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平成2年の商法改正 寄り道ですが・・・発起人の員数 [会社法いろいろ]

 発起設立と募集設立についての稿なのですが,平成2年の商法改正にふれるので,見ていたら,書く気になりました。寄り道ですが・・・。

平成2年の商法改正は,重要な事項の改正をいくつも行っているのですが,第一に思い出すのは,株式会社における発起人の員数の規制の撤廃でしょうか。それまで,株式会社の設立には,7人以上の発起人を要するものとされていました。発起人は,必ず,株主になりますから,株式会社の設立当初は,株主は,最低7人(発起設立)か8人(募集設立)でした。この規制を撤廃して,現在のように,発起人は,1人で構わないとしました。これによって,会社の設立の当初から,株式会社において,一人会社が認められるようになったのでした。

発起人について,一定の員数を要求したのは,株式会社の設立の確実を期すためで,7人以上としたのは,そのための適当な数がそのあたりということでしょうね(「7人の侍」ですね)。では,その規制の撤廃の理由はどこにあったのでしょうか。立法担当官は,次のように書かれています(大谷禎男著「改正会社法」P33)。

「しかし,わが国の株式会社の多くは,個人企業の法人成りの形で設立されており,この場合に,企業主は,通常,法人成りを機に他人の参加を得て共同企業としたいとの意図を持っているわけではない。会社が企業分割的な子会社の設立を企図する場合も同様である。このような会社設立の実態に照らすと,旧法165条は,多くの場合に,建前を整えるためだけの操作を強要していたことになる。
しかも,発起人の員数の規制は,名目的な発起人を用意することによって容易に満たすことが可能であり,したがって規制としての実質的な機能はほとんどなく,かえって法律を軽視する風潮を助長しかねない。また,名目的な発起人が置かれる結果,後に発起人の責任追及や権利の帰属をめぐる無益な法律紛争を惹起するというような弊害もある。」
これに続けて,「会社債権者の保護は,発起人の員数の規制によるよりも,相当額の危険資本の拠出の確保と発起人および最初の取締役の責任の強化,さらには会社財産の個人財産との分別管理の徹底によって賄う方が合理的である。」と書かれています。

横道にそれました。次回は,発起設立に関する平成2年商法改正についてです。


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