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民法の改正 「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する要綱案」 [民法]

民法の改正 「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する要綱案」

法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会(部会長 野村豊弘学習院大学教授)は,12月15日,「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する要綱案」を取りまとめ,法務省はこれをウェブサイトで公表しました。http://bit.ly/hA8UvL

法制審議会は,来年2月,法務大臣に正式に答申する見通しで,政府は,通常国会に民法など関連法案の改正案を提出する予定とのことです(12月16日付け朝日新聞)。

今,立法担当官初めたくさんの人が条文作成の準備にかかっているのではないかなと思います。

一昨日と昨日,年末のあいさつかたがたということだと思いますが,司法書士試験受験生の2人から同じ質問がありました。民法改正についてです。債権法の改正のことかなと思いましたが,いずれも,親族法ということなので,上記のことでした。もっとも,成立は4月以降でしょうから,今年の司法書士試験には現在の民法に基づいて出題されることになるのでしょうが,このあたりのことを勉強しておいて損はない(この箇所の出題の可能性も・・・)ということを話しました。

それで,私は,今,「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直し」について読んでいます。

今,自分にとって一番興味があるのは,あるいは知りたいのは,実際に,その条文がどのように生きているか,利用の頻度,利用のされ方等です。そういうことが書かれている文献をみると,うれしいですね。

例えば,民法822条は,次のように規定しています。
(懲戒)
民法第822条 親権を行う者は,必要な範囲内で自らその子を懲戒し,又は家庭裁判所の許可を得て,これを懲戒場に入れることができる。
2 子を懲戒場に入れる期間は,6箇月以下の範囲内で,家庭裁判所が定める。ただし,この期間は,親権を行う者の請求によって,いつでも短縮することができる。

この条文をみて,いつも,どれだけの人がこの制度を利用しているのだろう,懲戒場ってどんなところなのだろうと,かつてよく思っていました。内田先生の民法Ⅳで,このことに触れてある箇所にきて,うむむ・・そうなのか・・・でした。懲戒場に該当する施設は,戦後の児童福祉法・少年院法の制定とともに存在しなくなった・・・したがって,民法822条2項の意味は失われている。

今回の要綱案では,「民法第822条の規定中,懲戒場に関する部分は削除するものとする。」となっています(要綱案第1 2 ②)

児童虐待の事件の報道が多くなって,親族法の勉強の際,民法822条(懲戒),834条(親権喪失の宣告),835条(管理権喪失の宣告)のあたりで,児童虐待のことが頭に浮かぶようになっていると思いますが,特に,児童虐待防止のため,親権喪失の宣告の制度が多く利用されていると思いますよね。

そうではないのだそうです。平成21年度の親権の喪失の宣告事件は,新受件数が110,そのうち,親権の喪失の宣告が21だそうです。後見人との違いでよく勉強する管理権喪失の宣告は,なんと0です(法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会 参考資料3-3)。

どうしてか?この点に関して,以下の文章を引用したいと思います(児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する検討事項(1)第1 1 補足説明 1)。

「現行の親権喪失制度については,①その効果が期限を設けずに親権全部を喪失させるものであること(いわばオール・オア・ナッシングの制度であること)から,効果が大きくて申立てや宣告がちゅうちょされる,②その要件である親権喪失の原因が親権の濫用又は著しい不行跡とされていることから,申立てや審判の在り方が親権者を非難するような形になり,親権喪失宣告後の親子の再統合に支障を来すといった問題があり,必ずしも適切に利用されていない状況にあるものと考えられる。
 そこで,第1の1では,親権喪失制度について指摘されている前述のような問題点を解消し,現実の必要に応じて適切に親権を制限することができるようにするために,民法に,家庭裁判所の審判により一定の期間に限って親権を行うことができないものとする制度(親権の一時的制限制度)を設けるとともに,親権喪失の原因について見直しを行うことを提案している。」

以下,児童虐待防止関連親権制度部会資料等を参照しながら,続きを書こうと思っています。

今年もあと14時間弱となりました。どうぞよい年をお迎えください。

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