SSブログ

会社法781条2項 [条文を追っかける]

今,「体系書 会社法 下巻」の最終校正に入っています。さきほど,組織変更のところで,条文チェックの際,いらいらせずに落ち着いて条文を確認しなければならない箇所(適用除外文言,適用限定文言なので・・・)がありましたので(各所にあるのですが・・・),私の気分転換及び受験生の皆さんに役に立つのかどうか,若干の疑問はありますが,今日は,この箇所の条文を追っかけることにしましょう。会社法781条2項です。持分会社が組織変更する場合です。もちろん,持分会社が株式会社に組織変更をする場合ですね。持分会社の組織変更とは,株式会社に組織変更することをいうのですから。会社法では,持分会社間の会社の種類の変更(合名会社→合資会社,合名会社→合同会社等)は,組織変更とはされないことになりましたから。

どういうところでいらいらするかというと,準用条文及びこれに伴う読替え規定,それから適用・準用除外規定(文言)(限定するものを含みます)です。これらがきちんと整理されるとずいぶんと理解しやすくなるものと思います。「体系書 会社法」は,そういうことも考慮に入れながら書いたつもりなのですが,それでも,校正しながら,ここもこう書いておけばよかったかなと思うところも発見したりします(ここまで書くと,うるさいな,しつこいなと思われるかも・・・という心理が働くこともあるのですが・・・難しいところです。初級用,中級用,上級用と3冊書かなければならないのかもしれません)。

前置きが長くなりました。問題の条文は,会社法781条2項です。
「第779条(第2項第2号を除く)及び前条の規定は,組織変更をする持分会社について準用する。この場合において,第779条第3項中「組織変更をする株式会社」とあるのは,「組織変更をする持分会社(合同会社に限る。)と,前条第3項中「及び第745条」とあるのは,「並びに第747条及び次条第1項」と読み替えるものとする。」
なんか,条文追っかけるのが面倒だなあ・・みんなで追っかければ面倒でない??
まず,前段です。会社法第779条というのは,株式会社が組織変更をする場合の債権者保護手続(異議手続)の規定であり,前条(会社法第780条)というのは,株式会社が組織変更をする場合の組織変更の効力発生日の変更に関する規定です。会社法779条のうち準用が除外されるものとして,同条2項2号が挙げられています。これは,公告事項としての計算書類に関する事項です。どうして除外されたか。会社法は,合同会社を含めて計算書類の公告を不要としているからです(重要点です,なぜ間接有限責任社員からのみなる合同会社についてまでも,公告不要としたのでしょうね,考えましょう)。

 次は,後段に括弧書で合同会社に限るという限定文言があります。会社法779条3項は,債権者保護手続における各別の催告(個別的催告)の省略の規定ですが,この規定の準用は合同会社に限るのですよというわけです。言い換えれば,合名会社及び合資会社は,官報公告と定款で定めた方法による公告(日刊新聞紙公告あるいは電子公告)と合わせてしても,各別の催告の省略はできませんよ,かならず会社債権者に各別に催告しなければなりませんよ,ということです。どうしてか?これは,理由がなければ覚えにくいですね。合名会社も合資会社も,無限責任社員がいるわけで,それゆえに債権者も安心しているわけですが,組織変更によって株式会社になってしまうと無限責任社員がいなくなってしまう・・・債権者を害するというわけです。合同会社であれば,もともと有限責任社員だけですから,会社債権者も会社財産があればいいということですから,二重の公告をすれば,各別の催告を省略してもいいのだということです。

 以上,組織変更について書きましたが,合併及び会社分割の場合については,会社法793条2項と813条2項に規定がありますので,いらいらしていないときに(疲れていないときにかな?)読んでみてください。もっと読みにくいですが・・・。