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持分会社における競業禁止及び利益相反取引の制限 [体系書 会社法]

 持分会社における業務執行社員の競業禁止と利益相反取引の制限 株式会社の取締役・執行役との比較

 株式会社の取締役及び執行役における競業禁止及び利益相反取引の規制と持分会社の業務執行社員における競業禁止及び利益相反取引の規制を比較しましょう。

株式会社の取締役及び執行役の競業も利益相反取引も,いずれもその承認については,取締役会設置会社でない株式会社では株主総会の承認,取締役会設置会社では取締役会の承認で,取締役・執行役が適法にすることができるようになる要件は同じです(会社法356条1項,365条1項,419条2項)。

 ところが,持分会社では,競業と利益相反取引で要件が異なります。株式会社の場合と異なりそもそも条文が分かれていますね。会社法594条と会社法595条です。競業は,当該社員以外の全員の承認(ただし,定款で別段の定めをすることができる),利益相反取引は,当該社員以外の社員の過半数の承認(これも,定款で別段の定めをすることができる)とされています。前者は,厳しいですね。持分会社は,少数の緊密な信頼関係を有する社員からなる会社だからと言われます。競業ということは,会社に不利益を及ぼす可能性が,きわめて高いわけであって,社員間の信頼関係を前提とする持分会社では,1人でも反対があってはならないという建前です(もちろん定款自治は認めるとして)。これに対して,利益相反取引は,必ずしも,不利益とは限らない。利益である場合もある。にもかかわらず,他の社員の全員の承認を要するとすると,持分会社にとって利益である取引も不可能となるおそれがあって,会社にとって得ることのできる利益を失うというわけです。

 さて,競業禁止については,株式会社と持分会社とでもう一つ異なる点があります。どこでしょう。これは,会社法594条1項2号をしっかりと読んでもらうことにします。