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Check Test 会社法302 [条文を追っかける]

司法書士試験受験生のためのCheck Test 会社法302について,なぜ×なのでしょうとの質問がありました。

司法書士試験受験生のためのCheck Test 会社法302.
「株式交換をする場合には,すべて,株式交換完全子会社の反対株主は,株式交換完全子会社に対し,自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。○か×か。」

解答・解説
×です。「すべて」という点が誤っています。

株式交換完全子会社の株主は,株式交換によって株式交換完全親会社に株式をとられてしまうのですから,株式交換に反対の株主は(問題文を「反対株主」ではなく「株式交換に反対の株主」にした方がよかったかなと今思っています。反対の株主の意味で使いました),すべて株式買取請求権を与えてしかるべきであるような気がしますよね。

しかし,会社法785条1項は,このようになっています。
「 吸収合併等をする場合(次に掲げる場合を除く。)には,反対株主は,消滅株式会社等に対し,自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
 一 第783条第2項に規定する場合
 ニ 前条第3項に規定する場合

 二(2号)は,吸収分割の場合だけですから,ここで問題になる適用除外は,一(1号)だけです。そこで,条文を追っかけます。

会社法783条 消滅株式会社等は,効力発生日の前日までに,株主総会の決議によって,吸収合併契約等の承認を受けなければならない。
2 前項の規定にかかわらず,吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社が種類株式発行会社出ない場合において,吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等(以下この条において「合併対価等」という。)の全部又は一部が持分等(持分会社の持分その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)であるときは,吸収合併契約又は株式交換契約について吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社の総株主の同意を得なければならない。
3 以下省略

ということは,(単一株式発行会社である)消滅株式会社,株式交換完全子会社の株主に,合併対価・株式交換対価として持分等を交付する場合には,株式買取請求権は,認められませんということになります。どうしてか?この場合には,上記(会社法783条2項)のように,吸収合併契約・株式交換契約について株主全員の同意を要するとしているからです。つまり,1人でも反対すれば,吸収合併,株式交換をすることはできないからです。
株式買取請求権は,どのような権利として説明されるか。「体系書 会社法 上巻」P136から引用します。

「株主の利益にとって特に重大な関係のある特定の決議が,株主総会及び種類株主総会で成立した場合,これに反対の株主は,株式会社に対し,自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる(会社法116条)。この権利を反対株主の株式買取請求権という。これは,投下資本の確実な回収を保障して多数決の原則による少数株主の経済的不利益を救済しようとするもので,多数決の原則の修正である。
なお,事業の譲渡等の場合の株式買取請求権は,会社法469条・470条に,合併等における株式買取請求権は,会社法785条・786条及び797条・798条,806条・807条に規定が置かれている。」

多数決の原則の修正です。つまり,少数の反対があっても,強行することができるが,少数者を株式買取請求権という形で保護しますということです。総株主の同意となれば,少数というのはないわけですから,株式買取請求権を認める必要性はないということになります。

適用除外規定(文言)があちこちにありますね。慣れればいいのでしょうが,なかなか・・・ですね。しかし,これに慣れれば,会社法に強くなれることは間違いないような気がします。

Check Test 会社法300の解説 [会社法いろいろ]

昨日の司法書士試験受験生のためのCheck Test 会社法の解説です。

司法書士試験受験生のためのCheck Test 会社法300.株式交換完全子会社の株主及び債権者は,株式交換完全子会社に対して,その営業時間内は,いつでも,株式交換契約に関する書面等の閲覧等の請求をすることができる。○か×か。

解答 ×です。
条文を見ればすぐわかるのですが(条文見たうえで,新株予約権者を○でぐるぐるぐるです),株式交換契約に関する書面等の閲覧等の請求をすることができるのは,「株主及び新株予約権者」となっています。どう書いてあるかというと,「消滅株式会社等の株主及び債権者(株式交換完全子会社にあっては,株主及び新株予約権者)」となっています(会社法782条3項本文)。合併の場合の消滅会社,会社分割の場合の分割会社と異なるのですね。
どうしてかですね。会社法では,理由も一緒に覚えないと覚えきれない事柄がたくさんです。ここはどうでしょうか。そのまま覚えられる人はそれでいいのでしょうが・・・。

株式交換完全子会社の新株予約権者以外の債権者には株式交換契約に関する書面等の閲覧等をさせる必要なんかないということですね。それは,株式交換完全子会社の新株予約権者以外の債権者は,株式交換によって,害されることはないからです。株式交換完全子会社では,株主の変更が生ずるにすぎない。
新株予約権者は,自分の有する新株予約権がどう取り扱われるかについて利害関係を有します。

では,株式交換完全子会社の債権者保護手続はどうなっているかですが,会社法789条1項3号です。株式交換完全子会社の株式交換契約新株予約権が新株予約権付社債に付された新株予約権である場合には,新株予約権付社債についての社債権者は,株式交換完全子会社に対して,株式交換について異議を述べることができるとして債権者保護手続の対象となることとされています。これは,株式交換完全子会社の新株予約権付社債の社債権者にとっては,債務者の変更となるからです。

会社法781条2項 [条文を追っかける]

今,「体系書 会社法 下巻」の最終校正に入っています。さきほど,組織変更のところで,条文チェックの際,いらいらせずに落ち着いて条文を確認しなければならない箇所(適用除外文言,適用限定文言なので・・・)がありましたので(各所にあるのですが・・・),私の気分転換及び受験生の皆さんに役に立つのかどうか,若干の疑問はありますが,今日は,この箇所の条文を追っかけることにしましょう。会社法781条2項です。持分会社が組織変更する場合です。もちろん,持分会社が株式会社に組織変更をする場合ですね。持分会社の組織変更とは,株式会社に組織変更することをいうのですから。会社法では,持分会社間の会社の種類の変更(合名会社→合資会社,合名会社→合同会社等)は,組織変更とはされないことになりましたから。

どういうところでいらいらするかというと,準用条文及びこれに伴う読替え規定,それから適用・準用除外規定(文言)(限定するものを含みます)です。これらがきちんと整理されるとずいぶんと理解しやすくなるものと思います。「体系書 会社法」は,そういうことも考慮に入れながら書いたつもりなのですが,それでも,校正しながら,ここもこう書いておけばよかったかなと思うところも発見したりします(ここまで書くと,うるさいな,しつこいなと思われるかも・・・という心理が働くこともあるのですが・・・難しいところです。初級用,中級用,上級用と3冊書かなければならないのかもしれません)。

前置きが長くなりました。問題の条文は,会社法781条2項です。
「第779条(第2項第2号を除く)及び前条の規定は,組織変更をする持分会社について準用する。この場合において,第779条第3項中「組織変更をする株式会社」とあるのは,「組織変更をする持分会社(合同会社に限る。)と,前条第3項中「及び第745条」とあるのは,「並びに第747条及び次条第1項」と読み替えるものとする。」
なんか,条文追っかけるのが面倒だなあ・・みんなで追っかければ面倒でない??
まず,前段です。会社法第779条というのは,株式会社が組織変更をする場合の債権者保護手続(異議手続)の規定であり,前条(会社法第780条)というのは,株式会社が組織変更をする場合の組織変更の効力発生日の変更に関する規定です。会社法779条のうち準用が除外されるものとして,同条2項2号が挙げられています。これは,公告事項としての計算書類に関する事項です。どうして除外されたか。会社法は,合同会社を含めて計算書類の公告を不要としているからです(重要点です,なぜ間接有限責任社員からのみなる合同会社についてまでも,公告不要としたのでしょうね,考えましょう)。

 次は,後段に括弧書で合同会社に限るという限定文言があります。会社法779条3項は,債権者保護手続における各別の催告(個別的催告)の省略の規定ですが,この規定の準用は合同会社に限るのですよというわけです。言い換えれば,合名会社及び合資会社は,官報公告と定款で定めた方法による公告(日刊新聞紙公告あるいは電子公告)と合わせてしても,各別の催告の省略はできませんよ,かならず会社債権者に各別に催告しなければなりませんよ,ということです。どうしてか?これは,理由がなければ覚えにくいですね。合名会社も合資会社も,無限責任社員がいるわけで,それゆえに債権者も安心しているわけですが,組織変更によって株式会社になってしまうと無限責任社員がいなくなってしまう・・・債権者を害するというわけです。合同会社であれば,もともと有限責任社員だけですから,会社債権者も会社財産があればいいということですから,二重の公告をすれば,各別の催告を省略してもいいのだということです。

 以上,組織変更について書きましたが,合併及び会社分割の場合については,会社法793条2項と813条2項に規定がありますので,いらいらしていないときに(疲れていないときにかな?)読んでみてください。もっと読みにくいですが・・・。

司法書士試験受験生のためのCheckTest会社法286. [Twitterから]

司法書士試験受験生のためのCheck Test 会社法286.甲合同会社を吸収分割会社,乙株式会社を吸収分割承継会社とする吸収分割で,甲合同会社においては,吸収分割契約について,原則として,総社員の同意を得なければならない。○か×か。

解答・解説
〈×です。〉
持分会社(会社分割の分割持分会社は,合同会社に限りますね)だから,総社員の同意を得なければならないような気になりますね。合併(消滅会社)はどうでしたか?原則として,総社員の同意ですね(会社法793条1項1号,ついでに813条1項1号も)。定款に別段の定めがある場合にはとありますが,これは,例によって,例のごとしです。
合併と違うんだ・・・です。会社分割は,事業譲渡の組織再編版ですよね。同じようなもので,事業譲渡でもできるのだけど,この事業譲渡は難点があって,これを克服するのが会社分割であるというわけで・・・。とすると,分割会社の社員に与える影響というのは,通常の事業譲渡と同様である(通常の業務執行行為)と言えるから,総社員の同意はいらないのではないかと考えられ,原則として,不要とされました。もっとも,その事業に関して有する権利義務の全部を他の会社に承継させてしまうのであれば,これは,分割会社の社員にとってみれば,大変なことですから(立案担当者は,合併に類似する効果を生ずると書いています),その場合には,総社員の同意を要するとするというのです(もちろん定款で別段の定めをすることができます)。会社法793条1項2号及び会社法813条1項2号をしっかり読んで確認しておいてください。「全部」「限る」となっているところを赤鉛筆などでぐるぐるぐる。

このような図も作った 昨日のつづき [体系書 会社法]

手に取って見ることができないので,紹介するページをとおもってこの数日表や図を探していたのですが,昨日,譲渡制限株式の相続等のところを見ていて,こういう図もつくったなあと思い出したのでご紹介です。文章が途中で次のページに行きますが,次ページに「・・・則は,適用されない(同条2号)。この場合,当該相続人その他の一般承継人は,株主としてとどまることを選択しているからである。」と続いています。


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図.jpg




「体系書 会社法 上巻」の表 その4 [体系書 会社法]

もうひとつ表(ひょう)の紹介をしたいと思います。この表は,譲渡制限株式の株主について,相続その他の一般承継が生じたときに,当該株式会社が,その相続その他の一般承継によって譲渡制限株式を取得した者(相続人等)から自己株式を取得する方法に関する「相続人等からの取得の特則(会社法162条)」と「相続人等に対する売渡しの請求(会社法174条)」を比較するものです。

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譲渡制限株式の相続等.jpg

この表は,相続人等に対する売渡しの請求の解説末尾に比較の表として置きました。このように比較して,理解して,記憶にとどめてもらおうと思っています。

「体系書 会社法 上巻」の表 その3 [体系書 会社法]

「体系書 会社法 上巻」の表(ひょう)について,どのようなものがあるか,株式まで(項目だけですが)紹介しましたが,今日は,その続きです。新株予約権から機関までです。

*募集株式と募集新株予約権との比較 *新株予約権の種類(名称) *新株予約権の譲渡方法と対抗要件 *取得条項付株式と取得条項付新株予約権との比較 *証券再発行の手続の比較 *株主総会の招集通知の発送期限の比較 *取締役会設置会社であるかどうかによる不統一行使の手続の違い *株主総会議事録の閲覧・謄写 *役員等の選任決議の方法(http://ueda-m.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07 上の表です) *補欠の予選の可否(http://ueda-m.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07 下の表です) *役員等の選任の意見陳述権 *株主総会の決議の取消し,決議の無効の確認,決議の不存在の確認の比較 *役員等の解任決議の要件 *株主の監督是正権の拡充・強化 *取締役会の招集 *株主総会の決議の省略と取締役会の決議の省略 *取締役会議事録の閲覧・謄写 *社外取締役 *通常の取締役会と特別取締役による取締役会の比較 *会計参与の報告の相手方 *監査役の権限の限定の可否 *監査役会議事録の閲覧・謄写 *取締役会と監査役会の比較 *委員会設置会社における取締役会の招集 *委員会議事録の閲覧・謄写 *監査役又は監査委員の同意の要否(3か所) *株主の違法行為差止請求権の要件


「体系書 会社法 上巻」の表 その2 [体系書 会社法]

「体系書 会社法」では,上巻と下巻あわせて100近くの表を作成したと先日書きましたが(http://ueda-m.blog.so-net.ne.jp/2010-04-07),他にどのようなものがあるかという質問をいただきましたので,その項目を紹介します。
 ゲラ前の完成版が手もとにありますので,それを見ながら順番にみていこうと思います。抜けないようにしなくてはですね。

*公開会社と非公開会社の比較 (これは,1頁全部です) *支配人の選任の要件 (株式会社と持分会社及び株式会社で取締役会設置会社とそれ以外) *事業の譲渡の場合の譲渡会社の競業禁止 *事業の譲渡の場合の譲受会社の弁済責任 *発起設立と募集設立の適用条文 *発行可能株式総数を定款に定めていないときの発起設立と募集設立の比較 *委員会設置会社以外の株式会社における設立時代表取締役について取締役会設置会社とそれ以外 *弁護士等の証明者の不足額てん補責任の性質の比較 *単独株主権・少数株主権 *単一株式発行会社における譲渡制限株式,取得条項付株式,取得請求権付株式の設定・変更・廃止の要件 *定款変更の手続の特則として,譲渡制限株式等の設定等につき単一株式発行会社と種類株式発行会社に分けての比較 *株主名簿の閲覧・謄写等の請求権者と要件 *株式の譲渡の方法と対抗要件(株券発行会社と不発行会社,不発行会社で振替株式以外と振替株式) *譲渡制限株式の譲渡の場合の承認機関(定款に承認機関の定めがない場合) *譲渡制限株式の相続人等からの取得の特則と相続人等に対する売渡しの請求の比較 *株式の消却,株式の併合,株式の分割,株式無償割当ての比較 *募集株式の発行の要件(株主割当て以外・株主割当て,非公開会社・公開会社)


以上,第1編 会社法総論から第2編株式会社株式までです。







「体系書 会社法」の表作成 [体系書 会社法]

 「体系書 会社法」で,上巻と下巻で合わせて100近くの表を作りました。私をよく知る人は,よく作ったねというか,それとも,どうしたのですかとどちらをいうのでしょう。決して,嫌いではありません。表は,役に立つものだと思っています。しかし,なにもかも表,表,表というのが駄目なんです。無理やり作れば,うそが混じるおそれがあってこわいのです。アバウトな表ってのが駄目ですね。それから,説明抜きの表がだめです。それらがオールキャストででてくるのであれば,それはもう,この表見てくださいと質問されたって,それは,困ります。

 さて,そんな私の作った表です。まとめの表として作成しましたので,本文を読んでもらって整理として役立ててもらえればうれしいです。小さいものから中くらいのもの,なかには1ページを占めるものがあります。
今回は,小さいものと中くらいのものをサンプルをおみせしたいと思います。トライしてみましたが,すこしみえにくいでしょうか?1メガまででしたか,サイズ変更を繰り返したのですが,難しいですね(自分だけかもしれないけど)。上は薄く,下は濃く見えますね。下は,スキャンしたあとの編集の段階で,修正のボタンを押したらこんなになってしまいました。「修行が足りぬ」ですね。実際の本は,もちろんこんなことはありません。

画像の上でクリックしてもらうと少し大きくなります。

補欠の予選○.gif


取締役会.gif







「体系書 会社法 上巻」はしがき [体系書 会社法]

はしがき


 本書は,主として司法書士試験受験生のための会社法の体系書である。
近年,司法書士試験の会社法で合格点をとれない,会社法が受験勉強の壁となって立ち塞がっているという受験生の声を耳にするようになった。会社法がわからなければ,午前の部の基準点に達しないだけでなく,午後の部の商業登記法にも影響し,結局興味がもてないということにもなる。これは,会社法をまとめ的なもの,あるいは概説書的なものだけで暗記しようとしているからではないだろうか。会社法だけでなく,ほかの試験科目についても同じことが言えるが,各制度の理解を前提とする体系的理解がなければ,難易度の高い試験においては,到底太刀打ちできない。しかし,これに十分に応える司法書士試験受験用の会社法がなかなか見当たらないという。そこで,本書「体系書 会社法」をYOUR PROJECTの司法書士試験体系書シリーズ第1弾として,発刊することとした。
 「会社法」が公布・施行されてから,早4年が経過しようとしている。当時,「会社法」は,これまでの日本の会社法制の体系的かつ抜本的見直しをしたものであって,昭和25年の商法の改正以来のパラダイム的転換であるという指摘がされていた。それゆえに,限られた文献の中でのスムーズな理解は,なかなかに困難なことであった。しかし,月日が経過し,その間に,学者,実務家による体系書や注釈書も次々に発刊されるようになり,私たちは,これらからたくさんのことを学ぶことができるようになって,会社法についての十分な理解が可能となった(まだ完結していないものもあるが)。私は,時間の許すかぎり,これらの文献に目を通し,理解して,これを反映させるように努めた。また,比較を中心に表をできるだけたくさん作成した。整理のために見て,記憶として定着するように大いに役立てて欲しい。
 司法書士試験受験用の参考書としては,効率的な学習のために,概説書的なものや,まとめ的なものも必要であり,私も,このようなものの必要性を否定するものではないが,学習の早い段階で,ある程度詳細な体系書の読込みが必要ではないかと考えている。これは,最近の司法書士試験の会社法の問題を解いてみるとすぐに理解できることであろう。司法書士試験の会社法は,択一試験として出題され,また,記述式(商業登記書式)の基礎・前提となるものとして出題されるもので,司法書士になるための試験として,手続的,技術的なものを含めて,かなり細かいところ,深いところが出題されている。時間はかかるかもしれないが,結局において,本書のような体系書に取り組むことが司法書士試験合格への近道となり,また,合格後本職となってから業務を行っていく上での自信の源となることと思う。
 本書には,『第1編 会社法総論,第2編 株式会社 第1章 株式会社総論~第5章 機関』までを,近刊の下巻には,『第2編 第6章 計算~第10章 清算,第3編 持分会社,第4編 社債,第5編 組織変更・合併・会社分割・株式交換・株式移転,第6編 外国会社』を納める。振替株式,振替新株予約権,振替新株予約権付社債,振替社債についても,必要部分について言及し,平成21年の会社法施行規則及び会社計算規則の改正を反映させ,その他,最新の法令等に基づいて記述した。繰り返し読んで理解を深め,司法書士試験に合格して,会社法に強い司法書士になってほしい。本書が,そのために役立つことを強く願っている。

2010年3月8日



「体系書 会社法 上巻」は,A5版で,本文503ページ 索引付き です。


「体系書 会社法 上巻」表紙カバー [体系書 会社法]

                   「体系書 会社法 上巻」カバー.jpg

PCによって,あるいはWindowsかMacかによって色の見え方が異なるかもしれないと言われました。私のPC3台は,すべて青く見えるのですが,実際は,もう少し,バイオレットあるいはパープルです。Macではどう見えますか?

「体系書 会社法 上巻」は,A5版で,本文503ページ 索引付き です。

組織再編行為の当事会社のネーミング [会社法いろいろ]

まず,合併からです(括弧内は定義付けがされているところです)。吸収合併消滅株式会社(会社法749条1項2号),吸収合併消滅持分会社(同),吸収合併存続株式会社(同1号),吸収合併存続持分会社(会社法751条1項1号),新設合併消滅株式会社(会社法753条1項6号),新設合併消滅持分会社(同),新設合併設立株式会社(同2号),新設合併設立持分会社(同)です。もちろん,吸収合併消滅会社とか吸収合併存続会社という概念設定もされていますが,ここでは省略します。

会社分割です。吸収分割株式会社(会社法758条2号),吸収分割合同会社(会社法793条2項),吸収分割承継株式会社(会社法758条1号),吸収分割承継持分会社(会社法760条1号),新設分割株式会社(会社法763条5号),新設分割合同会社(会社法813条2項),新設分割設立株式会社(会社法763条1号),新設分割設立持分会社(会社法765条1項1号)です。吸収合併消滅持分会社はありますが,吸収分割持分会社新設分割持分会社は規定がありません(用語として使えない,合名会社,合資会社まで入ってしまうから)。新設分割設立持分会社はありますね。どうしてかは,当事会社がきちんと理解できていれば,わかると思います。

株式交換・株式移転です。ここは,株式交換と株式移転を分けましょう。まず,株式交換です。株式交換完全親株式会社(会社法768条1項1号),株式交換完全親合同会社(会社法770条1項1号),株式交換完全子会社(会社法768条1項1号)です。株式交換完全子会社となっていて,株式交換完全子持分会社の概念設定はもちろんのこと,株式交換完全子株式会社というのもありません。株式交換とは何かがわかっていれば,前者はありえないし,後者は,わざわざ株式会社にするまでもないということになります。
株式移転はどうか。株式移転設立完全親会社(会社法773条1項1号),株式移転完全子会社(会社法773条1項5号)です。株式会社だけだから,あえて株式移転設立完全親株式会社,株式移転完全子株式会社という必要はないからですね。

さて,定義付けはないのですが,会社法804条3項に株式移転設立完全親株式会社という語句があるのです。何か意味があるのか,ここでは必要であるのか,誰かが書いているかもしれませんね。もし,誰かご存じであれば,教えてください。「体系書 会社法 下巻」の校正中なのですが,どうしようと迷っているところです。株式等とつながるから修辞上の問題でしょうか?

条文は,打ち間違いをしているかもしれません。また,確認しますが,気が付いたら教えてください。

         オゴオリザクラ

         P4010816.JPG










条文を追っかける(2) [条文を追っかける]

今日は,ブログで何を書こうかなと思いながら,twitterでつぶやいていました。司法書士試験受験生のためのCheck Test 会社法237.238の解説書こうかなとも思ったのですが,しかし,だれも,この問題でつぶやかないし,ひょっとしたら,何てことない問題なのかも(どうなのでしょうか???)と思い,何か別の問題を・・・。
条文を追っかけるで何か・・・うーん。過去問で何かなかったか・・・。あった。

問題です。「監査役会設置会社の監査役は,その子会社である委員会設置会社の監査委員を兼ねることができないが,委員会設置会社の監査委員は,その子会社である監査役会設置会社の監査役を兼ねることができる。」○か×か。H20年第34問アです。答えは,○ですね。http://www.moj.go.jp/content/000011915.pdf

難しかったことも何度もやれば,いつのまにかそれが常識となっている。自分にとって常識になるまで繰り返す。難関試験を突破するのに必要なことではないかと思っています。この例として,この問題を出したかったということもあります。この問題をなんてことないと思っている人は,本問をとくための前提が,常識となった人です。何が・・監査委員は,取締役なんだということです。最初の頃は,委員会設置会社の理解は,大変だったのではないでしょうか。もちろん,私もそうでした。でも,監査委員は,取締役なんだということが常識になっていると,この問題はなんてことありません。

さて,条文を追っかけるのですから,条文です。
会社法335条2項「監査役は,株式会社もしくはその子会社の取締役もしくは支配人その他の使用人又は当該子会社の会計参与もしくは執行役を兼ねることができない。」

再び問題文
「監査役会設置会社の監査役は,その子会社である委員会設置会社の監査委員を兼ねることができないが,委員会設置会社の監査委員は,その子会社である監査役会設置会社の監査役を兼ねることができる。」
監査委員とは書いてない。しかし,監査委員は取締役である。
条文→会社法400条2項「委員会の委員は,取締役の中から,取締役会の決議によって選定する。」

問題文の書換え→「監査役は,その子会社の取締役を兼ねることができないが,親会社の取締役は,その子会社の監査役を兼ねることができる。」おなじみの問題となります。

では,応用問題です。
その1.「監査役会設置会社の監査役は,その子会社である委員会設置会社の指名委員を兼ねることができないが,委員会設置会社の指名委員は,その子会社である監査役会設置会社の監査役を兼ねることができる。」
○か×か。○ですね。各委員会の委員(指名委員,監査委員,報酬委員)は,取締役ですからね。

その2.「指名委員は,会計参与との兼任が禁止される。」○か×か。○です。会社法400条2項→会社法331条1項

その3.「監査委員は,支配人その他の使用人との兼任が禁止される。」○ですが,会社法400条2項→会社法331条3項ですね。

なお,会社法400条4項の監査委員の兼任禁止の規定読みにくいですが,ヤマガタ括弧などで括って読んでみて下さい。いらいらしたら読むのを止めます。ある委員会設置会社(A株式会社)の監査委員は,当該委員会設置会社(A株式会社)もしくはその(A株式会社の)子会社の・・・又は当該委員会設置会社(A株式会社)の子会社の・・・と読みます。