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午前の部 第6問 その3 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

申込みと申込みの誘引

教授: 最後に具体的な例で聞きますが,賃貸マンションの所有者である甲が「101号室 入居者募集 甲」とだけ書いた張り紙をマンションの入口に掲示して,入居者を募集する旨を表示することは,意思表示ですか。
学生:オ その張り紙を見た乙が,甲に入居したいと申し出ることによって,賃貸借契約が成立しますから,意思表示です。

ここで申込みの誘引について問われています。申込みは意思表示であるが,申込みの誘引は意思表示ではないということで,学生のオにおける解答は誤っているということになります。

申込みと申込みの誘引は,債権各論で登場します。契約の成立のところですね。申込みは,意思表示なのですが,どのような意思表示かというと,相手方の意思表示と合致して契約を成立せることを意図して行われる意思表示である,つまり,その申込みに対して承諾があれば契約が成立するという確定的な意思表示であるということになります。

その申込みに対して承諾があれば契約が成立するというものですから,申込みには,契約の主要な内容を決定する事項が含まれていなければなりません。この関係で区別すべきだとされるのが,申込みの誘引です。誘引とは,(誘い入れること(岩波国語辞典),さそいいれること,いざなうこと(広辞苑),注意・興味をさそってひきつけること。さそいこむこと(大辞林),さそい入れること(新潮現代国語辞典))と辞書にあります。

教授の具体例である入居者募集の張り紙の掲示は,申込みの誘引です。申込みではないということは,もし,これが,申込みであるということになれば,誰であっても,賃貸マンションの所有者に対して,「101号室を借りたい」と言えば,それは,承諾の意思表示として,直ちに,賃貸借契約が成立するということになります。それは,おかしい。誰でもいいわけではないだろう,賃料は・・・・。そこで,それは,申込みではないという説明となります。

張り紙や広告等を見た者がするのが,申込みとなって,張り紙や広告をした者(申込みの誘引者)がこれに対してするのが承諾ということになります。申込みと申込みの誘引との区別は具体的事情(行為が契約の内容を何ら留保することなく指示しているかどうか,契約の相手方が何人であってもかまわないかどうか等が一応の基準になると言われています。不動産売買や賃貸の広告,社員募集広告等は,申込みの誘引と解されています。後者の場合,面接しますよね。もちろん,アルバイトの募集も同じです。

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コメント 1

隼

申込みの誘引まで書こうかどうしようかと迷いました。それで,その2の閲覧数次第だと思っていたら,多かったので,書くことにしました。
by (2010-09-11 11:44) 

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