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定款に株式譲渡制限規定がある場合における譲渡承認機関 [Twitterから]

 株主にとって,株式の譲渡は,投下資本を回収するための重要な手段です。したがって,株式の譲渡は,原則として,自由でなければなりません。しかし,株式会社にとって好ましくない者が株主となって株式会社の運営を阻害することを防止し,株式会社の運営を安定させる必要性が高い株式会社も少なくありません。また,一定の種類の株式については,その内容の特殊性から株式会社の意向に関係なく譲渡されることを阻止したいということもあります。
 そこで,会社法は,株主の投下資本の回収を保障しながら,定款で,発行する全部の株式について(会社法107条1項1号),あるいは特定の種類の株式について(会社法108条1項4号),譲渡による株式の取得について株式会社の承認を要する旨を定めることを認めています。

 その制限の態様として,どのようなものが許されるかが問題です。譲渡制限は,譲渡による株式の取得について株式会社の承認を要するという形でのみ認められます(会社法107条1項1号,108条1項4号)。したがって,株式の譲渡を禁止するということはできません。譲渡禁止は,およそ,譲渡することができないとするものであって,株主の投下資本回収の途を閉ざし,株式会社の承認によって譲渡が認められる途までも否定するものだからです。また,株式の譲渡による取得についての制限ですから,譲渡による取得以外の株式の移転や質入れについて株式会社の承認を要する旨を定めることもできません。

 株式会社の承認となっていますが,では,その承認機関についてはどうなっているでしょうか。会社法139条1項です。まず,本文です。取締役会設置会社でない株式会社にあっては,株主総会の決議,取締役会設置会社にあっては,取締役会の決議によらなければならないとあります。これが原則です。しかし,これにはただし書があって,「ただし,定款に別段の定めがある場合には,この限りではない。」そこで,取締役会設置会社において,定款で定めれば,株主総会を承認機関としたり,代表取締役を承認機関とすることができます(取締役会設置会社出ない株式会社においては,取締役や代表取締役を承認機関とすることもできます)。

 以上は,会社法により,旧商法時代の登記実務の見解を明文の規定により否定したものです。このことを頭のどこかで覚えておいてもいいのではないかと思います。旧商法時代においては(旧商法時代の株式会社は取締役会設置会社),その条文は,「株式ハ之ヲ他人ニ譲渡スコトヲ得但シ定款ヲ以テ取締役会ノ承認ヲ要スル旨ヲ定ムルコトヲ妨ゲズ」(旧商法204条)となっていました。

 争いのあったところではあるのですが,登記実務は,定款で取締役会以外の機関の承認を要する旨を定めることができないとの見解でした。取締役会設置会社である株式会社は,株主総会を承認機関とすることはできないとし,代表取締役を承認機関とすることはできないと解していました。これは,前者は,株主総会の承認を要するとすれば,これを招集するために時間を必要とし,法が定める制限を加重することになって株式譲渡自由の原則に対する重大な侵害になること,後者は,株式譲渡制限が株主に関する事項として重大であるから,上記の規定は,取締役会という会議体において慎重に判断させようとしたものだというところにありました。

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