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午前の部 第30問 イ [平成22年度司法書士試験筆記試験]

第30問 イ
取締役会については,定款で書面決議による決議の省略を可能とすることができるが,監査役会については,定款で書面決議による決議の省略を可能とすることはできない。

 正しい記述です。これができないと,監査役会について理解していないことになり,勉強不足ということになります。

 もっとも,私は,立法論的に,取締役会における書面決議に疑問をもっていて,会議体であることからして,取締役会だって監査役会だって,書面決議を認めるべきではないと思っています。とは言っても,これは,立法論であって,会社法は,取締役会については,取締役会の決議の省略の制度(書面決議)を認め(会社法370条),監査役会については,監査役会の決議の省略の制度(書面決議)を認めていないことは明らかです。

 取締役会の決議の省略について,「体系書 会社法 上巻」P204からその説明をもってくることにします。

 「ところが,会社法は,取締役会の決議の省略の制度を創設した(会社法370条)。株主総会の決議の省略(会社法319条)に対応するものである。すなわち,定款で定めることにより,取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合において,当該提案につき取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る)の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは,当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなすことができる。これは,企業活動の国際化に伴って外国に居住する取締役も増加している状況等から,機動的な会社経営の実現のため,現に会議を開催しない形での決議を認めるべきであるという実務上の強い要請(商事法務№1744 P103)に応えたものである。ただし,監査役設置会社にあっては,監査役が当該提案について異議を述べたときは,認められない(同条括弧書)。」

 では,なぜ,監査役会においては,決議の省略が認められないのか。それは,監査役会制度の存在理由にあります。この点についても,「体系書 会社法 上巻」からもってくることにしましょう。

 「監査役会は,すべての監査役(3人以上)で組織される会議体である(会社法390条1項,335条3項)。監査役会制度は,平成5年の特例法改正により,大会社においては,監査役の員数を3人以上としたことに伴い,新設されたものであるが,複数監査役制を採る大会社においては,各監査役が役割を分担し,それぞれが調査した結果を持ち寄って,相互の調査を相補うことにより,会社の業務についての必要にして十分な知識・情報を共通にするとともに,それに基づいて相互の意見の内容や根拠について相互に検証し合うことにより,組織的な監査を実現し,その監査の一層の適正かつ実効性を期すため,また,それまでのように監査役が個別に意見を述べるより,合議体としての監査役会が意見を述べることにした方が,経営陣に対する効果といった点からもプラスになるものと期待されるとして創設されたものである(一問一答平成5年改正商法 P133~P134参照)。
 会社法は,これを受け継いだものであるが,委員会設置会社以外の公開会社である大会社についてだけ,監査役会の設置を強制する(会社法328条1項)。それ以外の株式会社においては,任意に設置することができるが(委員会設置会社には置くことができない),取締役会設置会社以外の株式会社には認められない(会社法327条1項2号)。」

 上記の存在理由からして,監査役会において,書面決議による決議の省略を認めることは,監査役会制度を否定することになります。しかし,理論的説明としては,以上のようになるとしても,実際問題としては,実務上,監査役会における書面決議の要望はなかった,書面決議による決議の省略の必要性は認められないということだったのでしょうが,それは,なぜなのでしょうか。

それは,業務執行を担当しない監査役が,企業活動の国際化に伴って外国に居住する・・・ということはないでしょうし,何より,監査役会設置会社において,監査役の員数は3人以上とされていますが(会社法335条3項),実際の監査役の員数は,3人~5人にすぎません。日本に住所を有する数人の監査役は,容易に本社に出かけることができる態勢にある・・・。また,監査機関ですから,会議の頻度としては,少ないということもありますね。

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