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定時株主総会の季節 その7 [会社法いろいろ]

 議決権の代理行使の問題です。

 釈迦に説法的なところから入ります。
 株主は,代理人によってその議決権を行使することができるとされています(会社法310条1項前段)。これは,株主の議決権の行使を容易にし行使の機会を保障するためです。株主の出席による自らの行使が困難な場合もあり,これを強制すると,議決権の行使を事実上奪うことにもなりかねず,また,株式会社では,持分会社の社員と異なり,株主は個性を有しない建前であるから,株主自身の出席を強制する必要もないからですね。

 問題となるのは,代理人の資格の制限です。多くの株式会社では,代理人の資格を株主に限る旨の定款の定めが置かれているようです。会社法に制限することができる旨の規定が商法時代から置かれていないことから,この定款の定めが有効かどうかについて争われてきました。

 旧商法時代ですが,最高裁判所は,このような定款の規定は,株主総会が,株主以外の第三者によって攪乱されることを防止し,会社の利益を保護する趣旨に出たものと認められ,合理的理由による相当程度の制限ということができるとして,旧商法239条2項に反せず有効であるとしています(最判S43.11.1,最判S51.12.24)。登記先例は,これに従い有効説に変更されました(S44.3.6第381号)。そこで,この判例及び先例のもとで,株式会社は,このような定款の規定があれば,原則として,株主でない者が株主の代理人として議決権を行使することを拒むことができることになります。

 手許にある3社はどうか。定款を見ていませんが,招集通知の記載から,いずれも,株主に限っていると推測されます。

 それから,株主が代理人によって議決権を行使する場合には,その株主又は代理人は,代理権を証明する書面(委任状)を株式会社に提出しなければならないとされている点を注意しておきます(会社法310条1項後段)。これは,委任による代理人について,代理関係の有無を明確にし,株主総会における決議の成否を円滑にするためです。なお,株主又は代理人は,この代理権を証明する書面の提出に代えて,政令で定めるところにより,株式会社の承諾を得て,当該書面に記載すべき事項を電磁的方法で提供することができ,この場合において,当該株主又は代理人は,当該書面を提出したものとみなされるとされています(会社法310条3項)。

 以下,明日に続きます。代理人の員数の制限の問題と3社の議決権の代理行使に関する招集通知の記載についてです。

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