SSブログ

定時株主総会の季節 その2 [会社法いろいろ]

 昨日からの続きです。書面による議決権の行使(書面投票)と電磁的方法による議決権の行使(電子投票)の手続等について,会社法及び会社法施行規則がどういう規定を置いているか,会社法施行規則のもとで,実際にはどのようにおこなわれているのだろうかということです。

 招集通知及び議決権行使書をみて考えた問題としては,以下のものがあります。

 第1に,議決権の行使の期限の問題です。いつまでに行使しなければならないか。会社法及び会社法施行規則はどのように規定しているか。

 第2に,株主総会当日は都合が悪くて出席できないと考えたため,書面による議決権の行使をしたが(議決権行使書面(はがき)の賛否の欄に○で印をつけて送った),都合がついて,株主総会に出席できることになったのだが,さて,出席して議決権を行使することができるだろうか。これは,電磁的方法による議決権を行使したときも同じことが言えます。

 第3に,ほとんどの(おそらく)上場会社では,電磁的方法による議決権の行使を認めていると思われますが,書面による議決権の行使をした後に電磁的方法による議決権の行使をすることができるか,あるいはした場合に,どちらを議決権の行使として認めることにするか。同じであればいいけれど,違う場合にどうなるかですね。

 第4に,書面による議決権の行使の場合には,招集通知の封筒の中には,はがきが1枚しか入っていませんから,2度行使するということは実際上は難しいのではないかと思われますが,電磁的方法による議決権の行使の場合には,何度でもできそうですね(技術的には,一度行使すればできないというシステムを組むことも可能だと思いますが),期限内であれば何度でもできるのか(例えば,いくつかの議案について,賛成の投票をしたのだが,その後,反対しようと考えたとき変更できるのか)。

書面による議決権の行使及び電磁的方法による議決権の行使は,いつまでにしなければならないか。

条文は,会社法311条1項,311条2項,と会社法施行規則69条,70条です。

 「書面による議決権の行使は,議決権行使書面に必要な事項を記載し,法務省令で定める時までに当該記載をした議決権行使書面を会社に提出して行う。」(会社法311条1項),「電磁的方法による議決権の行使は,政令で定めるところにより,株式会社の承諾を得て,法務省令で定める時までに議決権行使書面に記載すべき事項を,電磁的方法により当該株式会社に提供して行う。」(会社法312条1項)。法務省令に委任してますね。

 法務省令である会社法施行規則は,書面による議決権行使の期限として,会社法311条1項に規定する法務省令で定める時は,株主総会の日時の直前の営業時間の終了時であるとし,招集の決定事項として「特定の時」をもって書面による議決権の行使の期限とする旨を定めるときは,その特定の時としています(施行規則69条)。電磁的方法による議決権行使の期限も同様です(施行規則70条)。

 まず,原則ですが,株主総会の日時の直前の営業時間の終了時までに議決権を行使しなければならないとなっています。これは,集計作業の実務上の負担に配慮したものであると言われています(逐条解説会社法第4巻 P152参照)。旧商法は,「総会ノ会日ノ前日マデニ」となっていました。つまり,前日の24時までにということだったのです(旧商法239ノ2第5項,239条ノ3第5項)。

 会社法施行規則は,招集者が何も定めないのであれば,株主総会の日時の直前の営業時間の終了時までであるが,株主総会の招集にあたって,招集者は,「特定の時」をもって期限とすることができるものとしています。ただし,その「特定の時」は,株主総会の日時以前の時であって(これは,当たり前のことですね),会社法299条1項の規定により通知を発した時から2週間を経過した時以後の時に限定しています(同括弧書,ぎりぎりで招集通知を出すと,原則通りになってしまう可能性が高い)。

 さて,実務はどうなっているでしょう?私は,ほとんどの株式会社が,株主総会の日時の直前の営業時間の終了時よりも前の「特定の時」を定めると思っていました。集計作業で間違えないように時間のゆとりがほしいと思うだろうと。

 手許にある3社の議決権行使書あるいは招集通知は,次のようになっています。

甲株式会社
定時株主総会 6月23日(水曜日)
議決権行使書のはがきの表の切り取り線の下には,「6月22日(火曜日)午後5時30分までに到達するようにご返送ください。」と記載されています。
また,招集通知に,「インターネットによる議決権の行使は,平成22年6月1日(火)から平成22年6月22日(火)午後5時30分までに行使されるようお願いいたします。なお,毎日午前2時から午前5時まではお取り扱いを休止します。」との記載があります。
書面投票と電子投票は,基本的に同じ取扱です。

乙株式会社
定時株主総会 6月28日(月曜日)
はがきの表 切取線の左 「議決権行使書をご郵送の際は,この部分をお切り離しいただき,平成22年6月26日17時30分までに到着するようご投函ください。」とあり,裏には,「議決権をインターネットで行使される場合は,・・・平成22年6月27日24時までにご投票ください。この場合,議決権行使書を返送される必要はありません。」とあります。
書面投票と電子投票とで異なりますね。

丙株式会社
定時株主総会 6月29日(火曜日)
はがきの裏 切取線の右 「1.株主総会にご出席願えない場合は,この議決権行使用紙に賛否をご表示いただき,平成22年6月28日午後5時までに到着するようご返送ください。」「4.議決権をインターネットで行使される場合は,・・・平成22年6月28日午後5時までにご投票ください。この場合,議決権行使書を返送される必要はありません。」とあります。

せっかく会社法施行規則が特則を設けているのですから,すくなくとも,2,3日は余裕をおくのではないかと思っていましたが,違いました。3社しか見ていませんから,一般的に,どうなのかわかりませんが,しかし,他の上場会社もおなじなのだろうなという気がします。

乙株式会社の場合の前日の24時までというのは,意外ですね。ぎりぎりで行使してくる株主がどのくらいいるかの話になるでしょうが,徹夜するのかな?それとも・・・。

第4に・・・の文章について,修正を行いました。6月10日17時05分


SA380186.JPG

常盤公園

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0