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仲立人の義務 2 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

 見本保管義務
 仲立人は,その媒介する行為について見本を受け取ったときは,その行為が完了するまで,これを保管する義務を負うとされています(商法545条)。仲立人の見本保管義務です。

 商法545条から商法547条にかけて規定されている仲立人の3個の義務は,契約当事者間の後日の紛争を防止するという趣旨で共通しています。取引の目的物が見本によって定められ,見本と同一の品質を有することを保証する売買,これを見本売買といいますが,見本売買において,仲立人が受け取った見本が,将来において生ずるかもしれない当事者間の紛争解決のための証拠となることから(証拠保全),保管義務が課されています。

 「其行為カ完了スルマテ」とは,上記の趣旨からして,媒介による行為の完了の時までということではなく(目的物が給付されただけでなく),品質に関する紛争が発生しないことが確実になった時をいうものと解されています(通説)。


 結約書の作成・交付義務
 媒介によって,当事者間に行為,つまり,契約が成立したときは,仲立人は,遅滞なく,契約の各当事者の氏名又は商号,行為(契約)の年月日及びその要領を記載した書面を作成して,署名した後,これを各当事者に交付しなければならないとされています(商法546条1項)。この書面を結約書とか,仕切書とか契約証とかいいます。
 後日の紛争防止のため,契約内容を記載した書面を作成して,各当事者に交付するというものです(証拠保全)。各当事者の請求を待つまでもなく作成して交付しなければなりませんが,契約成立の要件ではありません。なお,各当事者の氏名又は商号が記載事項とされていますが,当事者から氏名又は商号の黙秘の命令があったときは,それを守らなければなりません(商法548条)。

 当事者が直ちに履行すべき場合ではない場合(目的物の給付が条件付きあるいは期限付きの場合)には,仲立人は,各当事者に上記の結約書に署名させた後,これをその相手方に交付しなければならない(商法546条2項)。結約書の交換ですね。その際に,当事者の一方が結約書を受領せず,又は,これに署名しないときは,仲立人は,遅滞なく,相手方に対してその通知を発しなければなりません(同条3項)。当事者の一方が結約書を受領しないとか,署名しないということは,その契約について異議があるということでしょうから,遅滞なく連絡をして,処置を講じさせる必要があるからです。

 帳簿に関する義務
 仲立人は,帳簿(仲立人日記帳と呼ばれる)を備えて,これに上記の結約書に掲げた事項を記載して保存の上,各当事者の請求があれば,いつでも,仲立人日記帳の関係部分の謄本を交付しなければなりません(商法547条)。これも,証拠保全です。ここでも,当事者から氏名又は商号の黙秘の命令があったときは,それを守らなければなりません(商法548条)。

 平成22年度午前の部第35問 
エ 問屋は,委託者のためにした売買契約が成立した場合には,各当事者の氏名又は商号,行為の年月日及び契約の要領を記載した書面を作成し,署名し,又は記名押印した後に,その書面を委託者に交付する義務を負うが,仲立人は,媒介する商行為が成立した場合でも,そのような義務は負わない。×

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