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定時株主総会の季節 その4 [会社法いろいろ]

 書面による議決権の行使と電磁的方法による議決権の行使が可能である場合に,書面による議決権の行使をした後に電磁的方法による議決権の行使をすることができるか(逆の場合もありますね),現実に重複して議決権を行使した場合に,その内容が異なったとすると(一方が賛成で他方が),どちらが議決権の行使として有効か。

 あるのでしょうか,こういうことが。施行規則にこれに関する規定があるのですが,施行規則に規定しなければならないほどまでにあるのでしょうか。電磁的方法による議決権の行使(電子投票)は,簡単にできるから,あるということなのでしょうね。

 できるかできないかという問題設定をしてしまいましたが,常識的に考えれば,株主にとってみれば,どちらか一方だけが認められればよいという性質のものですから,できるかできないかという問題設定であれば,できないと言うべきではないかと思います(それで株主の保護もしくは権利としては充分だからです)。両方認める必要はありません。しかし,できないと言ってみても,問題となるのは,実際に行われてしまった場合に,その内容が異なるときに,どちらを有効とするかです。

 会社法施行規則は,このように書面による議決権の行使と電磁的方法による議決権の行使が重複することがあることを想定して,議決権の行使の内容が異なるものであるときに備え,その取扱いに関する事項を定めてそれを議決権行使書面か招集通知に記しておくことができることとしています(施行規則63条4号ロ,66条1項3号,3項,4項)。つまり,それぞれ招集者が定めることができるのだよというわけです。

 会社法施行規則63条4号ロは,次のとおりです。
 「一の株主が同一の議案につき法第311条第1項又は第312条第1項の規定により重複して議決権を行使した場合において、当該同一の議案に対する議決権の行使の内容が異なるものであるときにおける当該株主の議決権の行使の取扱いに関する事項を定めるときは、その事項」

 手許にある3社はどうしているでしょう。まず,議決権行使書面あるいは招集通知に記載しているかどうか。どのように記載されているか。

甲株式会社 
 記載されています
 「議決権の行使は,お手許の議決権行使書用紙による郵送にて議決権を行使する方法,または当社の議決権行使サイトによる方法のいずれか一方によってのみ行使することができます。双方で行使することのないようご注意ください。
なお,双方で行使された場合は,インターネットによる議決権の行使を有効とさせていただきます。」

乙株式会社
 記載されています。
「書面とインターネットにより,二重に議決権を行使された場合には,インターネットにより行使されたものを有効な議決権行使として取り扱わせていただきます。」

丙株式会社
 記載されています。
 「インターネットと議決権行使書用紙の双方で議決権を重複して行使された場合は,後に到着したものを有効な議決権行使として取り扱わせていただきます。なお,同日に到着した場合は,インターネットによる議決権行使を有効なものとして取り扱わせていただきます。」

 以上3社をくらべてみると,甲株式会社と乙株式会社は,電子投票優先です。したがって,例えば,6月20日にはがきを出して, 6月21日に電子投票をして会社がこれを即時に受領した後,はがきが6月21日に到着したという場合でも,電子投票の方が有効となります。しかし,同じ例で,丙株式会社では,書面投票の方が有効となるという逆の結論となります。

 招集者がこのような場合について議決権行使書面又は招集通知に記していれば問題はないのですが,何ら記していなかった場合はどうか。電子投票が重複して行われたときはどうかについては,次回とします。

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