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午前の部 第30問 ウ オ [平成22年度司法書士試験筆記試験]

第30問

 取締役会と監査役会の比較の問題です。両者の比較自体は,出題の可能性の高かった問題と思いますが,しかし,そのうち,アとオは,予想外の出題でした。難しいというのではなく,こう来るのかという感じですね。

 今回は,正解の組合せであるウとオについて,考えてみます(誤っているものの組合せはどれかということで,ウとオが誤っていて,正解は5です)。いずれも,同一の観点から考えることができます。

問題文
オ 取締役会においては,その決議に参加した取締役であって議事録に異議をとどめないものは,その決議に賛成したものと推定されるが,監査役会においては,その決議に参加した監査役であって異議をとどめないものは,その決議に賛成したものとは推定されない。

誤った記述です。
大きく見れば,両者に共通することは,特定の構成メンバーから成る会議体であることですが,異なるのは,一方は,業務執行に係る機関であるのに対して,他方は,監査機関であることです。前者から異同の同が,後者から異がでてくると一応言えるのではないかと思います。

 オの前半,取締役会については,この規定があることは,ほとんどの受験生にとって,常識に属します。さて,監査役会はどうだったかです。単純に,条文があったということを記憶していれば,もちろん容易に正誤を判断できるのですが,どうかなと思った人の方が多かったことでしょう。

 取締役会議事録におけるこの推定規定(会社法369条5項)は,次のような趣旨によって規定されています。すなわち,取締役会議事録には決議の結果については記載又は記録がされることになっているものの,出席者のうちの誰が賛成しあるいは反対したかの記載又は記録をすることは要求されていません(会社法369条3項,施行規則101条参照)。そこで,株主がその権利を行使するために必要があるとき,又は債権者が責任追及をするために必要であるときに(親会社社員は,その権利を行使するために必要であるとき),取締役会議事録の閲覧等の請求をすることができるわけですが(会社法369条,裁判所の許可を要する場合と要しない場合があります),これによっては,誰が当該決議に賛成したかを立証することは容易ではないため,議事録に異議をとどめないものについて,その決議に賛成したものと推定したものです。

 とすると,これは,監査役会議事録でも,同じことであろうということになります。監査役会議事録については,会社法393条4項に,同様の規定があります。おおざっぱにいえば,取締役会も監査役会も,責任を負う立場にいる特定の構成メンバーからなる会議体であることから同じことだと言えます。

 ウも同様の問題となります。
ウ 取締役会は,取締役の全員の同意があれば,招集の手続を経ることなく開催することができるが,監査役会は,監査役の全員の同意があっても,招集の手続を経ることなく開催することができない。

 誤った記述です。監査役会においても,監査役の全員の同意があれば,招集の手続を経ることなく開催することができます。条文としては,会社法392条2項です。緊急に開催する必要性があり,正規の招集手続招集の手続をとる時間的余裕のないことも多く,また,招集手続は,会議体において,その構成メンバーの出席の機会と準備の機会を与えるためですが,構成メンバー全員の同意があるのであれば,招集手続を省略しても,さほど不都合はないからです。これは,取締役会と監査役会で異なりません。

 第30問は,続きます。

07.12夕  問題文オ 転記間違いがありましたので,その部分を削除しました。


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