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資本の原則 つづき [体系書 会社法]

 江頭先生は,会社法コンメンタール1のP307に,いわゆる「資本充実の原則」の意義という標題のもとに,次のように書かれています。

 資本充実の原則とは,資本金(払込剰余金を含む。鈴木=竹内26頁)の額に相当する財産が出資者から確実に拠出されることを要求するものであり,それは,会社債権者・株主双方の利益の保護を目的とするものである(新注会(2)95頁 [上柳])。ところが,最近,学説の一部に,・・・中略・・・何ら会社債権者を害しない(「資本充実の原則」は,会社債権者の保護と無関係の制度である)と主張するものがある・・・中略・・・しかし,資本充実の原則が会社債権者の保護と無関係であるとの主張は,次の2点において誤りである。
 第1に,ある金額(財産)が出資された旨のアナウンスがされることの会社債権者に及ぼす影響は,決して小さくない(大隅=今井・上259頁)。会社が危機の状況における募集株式の発行等を考えればこのことは明らかであり,例えば,金融危機に際し,政府が金融機関に対し1兆円の資本注入を行ったと称して,真実は1000億円しか出資しなかったとしたら,何が起こるであろうか。また,「見せ金増資」は,通常,会社債権者を欺く目的で行われる。
 第2に,出資に際し貸借対照表の資産の部に虚偽の計数が計上されると,たしかにそれだけでは株主への分配可能額が増えるわけではないが,その後に資本金・準備金の減少手続をとれば,実財産を社外流出させ会社債権者への引当財産を実質的に減少させることが可能になる(江頭憲治郎「ストック・オプションの費用計上と商法」落合還暦58頁注(16))。

「株式会社法」では,上記第1の部分について要約して書かれている(第3版P35)。