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任意後見制度 その3 [後見制度]

任意後見契約の締結と登記

 任意後見制度を利用するためには,任意後見契約を締結しなければなりません。この当事者は,本人と任意後見受任者です。任意後見法において,本人とは,「委任後見契約の委任者をいう。」と任意後見法2条2号が定義しています。任意後見受任者とは,任意後見監督人が選任される前における任意後見契約の受任者をいいます(同3号)。任意後見受任者は,任意後見契約が効力を生ずると,任意後見人となります(同4号)。

 本人が制限行為能力者である場合にその法定代理人が任意後見契約を締結することもできます。これは,知的障害者や精神障害者等のいわゆる「親なき後」(親の老後,死後)に備えるために利用するという場合です。

任意後見契約は,法務省令で定める様式の公正証書によってしなければならないとされています(任意後見法3条)。これは,公証人の関与によって,任意後見契約の適法性・有効性を担保する等のためです。というわけで,必ず,公証人役場に行かなければならないといいうことになります。ということは,公正証書作成の手数料が必要ということになります。公正証書作成の基本手数料は,1万1,000円です(公証人手数料令別表)。

 任意後見契約が締結された場合には,その公示のため,登記をしなければならないことになっていますが,公正証書を作成した公証人が登記所に任意後見契約の登記を嘱託しなければならないとされています(公証人法57条ノ3第1項)。

 したがって,登記手数料(平成23年3月31日までは登記印紙,4月1日からは収入印紙によって納付することとされています)のほか,登記の嘱託についての手数料が必要となります。前者は,4,000円(登記手数料令16条1項)です。後者は,1,400円です(公証人手数料令39条の2)。そのほか切手代等のブラスαが必要となります。

 後見登記等(成年後見,保佐及び補助に関する登記並びに任意後見契約の登記)に関する事務は,法務大臣の指定する法務局若しくは地方法務局若しくはこれらの支局又はこれらの出張所が,登記所としてつかさどるとされていますが(後見登記等に関する法律2条1項),平成12年2月24日に告示第83号で,東京法務局が指定されて以来,東京法務局だけが,その指定法務局とされています。

 今日の条文 任意後見契約の登記の登記事項を定めた後見登記等に関する法律第5条です。
任意後見契約の登記は,嘱託又は申請により,後見登記等ファイルに,次に掲げる事項を記録することによって行う。
一 任意後見契約に係る公正証書を作成した公証人の氏名及び所属並びにその証書の番号及び作成の年  月日
ニ 任意後見契約の委任者(以下「任意後見契約の本人」という。)の氏名,出生の年月日,住所及び本籍(外国人にあっては国籍)
三 任意後見受任者又は任意後見人の氏名及び住所(法人にあっては,名称又は商号及び主たる事務所又は本店)
四 任意後見受任者又は任意後見人の代理権の範囲
五 数人の任意後見人が共同して代理権を行使すべきことを定めたときは,その定め
六 任意後見監督人が選任されたときは,その氏名及び住所(法人にあっては,名称又は商号及び主たる事務所又は本店)並びにその選任の審判の確定の年月日
七 数人の任意後見監督人が,共同して又は事務を分掌して,その権限を行使すべきことが定められたときは,その定め
八 任意後見契約が終了したときは,その事由及び年月日
九 保全処分に関する事項のうち政令で定めるもの
十 登記番号

 3号に注意しておいてください。任意後見人の住所まで登記事項とされている点です。法人の場合には,だれが任意後見人の職務をしているか登記からはわかりませんが,自然人の場合には,登記によって,その住所まで容易に判明することことになります。

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