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仲立人 [平成22年度司法書士試験筆記試験]

仲立人

 旅行斡旋業者でもいいし,不動産取引業者(宅地建物取引業者)でもいいのですが,まず,イメージしておきます。ただし,後者については,商行為に当たらない不動産取引の媒介をする場合には,次に述べる商事仲立人ではなく,民事仲立人に当たります。

 商事仲立人と民事仲立人
 仲立ちとは,他人間の法律行為を媒介することをいいます。自らが当該法律行為をするわけではありません。仲立人は,このような他人間の法律行為の媒介をすることを業とする者をいいますが,その法律行為が商行為である場合と商行為以外の法律行為の場合とがあります。前者が,商事仲立人,後者が,民事仲立人と呼ばれます。商法543条は,「仲立人トハ他人間ノ商行為ノ媒介ヲ為スヲ業トスル者ヲ謂フ」としており,544条以下に商事仲立人の権利義務について規定しています。媒介とは,契約成立に至るように各種の仲介,斡旋,勧誘といった事実行為をすることを意味するのですが,契約の成立に尽力することと表現されたりもします。

 結婚仲介業者や家庭教師の斡旋業者も民事仲立人です。民事仲立人も,商人です。仲立ちに関する行為が営業的商行為とされ(商法502条11号),民事仲立人は,自己の名をもって商行為をすることを業とする者だからです(商法4条1項)。

 以下,商法543条以下に従い,仲立人とは,商事仲立人を意味するものとします。

 仲立契約の法律的性質
 代理商契約の場合には,委任もしくは準委任であると書きましたが,仲立契約は,準委任(民法656条)です。仲立ちは,法律行為ではなく,事実行為だからです。もっとも,民法656条は,「この節(第10節 委任)の規定は,法律行為でない事務の委託について準用する。」としていますから,委任であっても,準委任であっても,いいのですが,ここでは,仲立ちに関する行為が法律行為でない事務,事実行為であることをしっかりと頭に入れておきます。問屋との比較においてです。

 仲立人の義務
仲立契約は,準委任契約です。したがって,民法656条により民法644条が準用されます。
「受任者は,委任の本旨に従い,善良な管理者の注意義務を負う。」善管注意義務です。しかし,民法の規定だけでは不十分として,商法は,特別の規定を置いています。

 まず,仲立人の義務に関する規定です。商法は,契約当事者間の後日の紛争を防止するために3個の義務を仲立人に課しています。第1に,見本保管義務(商法545条),第2に,結約書の作成・交付義務(商法547条),第3に,帳簿に関する義務です。また,そのほかに,仲立人の義務として氏名又は商号の黙秘義務及び介入義務(商法548条,549条)を課しています。
以下,次回につづきます。

 平成22年度 午前の部 第35問
ウ 問屋は,委託者のためにする売買に関し,委託者に対して善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務を負うが,仲立人は,委託者のため商行為の成立に尽力する義務を負う場合であっても,媒介する商行為に関し,当事者に対して善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務は負わない。×


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