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一人会社 [Twitterから]

「いちにんがいしゃ」と,普通,読みます。「ひとりがいしゃ」と読む人もいます。後者が間違いというわけではないでしょう(ずいぶん前ですが,商法改正の折の立法担当官がこのように読まれたのを聞いたことがあります)。一人会社とは,株主又は社員が1人の会社をいいます。

何故に問題になってきたかというと,旧商法が,「本法ニ於イテ会社トハ商行為ヲ為スヲ業トスル目的ヲ以テ設立シタル社団ヲ謂フ」としていたからです(旧商法52条1項)。社団の概念としては,財団が財産の集合体であるのに対して,人の集団(団体)を意味しますが,1人では集団(団体)ではないではないかというわけです。

平成2年の有限会社法改正前においては,商法には,株式会社については,株主が1人となったことは解散事由とはされていませんでしたから(条文上の根拠),通説及び判例は,株式会社については,一人会社を肯定していました(社会的背景として,一人会社を認めることを求める実務界の存在があったことは当然ですが)。理論的根拠としては,潜在的社団の理論というのがありました(株式の譲渡によって複数となる可能性があることから社団性の要件は備えているというものです)。同年の有限会社法で,これまで,有限会社では社員が1人になったことを解散事由としていたところを削除しました。

しかし,合名会社及び合資会社については,社員が1人となったことが解散事由として残されました(会社法94条4号,147条)。なお,平成2年の商法改正では,株式会社について,それまで,設立の際に, 7人の発起人を要し,設立当初において株主が発起設立では7人,募集設立では8人を要するとされていたところ,1人で足りるとされました。したがって,設立当初から株主は1人でいいのだということにしたのですね。

さて,会社法は,まず,会社が社団であるという条文を置きませんでした。それは,合資会社を除くすべての会社について,一人会社を許容することが前提にあったからです。これに伴い,解散事由の「社員ガ1人ト為リタルコト」に変え「社員が欠けたこと」を解散事由としました(これは,合資会社においても同様です)。しかし,社団であるという規定を除いたからと言って,社団であることが否定されるわけではないと考えられます。

合名会社及び合同会社について一人会社を許容することについて,どのような理論的説明がされているのでしょうか。立案担当者によれば,次のとおりです。

「会社法では,平成2年改正において株式会社につき一人会社を認めたのと同様の理由により,一人持分会社を認めている。すなわち,株式会社については,株主が一人であっても,株式の譲渡や発行によって潜在的に二人以上の株主(社員)が存在しうることとなることを理由に一人株式会社が認められているが,この点は,持分の譲渡や社員の加入が認められる持分会社においても変わりがないといえる。」(立案担当者による新・会社法の解説P156)

さて,説得的かどうか。

一人合資会社は認められません。どうしてか。合資会社は,無限責任社員と有限責任社員とからなる二元的組織の持分会社だからです。そこで,「持分会社の社員の最低員数は,いずれの種類の持分会社においても,1人である。」×ですね。司法書士試験 H19年午前の部第34問アです。

では,合資会社においても社員が1人になったことは解散事由とはされていませんが,合資会社において社員が1人になったらどうなるのでしょうか。宿題です。


有限責任社員⇒雄弁責任社員になっていました。修正しました。
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