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合併における種類株主総会の特殊決議 [会社法いろいろ]

 吸収合併における消滅会社である乙株式会社がA種類株式(譲渡制限株式)とB種類株式を発行する種類株式発行会社である場合において,甲株式会社が非公開会社であり,甲株式会社の株式を合併対価とするときは,B種類株式の株主を構成員とする種類株主総会の特殊決議を要する。これは,正しい記述です。

 今回は,消滅会社(乙株式会社)の株主(B種類株式)の保護の問題です。前回,種類株式発行会社を問題としていましたから,今回も,種類株式発行会社とします。単一株式発行会社は,いずれまた。

 吸収合併消滅株式会社が種類株式発行会社である場合において,合併対価の全部又は一部が譲渡制限株式等であるときは,当該吸収合併は,当該譲渡制限株式等の割当てを受ける種類の株式(譲渡制限株式を除く)の種類株主を構成員とする種類株主総会(当該種類株主に係る株式の種類が2以上ある場合にあっては,当該2以上の株式の種類別に区分された種類株主を構成員とする各種類株主総会)の特殊決議がなければ,その効力を生じないとされています(会社法783条3項本文,324条3項2号)。これは,合併により譲渡性の低い対価を交付される種類株主の保護を図る必要があるからというのがその理由です。本問では,存続会社が非公開会社で,発行する株式の全部が譲渡制限株式ですから,合併対価が存続会社の株式ということであれば,消滅会社の株主は,譲渡制限株式を取得することになり,譲渡制限のない株式を有していたB種類株主は,譲渡制限のある株式を取得することになるわけです。
しかし,A種類株式は,もともと譲渡制限のある株式です。吸収合併消滅株式会社の種類株式が譲渡制限株式である場合(A種類株式)には,種類株主総会の決議は不要とされています(会社法783条3項本文括弧書)。もともと譲渡制限株式で譲渡性が低下するわけではないというのですね。なお,当該種類株主総会において議決権を行使することができる株主が存しない場合にも,この決議は不要とされていますが(会社法783条3項ただし書),これは言うまでもないことですが,念のためというところでしょうか。
結局,このような問題は,存続会社の株主の保護が問題となっているのか,消滅会社の株主の保護が問題になっているのかを確認して,前者の場合には,持株比率の低下の問題,後者は,株式の譲渡性の低下の問題として理解しておきます。

 前者は,非公開会社の株主あるいは譲渡制限株式の株主は,持株比率の維持に重大な関心を有するからとか,持株比率が重要性を有するからとかいう理由で保護するのだといいますが,どういう意味か,また,いつか書くことにします。

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