SSブログ

平成22年度司法書士試験 概観(商法) [平成22年度司法書士試験筆記試験]

概観(商法)

 今頃になって何を・・・,と言われそうな気がするのですが,司法書士試験受験用の本の書名を見ていて,書名に会社法と商法を分けて表示しているものがあることに気がつきました。これは,形式的意義によって商法の概念を考えているのですね。形式的意義の商法とは,商法典(「商法」と名付けられた法典)を意味します。つまり,商法と会社法は,法典が別であることから(商法と会社法は,平成17年の会社法の成立,及び商法の改正により,別の法典となったことはいまさら言うまでもありませんが),このように名付けたのでしょうね。

 私は,実質的意義により,会社法,商法(商法総則,商行為,海商)等を含むものとして,平成17年以後も「商法」を使ってきました。「過去問商法165 Check Test 」の商法は,この意味です。そうでなければ,この「過去問商法165」は,平成18年から平成21年までのものですから,1問だけ(平成21年度第35問)ということになってしまいますからね。これは,法務省の司法書士試験の受験案内の中の試験の内容の(1)として,憲法,民法,商法(会社法その他の商法分野に関する法令を含む)及び刑法に関する知識となっていることから,そのように考えてきました。

 そこで,これからも,午前の部の科目は,憲法,民法,商法,刑法であるということで書いていくことにしようと思っています。

 さて,前置きが長くなってしまいました。今年の司法書士試験の商法は,去年に引き続き,9問の出題でした。商法の出題は,平成15年に午前の部の試験科目として憲法が追加されて,それまでの9問の出題から1問減り,8問とされ,それが一昨年まで続いていたのですが,昨年1問増えて,再び,9問となりました。また,長い間,商法総則,商行為の分野から出題されていませんでしたが,昨年は,商法総則から出題され,今年は,商行為から出題されました。

 第35問,午前の部の最後の問題で「問屋及び商事仲立人の異同に関する次の・・・」という文字が目に入った受験生は,驚いたことでしょう。学生時代に商行為法の単位をとった受験生は,なんとか正解を出せたのではないかとも思うのですが(確信のないところですが),そもそも,問屋をとんやと読んだ受験生も少なからずいたのではないかと思うのですが,どうでしょう?

 今年の商法で商法総則か商行為法から出題されることは,予想されるところでした。もっとも,商法総則の方が可能性としては高いとみていました。商行為法から出るのであれば,昨年の出題からみて,平成14年度第35問のような商行為通則であろうとみていました。問屋と仲立人とは・・・絶句・・・というところです。

 しかし,それがこの1年以内のことではなくてもどこかで,一度でも問屋について勉強したことのある人であれば,問題文を冷静に読み,なんとかアとオが正しい記述であるとして正解に達したという人もかなりいるのではないかと思うのですが(消去法で達したかもしれませんが),どうでしょうか。とんやと読んだ人は無理だったかもしれません。

 第31問は,久しぶりに学説問題登場ということで,ここで焦った人も多いと思われます。時間があってあわてなければ,そして,考えて答えを出そうとしたのであれば,アが誤っていることは比較的容易でしょうし,イも誤っていると判断することは容易だったのではないかと思いますから,あとは,消去法で4か5,つまり,ウは正しくて,エかオが誤っているということになります。さて,どちらを選んだかですが・・・。改めて,ゆっくりと読めば,オを選んだのではないでしょうか。しかし,この問題は,正解率が高いとは思えないですね。試験会場で時間との闘いの中ではなかなか正解を出しにくいところと思えます。

 第31問は,会社法429条1項の役員等の第三者に対する責任追及の前提として,会社法908条2項が問題とされています。登記の効力のうち,不実事項の登記の効力(公信力)の規定です。実は,この不実事項の登記の効力についての規定は,商法総則にあったものでした(改正前商法14条)。商法改正及び会社法成立により,商法では,口語化されて,9条2項に,会社法は,全く同じ文言で,会社法908条に規定されることになりました。私は,その意味で,旧商法のもとでの,商法総則の問題でもあるといえるのではないか。つまり,ここでも,商法総則が出題されているような気がしました。商法作成担当者が複数であるのであれば,第31問と第35問は,同じ作成者のようなきがするのですが・・・さて。なお,この問題についての判決として,最判昭和47年6月15日があります。 

 他の問題については,易しい問題とやや難しいかなと思われる問題がありますが,合格するためには,正解できなければならない問題だと思います。振替株式の出題がありましたが(第28問),ウとエは,合格レベルの司法書士試験受験生の常識であると考えなければならないと思います(常識でなければ常識にしなければなりません)。こんなところは絶対に出ないと言っていた人もいたようですが,しかし,アとイだけで,2を正解とすることができた人も多かったかもしれません(だからと言って,知らなくてもいいのだということにはなりません)。

07.14 9段落目について書き直しました。