形で出資者になることについてニーズが否定できないということもあり,結局,募集設立の方法も維持することとされ,・・・」という説明がされることになりました(立案担当者による新・会社法の解説P14~P15)。

 この「ニーズを否定できない」ということが,要綱試案補足説明のいう「試案では,募集設立に対する利用のニーズが減少していること,会社法制の現代化に当たり規定の簡素化・明瞭化を図るべきであること等の点を踏まえ,募集設立という方法を廃止し,発起設立という方法に一本化することとしている。」(旬刊商事法務No.1678 P47)からして,「規定の簡素化・明瞭化を図る」よりも,価値的に上であると位置づけられたことになります。果たして,会社法のもとで,どれだけ募集設立によって株式会社が設立されているか,それは,どのような株式会社か,資料がほしいところです。

 なお,要綱試案補足説明中に,「なお,募集設立を利用するニーズの主なものとして,設立手続における発起人と株式引受人との責任・義務・地位等の違いから,設立時点での株式会社に対する資金提供者とはなるものの,発起人としての責任を負わないことを望む者が存在するという指摘があるが,部会においては,このようなニーズに対しては,設立と同時に株式の譲渡を行うことにより対応が可能ではないかという意見が出された。」との記述があります。

 また,立案担当者による新・会社法の解説P14では,「なお,法制審議会会社法(現代化関係)部会における会社法制の現代化の検討過程においては,・・・・中略・・・発起設立の方法に一本化することも検討された。特に,会社法においては,株式会社の最低資本金制度が廃止されることから,少額の出資による発起設立をした直後に株式を引き受ける者を募集することにより,募集設立と実質的には同等の結果が得られることにかんがみると,募集設立を維持することに特段の意味はないとも考えられたためである。」という記述があります。

 このようにして,募集設立が存続となったことから,依然として,発起設立と募集設立との比較が重要な問題となっています。どこが,違うかですが,もちろん,理論的には,核は,設立時発起人以外の設立時募集株式の引受人の存在,その保護となります。

 その中のひとつ,払込取扱銀行等の保管証明責任に,次回,戻ることにします。