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任意後見制度 その10 [後見制度]

任意後見監督人

 任意後見制度においては,任意後見監督人の存在というものが極めて重要であることは,任意後見契約の発効が任意後見監督人の選任によって生ずるとされていることから明らかです(任意後見法2条1号)。本人の保護において,任意後見人に誰がなるかがもちろん極めて重要ですが,任意後見監督人にどのような人あるいは法人がつくかも,極めて重要なことだと思います。世間一般では,監査とか監督の職にあるとしても,名目的なものあるいは形式的なものにとどまっているというものがよく見かけられますが,この制度において,このようなことになると,この制度は崩壊ですよね。そこで,家庭裁判所が選任し,任意後見監督人が家庭裁判所に定期的に報告することになっていますし,家庭裁判所は,必要があると認めるときは,任意後見監督人に対し任意後見人の事務に関する報告を求め,任意後見人の事務もしくは本人の財産の状況の調査を命じ,その他任意後見監督人の職務について必要な処分を命ずることができるとされています(任意後見法7条3項)。もっとも,任意後見監督人の監督が厳しすぎても,さて,それで,本人の保護になるのか,本人の意思の尊重の問題としてどうなのかということもありそうです。

資格 欠格事由
このように任意後見監督人は重要な地位を有しますから,任意後見監督人の資格が重要となります・・・そこで・・と書きたいところですが,積極的資格については,法律上の制限はありません。自然人だけでなく,法人もなることができます(任意後見法7条4項,民法843条参照)。複数の選任も可能です。司法書士や弁護士,その他のプロに限定されているわけではありません。しかし,欠格事由の定めがあります。適正かつ実効的な監督の確保のためということですが,よく理解できるところであろうと思います。

まず,任意後見法5条は,任意後見監督人の欠格事由という条文見出しをおいて,「任意後見受任者又は任意後見人の配偶者,直系血族及び兄弟姉妹は,任意後見監督人となることができない。」としています。また,任意後見法7条4項が,後見人の欠格事由に関する民法847条を準用していますから,次の者も,任意後見監督人になることができません。

1 未成年者 2 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人,保佐人又は補助人 3 破産者 4 被後見人に対して訴訟をし,又はした者並びにその配偶者及び直系血族 5 行方の知れない者

職務・権限
任意後見監督人の職務については,任意後見法7条1項が規定しています。

任意後見人の職務は,次のとおりとする。
1 任意後見人の事務を監督すること。
2 任意後見人の事務に関し,家庭裁判所に定期的に報告をすること。
3 急迫の事情がある場合に,任意後見人の代理権の範囲内において,必要な処分をすること。
4 任意後見人又はその代表する者と本人との利益が相反する行為について本人を代表すること。

任意後見人の権限については,任意後見法7条2項です。

任意後見監督人は,いつでも,任意後見人に対し任意後見人の事務の報告を求め,又は任意後見人の事務若しくは本人の財産を調査することができる。

なお,委任や後見に関する民法の規定が,任意後見法7条4項により任意後見監督人に準用されています。

1 民法644条 受任者の善管注意義務
2 民法654条 委任終了後の応急処分義務
3 民法655条 委任終了の対抗要件
4 民法843条4項 選任の際に考慮すべき事情
5 民法844条 後見人の辞任
6 民法846条 後見人の解任
7 民法847条 後見人の欠格事由
8 民法859条の2 成年後見人が数人あるときの権限行使の方法
9 民法861条2項 費用の支弁
10 民法862条 後見人の報酬


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散歩途中の道端で

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