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Check Test 会社法302 [条文を追っかける]

司法書士試験受験生のためのCheck Test 会社法302について,なぜ×なのでしょうとの質問がありました。

司法書士試験受験生のためのCheck Test 会社法302.
「株式交換をする場合には,すべて,株式交換完全子会社の反対株主は,株式交換完全子会社に対し,自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。○か×か。」

解答・解説
×です。「すべて」という点が誤っています。

株式交換完全子会社の株主は,株式交換によって株式交換完全親会社に株式をとられてしまうのですから,株式交換に反対の株主は(問題文を「反対株主」ではなく「株式交換に反対の株主」にした方がよかったかなと今思っています。反対の株主の意味で使いました),すべて株式買取請求権を与えてしかるべきであるような気がしますよね。

しかし,会社法785条1項は,このようになっています。
「 吸収合併等をする場合(次に掲げる場合を除く。)には,反対株主は,消滅株式会社等に対し,自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる。
 一 第783条第2項に規定する場合
 ニ 前条第3項に規定する場合

 二(2号)は,吸収分割の場合だけですから,ここで問題になる適用除外は,一(1号)だけです。そこで,条文を追っかけます。

会社法783条 消滅株式会社等は,効力発生日の前日までに,株主総会の決議によって,吸収合併契約等の承認を受けなければならない。
2 前項の規定にかかわらず,吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社が種類株式発行会社出ない場合において,吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社の株主に対して交付する金銭等(以下この条において「合併対価等」という。)の全部又は一部が持分等(持分会社の持分その他これに準ずるものとして法務省令で定めるものをいう。以下この条において同じ。)であるときは,吸収合併契約又は株式交換契約について吸収合併消滅株式会社又は株式交換完全子会社の総株主の同意を得なければならない。
3 以下省略

ということは,(単一株式発行会社である)消滅株式会社,株式交換完全子会社の株主に,合併対価・株式交換対価として持分等を交付する場合には,株式買取請求権は,認められませんということになります。どうしてか?この場合には,上記(会社法783条2項)のように,吸収合併契約・株式交換契約について株主全員の同意を要するとしているからです。つまり,1人でも反対すれば,吸収合併,株式交換をすることはできないからです。
株式買取請求権は,どのような権利として説明されるか。「体系書 会社法 上巻」P136から引用します。

「株主の利益にとって特に重大な関係のある特定の決議が,株主総会及び種類株主総会で成立した場合,これに反対の株主は,株式会社に対し,自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができる(会社法116条)。この権利を反対株主の株式買取請求権という。これは,投下資本の確実な回収を保障して多数決の原則による少数株主の経済的不利益を救済しようとするもので,多数決の原則の修正である。
なお,事業の譲渡等の場合の株式買取請求権は,会社法469条・470条に,合併等における株式買取請求権は,会社法785条・786条及び797条・798条,806条・807条に規定が置かれている。」

多数決の原則の修正です。つまり,少数の反対があっても,強行することができるが,少数者を株式買取請求権という形で保護しますということです。総株主の同意となれば,少数というのはないわけですから,株式買取請求権を認める必要性はないということになります。

適用除外規定(文言)があちこちにありますね。慣れればいいのでしょうが,なかなか・・・ですね。しかし,これに慣れれば,会社法に強くなれることは間違いないような気がします。