SSブログ

午前の部 第6問 その2 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 せっかく,問題を打ち込んだので,少々,解説を。

 本問では,意思表示とは何かが問題とされています。それで,教授は,「表意者が一定の法律効果を意欲する意思を表示する行為」をいうとしています。それで,意思表示準法律行為との区別の理解を問うというものです。

 準法律行為は,表現行為(意識内容の表現)と非表現行為に分類されますが,さらに,表現行為は,意思の通知観念の通知感情の表示に分類されます(我妻榮著「新訂民法総則」参照)。

上記「新訂民法総則」P234には,「意思表示は,契約の申込・承諾,遺言などのように,表意者が一定の効果を意欲する意思を表示し,法律がこの当事者の意欲した効果を認めてその達成に努力するものである」と書かれています。選択肢アは,ここから持ってきたように見えますが,さて・・・。

 意思の通知については,前掲書によれば,「意思の通知は,無能力者(注1)の相手方のする催告(19条注2)・債務の履行を要求する催告(153条,412条,541条等)・弁済受領の拒絶(493条・494条など)などのように,一定の意思の表示であるが,その意思内容が,その行為から生ずる法律効果以外のものに向けられている点で意思表示と異なるものである。」とされています(同書P234)。

 どういう法律効果が発生するのかが問題なのですね。例えば,「私所有の甲不動産をAに遺贈する。」という遺言であれば,「私」が死んだとき,法律の規定によって私の意欲したところに従って,Aへの譲与の効果,Aへの所有権移転の効果が生ずることになります。これに対して,甲が乙に対してする債務履行の催告であれば,甲の意欲するところは債務者が債務の履行をしてくれることですが,これによって,当たり前ですが,債務が履行されたことになりません。「債務履行の催告の効果は時効中断(153条),履行遅滞(412条3項),解除権の発生(541条)など」(同書)債務の履行とは別の法律効果が生ずるというわけです。

 観念の通知は,ある事実の通知です。債権譲渡の通知が観念の通知であることは,よく知られるところであり,そこで,選択肢エが誤っていることがすぐわかり,これで,4と5が消えて,申込みの誘引について知らなくても正解が出せたとの声も聞こえました。

 遺失物の拾得(民法240条)は,無主物の帰属(民法239条)と同様に,「一定の外形的な行為を本体とするものであって,一定の意識ないし精神作用を要件とする場合にも,その精神作用は,従たる地位を占めるものである」(前掲書P234)とされる非表現行為です。

nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 2

隼

注1 行為能力者
注2 現 20条
by (2010-09-09 14:43) 

隼

遺言のところ,遺贈と打ち込むつもりで,贈与すると書いていました。遺贈に修正します。09.12
by (2010-09-12 22:03) 

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0