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任意後見制度 その5 [後見制度]

任意後見契約の効力の発生 任意後見監督人の選任

 任意後見契約は,家庭裁判所によって任意後見監督人が選任された時からその効力を生じます(任意後見法2条1号)。

 では,本人の精神障害の程度がどのようになって,誰の請求によって,任意後見監督人が選任されるのでしょうか。任意後見法4条柱書本文です。「任意後見契約が登記されている場合において,精神上の障害により本人の事理を弁識する能力が不十分な状況にあるときは,家庭裁判所は,本人,配偶者,4親等内の親族又は任意後見受任者の請求により,任意後見監督人を選任する。」

 精神障害の程度としては,事理を弁識する能力が不十分とありますから,これは,法定後見制度における補助の場合と同じ程度であると言えます(民法15条参照)。家庭裁判所に対して選任の請求をすることができるのは,本人,配偶者,4親等内の親族又は任意後見受任者です。通常は,任意後見受任者となるのではないでしょうか。親族がいれば親族から連絡が入って,あるいは,任意後見契約と同時に見守り契約をして,その履行により任意後見受任者である司法書士等自身が知り,司法書士等が家庭裁判所に請求するというものです。補助の程度ですから,任意後見法は,本人の意思の確認が必要であると考え,本人以外の者の請求により任意後見監督人を選任するには,あらかじめ本人の同意がなければならないとされています。実務の場面では,それゆえに,任意後見受任者から請求するのが難しい場面があると言われます。本人がそのような状況になったことを認めたくない等の理由で,医師の診察を受け容れないということがあるとのことです。本人がその意思を表示することができないときは,同意は不要とされていますから(同ただし書),その場合には問題はないのですが,補助や保佐の程度のときが問題ということになるのでしょうね。

 なお,任意後見法4条ただし書は,家庭裁判所が任意後見監督人を選任することができない場合を各号で挙げています。この場合には,任意後見契約を発効させるべきではないというのです。次の各場合です。

一 本人が未成年者であるとき。
二 本人が成年後見人,被保佐人又は被補助人である場合において,当該本人に係る後見,保佐又は補助を  継続することが本人の利益のために特に必要であると認めるとき。
三 任意後見受任者が次に掲げる者であるとき。
  イ 未成年者,家庭裁判所で免ぜられた法定代理人・保佐人又は補助人,破産者,行方の知れない者
  ロ 本人に対して訴訟をし,又はした者及びその配偶者並びに直系血族
  ハ 不正な行為,著しい不行跡その他任意後見人の任務に適しない事由がある者

 一は,本人が未成年者である場合に任意後見契約を発効させると,親権者又は未成年後見人との権限抵触の問題を生ずるからです。二は,任意後見制度によっては本人の利益を守ることができないときは,法定後見等を継続させる必要があるからです。「本人のために特に必要であると認めるとき」とありますが,任意後見契約を締結した本人の意思をできるだけ尊重するという趣旨です。本人保護と本人の意思の尊重の衝突の場面です。三は,このような者が任意後見人に就任することは不適当だからです。







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