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「体系書 会社法 上巻」はしがき [体系書 会社法]

はしがき


 本書は,主として司法書士試験受験生のための会社法の体系書である。
近年,司法書士試験の会社法で合格点をとれない,会社法が受験勉強の壁となって立ち塞がっているという受験生の声を耳にするようになった。会社法がわからなければ,午前の部の基準点に達しないだけでなく,午後の部の商業登記法にも影響し,結局興味がもてないということにもなる。これは,会社法をまとめ的なもの,あるいは概説書的なものだけで暗記しようとしているからではないだろうか。会社法だけでなく,ほかの試験科目についても同じことが言えるが,各制度の理解を前提とする体系的理解がなければ,難易度の高い試験においては,到底太刀打ちできない。しかし,これに十分に応える司法書士試験受験用の会社法がなかなか見当たらないという。そこで,本書「体系書 会社法」をYOUR PROJECTの司法書士試験体系書シリーズ第1弾として,発刊することとした。
 「会社法」が公布・施行されてから,早4年が経過しようとしている。当時,「会社法」は,これまでの日本の会社法制の体系的かつ抜本的見直しをしたものであって,昭和25年の商法の改正以来のパラダイム的転換であるという指摘がされていた。それゆえに,限られた文献の中でのスムーズな理解は,なかなかに困難なことであった。しかし,月日が経過し,その間に,学者,実務家による体系書や注釈書も次々に発刊されるようになり,私たちは,これらからたくさんのことを学ぶことができるようになって,会社法についての十分な理解が可能となった(まだ完結していないものもあるが)。私は,時間の許すかぎり,これらの文献に目を通し,理解して,これを反映させるように努めた。また,比較を中心に表をできるだけたくさん作成した。整理のために見て,記憶として定着するように大いに役立てて欲しい。
 司法書士試験受験用の参考書としては,効率的な学習のために,概説書的なものや,まとめ的なものも必要であり,私も,このようなものの必要性を否定するものではないが,学習の早い段階で,ある程度詳細な体系書の読込みが必要ではないかと考えている。これは,最近の司法書士試験の会社法の問題を解いてみるとすぐに理解できることであろう。司法書士試験の会社法は,択一試験として出題され,また,記述式(商業登記書式)の基礎・前提となるものとして出題されるもので,司法書士になるための試験として,手続的,技術的なものを含めて,かなり細かいところ,深いところが出題されている。時間はかかるかもしれないが,結局において,本書のような体系書に取り組むことが司法書士試験合格への近道となり,また,合格後本職となってから業務を行っていく上での自信の源となることと思う。
 本書には,『第1編 会社法総論,第2編 株式会社 第1章 株式会社総論~第5章 機関』までを,近刊の下巻には,『第2編 第6章 計算~第10章 清算,第3編 持分会社,第4編 社債,第5編 組織変更・合併・会社分割・株式交換・株式移転,第6編 外国会社』を納める。振替株式,振替新株予約権,振替新株予約権付社債,振替社債についても,必要部分について言及し,平成21年の会社法施行規則及び会社計算規則の改正を反映させ,その他,最新の法令等に基づいて記述した。繰り返し読んで理解を深め,司法書士試験に合格して,会社法に強い司法書士になってほしい。本書が,そのために役立つことを強く願っている。

2010年3月8日



「体系書 会社法 上巻」は,A5版で,本文503ページ 索引付き です。